正統派パンクロック・バンドとしてのグループ魂 各メンバーのコアな音楽的背景とは?

 その他のメンバーの音楽的キャリアも興味深い。高校の同級生だった破壊と小園はかつて、PANTA率いる伝説のバンド・頭脳警察のカバーを中心とした“ナイス警察”というバンドでライブを展開。バイト君も80年代ニューウェイブからシューゲイザー、ダブなどを好むマニアックな音楽リスナーだ。また、作曲、アレンジなどにおいてもっとも貢献度が高いのは、遅刻こと富澤タク。80年代後半のバンドブームの時期に3ピースバンド“COR―SEZ”のギター/ボーカルとして注目を集めた富澤は、数多くのバンド、アーティストのサポート・ギタリストを務めながら、自らのバンド“Number The.”としても活動中。グループ魂のなかで唯一のオールタイム・ミュージシャンである彼は(そのほかのメンバーはご存じの通り、役者、作家としての活動が中心)、「君にジュースを買ってあげる♡」「嫁とロック」といったシングル曲の作曲・アレンジを手がけている。

 楽曲のなかに散りばめられた音楽的なオマージュもこのバンドの特徴。たとえば「グループ魂のテーマ」は映画『爆裂都市 BURST CITY』('82年/監督・石井聰亙)の主題歌「セル・ナンバー8」がもとになっているし、その他の楽曲にもセックス・ピストルズ、ザ・クラッシュ、ザ・ジャム、ラモーンズなどのフレーズが取り入れられている。このパロディ・センスがグループ魂の独創的なバンドサウンドにつながっていることはまちがいないだろう。

 これまでに向井秀徳(ZAZEN BOYS)、横山剣(クレイジーケンバンド)、原田郁子(クラムボン)、あっちゃん(ニューロティカ)といったミュージシャンとコラボレーションを行い、今年もザ・クロマニヨンズ、氣志團と対バン・ライブを開催するなど、個性的な活動を続けているグループ魂。オーディエンスの要求に応え、ともすればキレイにまとまり過ぎるバンドが多い現在のシーンにおいて、荒々しいパンクロックサウンドを志向し続けるグループ魂の存在はきわめて刺激的。暴動が手がける歌詞のおもしろさ、下品さ、くだらなさ、破壊の破天荒なライブ・パフォーマンスも最高だが、『グループ魂のGOLDEN BETTER~ベスト盤じゃないです、そんないいもんじゃないです、でも、ぜんぶ録り直しましたがいかがですか?~』をきっかけにして、本格的なパンクロック・バンドとしての彼らの魅力がさらに多くのリスナーに浸透することを願いたい。

(文=森朋之)

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