『アイドル楽曲大賞』アフタートーク(前編)

4人のアイドル論客が語る『アイドル楽曲大賞』の始まりと現在地「真の楽曲派は現場に多い」

「BiSの解散ライブは、本当に『お前らどこから来たんだ?』と思った」(宗像)

――順位のなかで疑問に思ったものはありますか?

宗像:僕はBiSの『FiNAL DANCE』がメジャー部門6位に入っていることですね。現場でも言いましたけど、この曲はBiSがこれまでにリリースしてきたなかでも良い曲の部類には入らないと思うんですよ。

岡島:コラム(【ももクロ、モー娘。から、リリスク、ベルハーまで…動員力から考察するアイドル界の現在】)に書いたんですけど、DD層の中でも「式典厨」のような人たちがいますよね? 誰かの卒業とか記念になるようなワンマンは行く、という。そういう人たちからのご祝儀的なものですね(笑)。

宗像:そういう人たちがいないと成り立たないとは思うんですが、古参からするとそういうのがウザいというか、「今さらかよ!」とも思ってしまいます。BiSの解散ライブも8000人くらい入って、本当に「お前らどこから来たんだ?」と思いましたからね(笑)。

岡島:今回のランキングだと、元BiSの中では寺嶋由芙(インディーズ部門4位「#ゆーふらいと」)とプラニメ(メジャー部門18位「Plastic 2 Mercy」)が上位にいます。ゆっふぃー(寺嶋由芙)はなぜ曲がいいんでしょう?

宗像:Number Girlや、Base Ball Bearを送り出した加茂啓太郎氏による緻密なディレクションが大きいでしょう。最新曲「猫になりたい!」でも「2回聴いて覚えられるサビでなければ駄目」と言っていたそうです。「#ゆーふらいと」がインディーズ部門4位になったのは、ねむきゅん(でんぱ組.incの夢眠ねむ)が作詞したことも大きかったのかな。それから彼女の立ち姿と重なる、物語的な部分もありましたね。ちなみにシングルの表題曲は、rionosさんという由芙ちゃんと同い年の女の子が作っています。またこの子が可愛いんですよ(笑)。

岡島:あと、注目ポイントとしてはTPD(東京パフォーマンスドール)のオリジナル曲が上位に入ってること。彼女たちは今のところ初代TPDのカバー曲の方が多いんですが、オリジナル曲も良質なものなんです。

宗像:「ダイヤモンドは傷つかない」を聴くと脳内物質が出るし、「BRAND NEW STORY」も、過去のTPDテイストを大きく変えずに近年の流行を取り入れていて、非常によくできていると思います。

ガリバー:こうしてランキングを見渡しても、最初にドンと明るく弾ける曲って意外と多くない。そのなかでは「Brand NEW STORY」が王道でありつつも異質ですね。

ーー上位に入りやすい楽曲の傾向などはあるのでしょうか。

ピロスエ:いわゆる「楽曲派」と呼ばれたり、あるいは自称するような人たちの好きな音楽ジャンルが、ザックリ言うとファンク/ソウル/ディスコといった黒人音楽で、その要素が入っていると評価される、というバイアスはありますね。

岡島:ブラスセクションが入っていたりファンク調だと、「良い」と言われる、というようなことですね。たしかにそれはあります。

宗像:あと、今年のアイドル楽曲大賞は、踊れる曲が多い、というイメージがありましたね。ただ、いわゆる黒めの曲や変わった展開の楽曲が評価される中で、Dorothyが最後に拳を突き上げて「オッ オー オッ オー」と叫ばせるストレートなロックで締める、というのは予想外の展開でした(笑)。

(後編【4人の論客が予測する、2015年のアイドル楽曲とシーン「作り手にはまだまだ頑張ってほしい」】へ続く)

(構成=中村拓海)

『アイドル楽曲大賞』
『ハロプロ楽曲大賞』

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