円堂都司昭がBABYMETAL武道館公演を考察
キャンディーズからBABYMETALまで 「アイドルとロック/メタル」の40年史を読み解く
初めて首にコルセットをした。BABYMETAL初の武道館公演の1日目、「赤い夜 LEGEND “巨大コルセット祭り” ~天下一メタル武道会~」で、コルセット着用を義務づけられた観客の1人になったのである。記憶に残る熱演だった。
昨年末の幕張メッセ公演も見たが、あの時は巨大女神像や十字架への磔という演出が凄かった半面、骨バンドによるエア演奏が大半を占め、白塗りの神バンドによる生演奏は多くなかった。BABYMETALがヘヴィ・メタルであることを掲げている以上、大会場のライヴでは生演奏の音圧がもっと欲しいと思った。
その点、武道館では魔法陣風のステージが中央に組まれ、炎が上がることはあったものの、大がかりなセットや演出はなかった。その代わり、神バンドが冒頭から登場し、“ライヴ”感を前面に出した。終盤でのYUIMETALのステージ落下にはひやりとしたが、ラストの「イジメ、ダメ、ゼッタイ」で無事にまた踊っている姿を見て本当にほっとした。全体的には、SU-METALの真っ直ぐな歌声、YUIMETALとMOAMETALの可愛らしいパフォーマンスが光るよいライヴだった。翌日の武道館で、彼女たちが海外へ武者修行の旅に出ると発表されたことも喜ばしい。
武道館といえば、ディープ・パープルが名盤『ライヴ・イン・ジャパン』(1972年)のジャケットに武道館公演の写真を使って以来、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの一つの聖地になっている。その場所にBABYMETALが出演したことに感慨を覚える。
BABYMETALはアイドルとメタルの融合をコンセプトにしているが、日本の女性アイドルとメタルの関係を考えた場合、70年代のキャンディーズがパープルの「ブラック・ナイト」をカヴァーしていたことが思い出される。これは、洋楽への憧れがまだ強かった時代に、キャンディーズがあれこれ外国曲をとりあげたなかの1曲だった。
女性アイドルの側が、ロックの要素を意識的にとりいれて成功した例で最初に思い浮かぶのは山口百恵だろう。「ロックンロール・ウィドウ」(80年)が典型的だが、彼女は作曲者にダウン・タウン・ブギウギ・バンドの宇崎竜童を迎え、ロック寄りのハードな曲で強い女を演じ、当時の他のアイドルと一線を画した。