livetune、tofubeats、Sugar's Campaign……「次世代の中田ヤスタカ」になるクリエイターは?

 小室哲哉、中田ヤスタカなど、自身の母体である音楽活動で名を上げながら、他アーティストへの楽曲提供やプロデュース、アレンジなどで才能を発揮するスーパークリエイターは、各時代に必ずと言っていいほど存在する。ここでは、次世代の中田ヤスタカとなり得る存在として、4組のクリエイターを紹介したい。

livetune

 livetuneは、ミュージシャンのkzによるソロ・ユニット。2007年9月に音声合成ソフト「初音ミク」をボーカル音源として使用した楽曲「Packagedなどがニコニコ動画を中心にインターネット上で注目を集め、現在も続く“初音ミクブーム”の担い手の一人として活躍している。2011年にはGoogle ChromeのCM曲「Tell Your World」を発表し知名度を拡げた。さらに今年に入ってからは、レディー・ガガが大プッシュする気鋭の新人プロデューサー・ゼッドが、2月にリリースした1stアルバム『Clarity』の国内盤にリミックス曲「Spectrum feat. Matthew Koma (livetune Remix feat. Hatsune Miku) 」を提供すると、5月にはファレル・ウィリアムスがlivetuneの「Last Night,Good Night(Re:Daialed)」をリミックスし公開。いまや彼を取り巻く状況は世界規模にまで拡大している。彼の作る楽曲は、初音ミクを生ボーカルに近づけることなく、オートチューンやディレイを駆使し、機械的ながら細かく広がりのある声へと加工していることが特徴だ。

livetune feat. 初音ミク 「Tell Your World」

 livetune名義では、Fukase(SEKAI NO OWARI)、尾崎雄貴(Galileo Galilei)をボーカルに迎えた楽曲をリリースしたり、レーベルメイトであるBUMP OF CHICKENが初音ミクとコラボすることで話題を呼んだ「ray feat. HATSUNE MIKU」ではミクのプログラミングを手掛けるなど、ロックシーンとも積極的にコラボし、高い親和性を発揮している。コンポーザーとしては中川翔子の「Discovery」や嵐の「Fly on Friday」(編曲で参加)など、大物アーティストの作品で活躍しつつ、やのあんな、ClariSなどといった新世代のアイドル・ポップシンガーへの楽曲提供も目立つ。

やのあんな「Shape My Story」

tofubeats

 神戸で活動を続けるトラックメイカー/DJのtofubeatsは、学生時代からインターネットで活動を行い、今や大規模イベントを開催するまでに成長したネットレーベル・マルチネレコーズにも初期段階から参加。Perfumeの非公式リミックスで話題を集めると、その後はリミキサーとしてブレイク前夜のももいろクローバーを手掛けて話題に。自身の楽曲では2011年に公開した「水星 feat.オノマトペ大臣」がネット上で大ブレイク。“テン年代の「今夜はブギーバック」”などと称された。2013年にはWARNER MUSIC JAPANのレーベル「unBORDE」からメジャーデビューを果たすと、『Don't Stop The Music feat.森高千里』や『ディスコの神様 feat.藤井隆』といった大物アーティストをボーカルに迎えた楽曲を次々と発表。若い世代を代表するポップス・クリエイターとして徐々にその知名度を一般層にも浸透させつつある。リミックスワークでもフロー・ライダー、くるり、曽我部恵一BAND、SKY-HI、YUKIなど、ジャンルを問わず様々なアーティストの楽曲を手掛けている。

tofubeats「水星 feat,オノマトペ大臣(PV)」

 コンポーザー・プロデューサーとしての才能もずば抜けており、2011年からは清純派ヒップホップアイドル・lyrical schoolに楽曲プロデューサーとして参加。9nineの「CANDY」やNegicco「相思相愛」、さいとうまりな「ねむれないよる」など、様々なアイドル・シンガーの楽曲プロデュースも務め、若い女性の心情を捉えるガーリーな歌詞や、クラブミュージック・J-POP・ヒップホップなどを絶妙なバランス感覚で手掛ける技術には定評がある。また、東京女子流の新井ひとみとは盟友・okadadaとのユニット“dancinthruthenights”名義の楽曲「マジ勉NOW! feat.新井ひとみ」や、10月2日にリリースするアルバム『First Album』の先行配信曲「Come On Honey! feat. 新井ひとみ(東京女子流)」で共演を果たしている。

