岡田康宏の2015年アイドルシーン展望
しゃちほこ、BABYMETAL、でんぱ組.inc…2015年「武道館」から「ドーム」へ飛躍するグループは?
毎年、年の瀬や年の初めになると、「今年のアイドル界はどうですか?」なんてことを挨拶のように聞かれるわけですが、ここ1、2年はずっと同じように「武道館クラスはたくさん出てくるけど、ドームクラスは出てこないと思います」と答えていました。
00年代後半以降のライブアイドルブームの中で、アイドルはテレビの中の存在からライブやイベントで楽しむ存在となり、その中で、Perfume、AKB48(関連グループ含む)、ももいろクローバーZと3組のドームクラスの動員力を持ったアイドルが生まれ、さらに昨年今年と10組を超えるアイドルグループが日本武道館公演を開催しました。
ここからだいたい二つのことが言えると思います。一つはライブや口コミ、ソーシャルやローカルなメディアでの情報発信を組み合わせて地道に人気を積み重ねていくことで、ライブ系のアイドルは武道館公演まで辿り着けるということ。ただし、そこから先、ドームクラスの人気(動員力)を得るためには、本当に広く一般の支持、アイドルの枠を超えた人気を獲得しないといけないということ。
2010年から始まった国内最大級のアイドルフェス・東京アイドルフェスティバルの今年の動員数は4万人超。国内最大級のロックフェスが20万人を超す動員を集めることを考えれば、どれだけアイドルファンの裾野が広がったといっても、まだまだジャンルとしては成長途上です。
日本武道館で公演できるような、アイドルファンにしっかりと支持されるクオリティの高いアイドルが次々と出てくる現状は素晴らしいことですが、ジャンルとしての成長を考えると、アイドルファンの枠の外で新たなファン層を開拓してくてるアイドル、アイドルの枠を越えていくアイドルがどれだけ出てくるかが、今後の大きな鍵となっていきます。
その中で2014年は武道館公演を完売させ、今後ドームクラスに成長していくための第一歩を踏み出したグループが複数出てきた年だったと思います。具体的に名前を挙げるなら、私立恵比寿中学、チームしゃちほこ、BABYMETAL、でんぱ組.incといったグループです。
私立恵比寿中学とチームしゃちほこは、ともにスターダスト芸能3部所属、いわゆるももクロの妹分ユニットです。スターダストはもともとモデル・女優系の事務所でアイドルには実績がありませんでしたが、ももクロの成功以降ファミリー化を進め、女性アイドル界は、圧倒的に巨大なAKB、老舗のハロプロ、戦国時代を制したスタダの三国鼎立の様相を呈しています。
とくにももクロの後を追って、武道館・アリーナクラスを埋めるほどの力をつけたエビ中、しゃちほこの2組が、2015年以降、ドームクラスまで突き抜けるのか、突き抜けるとしたらどのタイミングで突き抜けるのかは、一つ注目のポイントとなるでしょう。
続く2組、BABYMETALとでんぱ組.incはアイドル界に新たな風を吹き込む存在です。成長期限定ユニット・さくら学院の派生ユニットとして生まれたBABYMETALは「アイドル×ヘビーメタル」というこれまでにない掛けあわせとその圧倒的なクオリティが受けて、今年は英米を回るワールドツアーを成功させるなど、国内よりも先に海外で人気に火が点いたグループです。所属事務所のアミューズは、Perfumeの実績があるところですから、ノウハウは持っていますが、それにしても、こうした海外での人気が先行し逆輸入される形で、日本国内での人気がこれからさらに高まっていくだろうアイドルグループというのは、おそらく初めての形で、彼女たちがどこまで支持を広げていくのか、またこれから本格的に世界的人気が確立されっていった場合、国内と海外での活動の比率をどのようなバランスで進めていくのか、興味深いところです。