Hello Sleepwalkersの曲展開はなぜ読めない? 主要楽曲をプレイヤー目線で分析
「予測不能の、プログレッシブな曲展開」。音楽雑誌のレビューなどで、こんな言葉を目にする機会は多い。ただ、一見すごそうに見える言い回しではあるものの、00年代のポストロックやエモの流行によって、日本のロックが複雑化して行き、情報量の多いロックがスタンダード化した今、この言葉はもはや常套句に過ぎず、実際に曲を聴いてみると、大して驚きを感じないこともよくある。
しかし、2月19日にセカンド・アルバム『Masked Monkey Awakening』を発表する沖縄出身の5人組Hello Sleepwalkersに対しては、この「予測不能の、プログレッシブな曲展開」という言葉をどうしても使いたくなる。なぜならば、彼らの場合はメンバー自身ですら、あえて曲の展開を予測せずに制作しているからだ。ソングライティングの中心を担うシュンタロウ(ボーカル/ギター)は、基本的に曲をアタマのパートから順番に作っていくそうで、最初から曲の全体像を見ているわけではない。つまり、シュンタロウは曲を作っている段階で、そのパートがAなのかBなのか、場合によってはサビなのかさえ、決めていないのだ。そんな彼らの自由な発想を象徴しているのが、2012年の1月にシングルとして一足早く発表され、アルバムのラストを飾る“円盤飛来”だ。
一聴してこの曲の構成を把握できる人はおそらくは一人もいないだろうし、最初はサビがどこかすら掴めないかもしれない。一応曲の展開を筆者なりに書き起こしてみると「イントロ→A→B→サビ→C→サビ×2→D→E→間奏→F」ということになるだろうか。コード進行が近いパートにも何らかの変化が必ず加えられているし、彼らは男女ツインボーカルで、日本語と英語も混ざっているので、とにもかくにも目まぐるしい。しかも、3回あるサビも1回目は白玉(全音符)、2回目はブレイク、3回目はフレーズと、バックの演奏がそれぞれ違っていて、つまりこの曲は繰り返しが一切ない曲なのだ。フレーズが一拍ずつ伸びて行き、変拍子で締め括られるラストまで、その予測不能の動きはまさに飛来する円盤。「禁断の調合 無尽蔵の探究心」という歌詞も、そのまま彼らのソングライティングについて指し示しているように聴こえる。