在日ファンク・浜野謙太、“大人の意思表示”を語る「他の音楽よりも怒ってる自信がある」

 

 俳優、タレントとしても多岐にわたって活躍する浜野謙太が率いる7人組ファンクバンド・在日ファンク。彼らが9月3日、メジャーデビュー作となるアルバム『笑うな』を日本コロムビアよりリリースする。“日本”に“在るところ”のファンクを主張する彼らの新作は、浜野のコミカルで楽しいイメージとは裏腹に、音楽的にはストイックで尖った仕上がりを見せている。今回、リアルサウンドでは浜野本人にインタビュー。新作に込めたファンクへの情熱から、SAKEROCKで活動を共にする星野源にも影響を受けたというバンド運営術、さらには多岐にわたる個人活動が在日ファンクに与える影響についても語った。

「リーダーシップはないけど、フォロワーシップはかなりある(笑)」

――今作『笑うな』は歌も演奏もソリッドで、全体的に尖った印象を受けました。とても音楽的で、ストイックな作品ではないでしょうか。

浜野: メジャーに行くってことは、「センセーショナルな感じにやってくれ!」という感じになるのかと思いきや、コロムビアの有名なディレクターさんに「ファーストみたいな曲を作ってくれ」と言われて。最初は「あんな荒削りの、痛々しい感じでいいのかな」と思ったんですけど、今までよりお金も時間もかけて、「原点回帰」というものを考えたんですよね。その結果として、サウンドも歌詞もどんどん削っていく方向になりました。最終的には「メンバーみんなにハマるかどうか」という言葉にならない基準でジャッジしましたね。

――タイトルトラックの「笑うな」は、ミディアムなところもありつつ、ファンキーな要素が強いですね。こういう曲を日本語で表現するのは難しいと思うのですが。

浜野: この曲、メンバーからも初めてちゃんと歌詞をほめてもらったんですよ(笑)。制作期間の終わりの方に、「あ、歌から作らなきゃダメだ」と気づいて、作り方を変えようと。これまではカラオケボックスに閉じこもって一人で歌メロを吹き込んだりしていたんです。それをやめて、自宅がある砧から世田谷通りを通って、環七若林まで歩いて引き返すというウォーキングの間に作ってみたら、珍しくメンバーからの評判がよかったという(笑)。

――トランペットなどのアレンジが、従来のジャズやファンクとは違う角度で入ってきます。

浜野: アカデミックな理論を持っているメンバーもいて、型破りなものを持っていくとよく苦笑いされちゃうんです。でも「絶対なんか言われるんだろうなー」と思うようなアレンジも、ハマると何も言われない。以前はけっこうぶつかっていたんですけど、僕の出し方が上手くなったのもあるし、メンバーの“クーデター”の起こし方もうまくなっていて(笑)。だから、メンバーの意見を聞いて「確かにこうして良かった!」と納得させられた部分もたくさんありますね。僕はリーダーシップはないんですけど、フォロワーシップはかなりある方だと思います(笑)。

――浜野さんがいつも音楽的にグイグイ引っ張っている、というわけではないと。

浜野: そうですね。合議制になるときもありますよ。ただ、僕の歌詞が出始めたら、誰も邪魔しないですね。「これどういう意味なの?」なんていう人もいないし、ちょっとだけあるリーダーシップを大事にしてくれる(笑)。

――バンドは上手くいっているように思えますが、運営上の悩みはあるのでしょうか?

浜野: やっぱりリーダーシップのあり方には悩みますね。例えば、ずっとメンバーとして活動している SAKEROCKで、星野源くんのリーダーシップを見ていると、「バンドってこういうものなんだ!」と学ぶところが大きいんです。SAKEROCKは「みんなで考えようぜ」ということからスタートして、最後はみんなが納得する形になるように星野くんが引っ張る。メンバーは「着いてきてよかったな」と思わせてくれるのが彼のすごいところなんです。サウンドも「こんなのありなのか?」って疑ったりするけど、やってみると「あ、これだ」って思いますから。

 で、それを在日ファンクに導入しようとすると失敗する。(笑)。在日ファンクだと、僕が「これはすごいんだ!」と言っても「それは違うよ」と返されて、メンバーの言うとおりにすると「あ、そっか」って僕が納得させられる(笑)。

――在日ファンクは、“上手く引き出すメンバー”と“上手く引き出されるリーダー”という関係性で成り立っているわけですね。

浜野: 大人じゃなかったら、こんなにミーティングやディスカッションを重ねるバンドは崩壊しちゃうと思うんですけど、そこは何とかいい塩梅でできていて。今回の音源に関しては、狭いレンジで一つひとつの音が分離していない“塊”のようなものを、メンバー全員が共通イメージとして持っていたんです。他でミーティングをやりまくっていたからなのか、これに関しては特に会話をせずとも共有できていたことに驚きでした。この7人による“塊”をどう伝えるか、今回はこれに定まっていたんです。

――なるほど。今回のレコーディングでは、どのメンバーの存在感が強かったのでしょう?

浜野: ベースの村上(啓太)ですね。彼はサラリーマンをしながらバンド活動をしていて、プレイが下手というわけではなく、どこか不器用で無骨なんですよ。そして、村上はわかりやすくて、できないものはできない。だから、僕が必要以上に小難しいベースラインを持ってくると制作がストップしてしまうけど、村上が納得して演奏しているとバンドはものすごい勢いで回り続ける。『笑うな』の制作中は村上の反応を見て、彼にハマらない曲はガンガン捨てて行きました(笑)。もともと「在日ファンク」という名前を提案したのも村上だったし、このバンドのことを一番わかっている男だと言っても過言じゃないんですよね。

――村上さんこそ在日ファンクであると。では、メンバー7人のファンクの原点とは。

浜野: 「聴いている音楽はバラバラだけど、JB(ジェームズ・ブラウン)は好きだよ」という感じですね。僕らは、よく「JBのマネじゃん」って言われるんですよ(笑)。ロックの場合は地平が広いから、「プレスリーのマネじゃん」とか、「結局、ビートルズだよね」なんて言われないですけど、ファンクはそうではなくて。一方で、「ファンクはそんなんじゃねぇ」とか言われる。そんななかで、これまでいろいろなアプローチで制作してきた結果として「何をやっても在日ファンクになるし、どんなやり方でも(カタカナで)ファンクと言っちゃえばいい」という結論になって(笑)。正直、洋楽至上主義みたいなのに嫌気が差しているところもあるので、「俺らは俺らの解釈をしようぜ」という形を作っていきたいです。

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