hide、旅立ちから16年……先進的エンターテイナーとしての功績を振り返る
ポップセンス溢れるエンターティナー
自らの音楽を「サイボーグロック」と称し、いち早く機械と人間の作る音楽を融合させた。そんなhideの音楽の根底にあるものは「ロックをやろうとしたって歌謡曲で育った日本人」という歌謡ポップ性である。最先端のサウンドを取り入れながら独自のポップセンスで昇華させていく。自己顕示欲や音楽性探求からマニアックなところへ行くのではなく、それをヒットチャート上でやらなければ意味がない、みんなが解るものをやるという確固たるこだわりを持っていた。どんなにヘヴィな楽曲であっても必ずどこかキャッチーさがある、それは洋楽と邦楽の壁を取り払おうとした多国籍バンド、zilchにおいても同じだ。
墨汁の雨に打たれながら熱唱する歌番組の出演、どこから登場するのか解らないライブオープニング、あげればキリがないほどの型破りな演出は、完全なるエンターティナーのそれであった。サポートミュージシャン、特に右腕でもあるINAの存在、“マニピュレーター”という裏方であったポジションを音楽シーンの表舞台に上げた功績も大きい。
「作れば作るほど赤字になる」というH・R・ギーガーの立体ジャケット、開けるのに壊すしかない密閉された顔型の発泡スチロール製パッケージ、缶切りで開封する他ないスチール缶に入ったスライム漬けのビデオ……。誰も思いつかないような突拍子もないアイデアとセンスは、音楽以外の面でも発揮されていた。人を楽しませよう、驚かせようとすることにかけての天才であったのだ。
ジャンル関係なく「カッコいいもの」を教えてくれた。新しいサウンドやアプローチを解りやすく表現していた。そして何をすればファンが喜んでくれるのか、楽しんでもらえるのかを常に考えていた。そんなアーティストだ。
あれから16年。その存在は色褪せることなく、hideはずっと我々の中にいる。今でも黙ったまま、色んなことを教えてくれるのである。
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/twitter