lyrical school「FRESH!!!」

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Sugar's Campaign

 Sugar's Campaignは、関西出身のSeihoとAvec Avecによる都市型ポップユニット。Seihoはブレイクビーツ・トラップ・ジューク・ダブステップなどを組み合わせる音楽性や、最先端を行くファッションなどで尖った才能を発揮し、レーベル「Day Tripper Records」の主宰としても活躍。MadeggやEadonmmなどの若手トラックメイカーのフックアップに成功し、ディスクロージャーやゴールド・パンダなど、世界的アーティストとの共演も果たしている。2013年にはMTVの注目若手プロデューサー7人に中田ヤスタカや先述のtofubeatsらとともに選ばれる(参照:7 Young J-producers to Watch Out For in 2013)など、国内外で高い評価を獲得。一方のAvec Avecは、マルチネレコーズやL.Aのレーベル「Mush Records」からリリース経験のあるクリエイターで、アーバンテイストのポップスや、ベースミュージックの制作に長けている。2012年にリリースした代表作『おしえて』は、ネット上で若い世代から熱い支持を受け、その後数々のアーティストの仕事を手掛けるようになった。そんな2人のユニットであるSugar's Campaignは、2012年1月に「ネトカノ」をネット上で発表し、同曲は2014年9月に待望のCD化が決定するなど徐々にその地名度を上昇させている。

Sugar's Campaign「ネトカノ」

 プロデュース・リミックスワークでは、Avec Avecが南波志帆、一十三十一、中江友梨(東京女子流)など数々の有名アーティストのリミックス、プロデュースを手掛けているほか、SeihoはYUKIの最新作『誰でもロンリー』にリミキサーとして参加している。そしてSugar's Campaignとしては、泉まくらの1stフルアルバム『マイルーム・マイステージ』収録の「東京近郊路線図」をプロデュースし、彼女の無機質な声を切なげなポップサウンドで装飾。泉の新たな一面を引き出すことに成功している。今回挙げたなかでは実績をそこまで積み上げてはいないが、今後注目すべき2人だということを紹介しておきたい。

「Day By Day feat.中江友梨」Web Ver.

じん(自然の敵P)

 じん(自然の敵P)は、上記で紹介した3組と違い、本体である自身のプロジェクトが様々なメディアを巻きこみ既に成功しているため、少し異質な存在だが、他アーティストへのプロデュースワークという意味合いで、今後面白くなっていく存在として紹介したい。2011年にボカロPとしてニコニコ動画デビュー。9月30日に投稿した「カゲロウデイズ」がVOCALOID殿堂入りを果たし、人気クリエイターの仲間入りとなる。その後、2012年3月30日に投稿された「コノハの世界事情」の投稿者説明文により1stフルアルバム『メカクシティデイズ』の発売、同時にじんの執筆による小説や原作のコミカライズ=「カゲロウプロジェクト」が発足し、中高生を中心に大きなブームを巻き起こしている。楽曲はドラムサウンドを際立たせたサウンドが特徴で、フレーズとしても多用されることが多い。また、「カゲロウプロジェクト」のような一つの世界観を楽曲群で表現する方向性もあり、歌詞を通して短編小説を味わうような雰囲気を楽しめる。

じん「ロスタイムメモリー」

 楽曲提供面では、モデルであり歌手としても活躍する春奈るなの「アイヲウタエ」に、作詞と作曲で参加。平野綾の次世代のアーティストと積極的なコラボを見せている。

春奈るな「アイヲウタエ」

 アーティストとしても、プロデューサーとしても活躍する彼らは、これからのJ-POPをどのように引っ張っていくのだろうか。小室にとってのglobeや、中田にとってのPerfume、きゃりーぱみゅぱみゅのような存在の出現が待たれるところだ。

(文=編集部)

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