金子ノブアキ『Historia』インタビュー(後編)
「何をもって日本の音と言うべきなのか自問した」金子ノブアキが震災後に模索した音楽とは
俺はもう腹を括ってる。すべてのことを、すべてのためにやっている
――『Historia』というタイトルも含めて、何か“歴史の中に立つ個人”みたいな印象を受けました。
金子:そう、自分の個人名で出ているっていうのが、一個ポイントなんですよね。これがたとえば、よくわからないユニット名とかだったら、こうはならないはずなんですよ。“金子ノブアキ”っていう名前で出しているからこそ、意味があるというか。そうなるために、いろんなところで自分の名前と顔を知ってもらうために音楽、そして役者もやってきたわけで。まあ、自分の名前で出すかどうかっていうのは、制作スタッフ全員の決を採って決めたんですけど(笑)。手伝ってくれたみんながやりやすいようにやろうよって。だから、個人的な世界っていうのとも、またちょっと違うんですよね。大きな流れの中の、ひとつのポイントみたいなものというか。だから、金子ノブアキのアルバムではあるけど、そこにはあまりとらわれないで欲しいんです。そこが普通のソロ・アルバムと、ちょっと違うところかな?
――なるほど。
金子:だってさ、いわゆる芸能界でやっている時点で、もう自分では無くなっているわけじゃないですか? 自分の人生が存在しなくなっているというか、ものすごい無色透明なものとして、それを実験台にいろんなことをやっているわけで。でも、そこに充実感もあるからさ。
――そこでひとつ腹を括ったんじゃないですか?
金子:っていうふうに感じてもらえたら、すごくうれしいけどね(笑)。自分の名前が出ることによって、ささやかなものに見えちゃうのは、ちょっと嫌だなって思って。自分と向き合い過ぎているように思われたりとかさ。まあ、そればっかりは自分では計り知れないけど、もう自分であって自分でないような人生になって来ているから。でも、俺は音楽のおかげで、それを面白がれる人生になっているんですよね。音楽があるからこそ、そこでバランスが取れているというか。
――そんなアルバムを、どんなふうにリスナーに受け止めてもらいたいですか?
金子:それこそ、今言ったみたいに、俺はもう腹を括っているからさ。すべてのことを、すべてのためにやっている。だから、真っすぐに受け止めてもらえたら、すごいうれしいですね。あとは俺、ホントに音楽が好きなんですよ(笑)。そういう音楽愛が伝わったらいいなって思うし……これを聴いて、音楽ってすげえんだぜって思ってもらえたら、それがいちばんうれしいかな(笑)。
(取材・文=麦倉正樹)
■リリース情報
『Historia』
発売:2月12日
価格:¥2,700(税抜き)
〈収録曲〉
1. Historia
2. Postman
3. Weather and Seasons
4. Call My Name
5. Signals
6. Ranhansha
7. Curtain
8. Sad Horses
9. The Chair