特典ゼロ、10円着うた、パロディ動画……金爆の巧みなプロモーション戦略とは?

 極めつけは今年の1月、Twitterで引越し業者が鬼龍院の引っ越し先住所に関わるツイートをし炎上、さらに、『101回目の呪い』リリース時のテレビ番組の企画で行われたゲリライベントで、特典の握手券は抽選というシステムにもかかわらず、イベントでの購入者と握手してしまったことでファンからの苦情が殺到。「僕が呟くことによってその結果、巡り巡って誰かを傷付けてしまうこのツールは重い、悩んでしまう」「何でもニュースになってしまうのは気が重い」とTwitterを退会するという事件があった。これまでの「戦略」だったものが裏目に出てしまった結果といえる。

 とはいえ、鬼龍院自身は「日経エンタテイメント!(2014年9月号)」のインタビューで「戦略ではない」と言っているものの、売れなかったとしても「これだけ売れませんでした」というニュースになってしまうことが予想されるし、(シングル「ローラの傷だらけ」鬼龍院翔インタビュー)公式チャンネルにアップロードされたリリースインタビューも既に7万PVを越えており、音楽サイトでこのようなことを書くのもアレなのだが、下手な音楽専門誌やメディアに露出するよりも、確実に「見られて」おり、宣伝効果は抜群だ。金爆のプロモーションの巧みさが伺える。

音楽CDを売るということ、買うということ

 また、今回のリリースに対して、ブログやインタビューで「音楽”だけ”を売りたい」という発言が目立つ鬼龍院だが、こういった発言をすることによって、逆に「特典もつかないけどこのスタンスを応援するために複数買おう」というファンも少なからず出てくるのではないだろうか。

 2011年に事務所移籍トラブルにあった鈴木あみのCDを一斉に買って応援しようと呼びかけたケースや、05年にリリースされた『ハッピー☆マテリアル(テレビアニメ『魔法先生ネギま!』主題歌)』をオリコンチャート1位にしようというケースなどが有名で、「応援」するためにCDを買うことは熱心なファンにとってはさほど不自然なことではない。オフィシャルでつける「特典」以外にも「応援する」という意味での付加価値は現在の音楽市場では、なかば当たり前のことになっているのだ。

 オリコンチャートが日刻みで公開され、それに一喜一憂するアーティストも少なくない(個人的な観測範囲だとアイドルとヴィジュアル系バンドに多い)昨今、チャート結果を見て自発的に複数枚購入するファンの出現も予想される。

 この「実験」の結果は、「音楽CD」を取り巻く状況を一変させることは無いと思うが、一石を投じることになるのは間違いなさそうだ。

■藤谷千明
ライター。ブロガーあがりのバンギャル崩れ。執筆媒体は「ウレぴあ総研」「サイゾー」「SPA!」など。Twitter

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