EDMの立役者アヴィーチーが語る、新たなビジョン「僕は既成概念を壊したい」

輸入盤は昨年の9月にリリースされており、高い評価を受けている

 そして、昨年9月にリリースされた(国内盤は今年1月22日(水)発売)『True』も同様の快進撃を続けている。「You Make Me」や「Hey Brother」など収録曲の多くで新しい彼の音楽性を垣間見ることができるのだが、特に「Addicted To You」で、御年72歳のUSカントリー・ミュージックの大家、マック・デイヴィスが参加していることに驚かされる。24歳のEDM界のスーパースターと72歳のカントリー・ミュージックの大御所の共作は、日本で言えば演歌歌手とハウスDJのコラボにでもなるのだろうか。トラディショナルな音楽を取り入れ、最新のスタイルを確立する手法は、まさに“温故知新”だ。

Avicii - Addicted To You (Lyric Video)

 そういった意味では「Lay Me Down」も当てはまる。同曲では、ダフト・パンクの「Get Lucky」に参加して話題となったギタリスト、ナイル・ロジャースがフィーチャーされている。本人が明言しているが、ダフト・パンクの新作にナイル・ロジャースが参加していたことをアヴィーチーは知らずに、熱烈なファンだったためオファーを出した(情報解禁の時差や制作期間の点から考えても、知らなかったと考えるのが妥当)。こちらは、グルーヴィーなディスコ調のトラックに、アダム・ランバードのしなやかなボーカルが躍動しており、『True』にまた異なる色彩を加えている。

 「True=真実」と名付けられた本作は、絶好のタイミングで従来のEDMの概念を破壊し、新しい価値観を創造した。流行というものは最高潮に達するとあとは緩やかに下降線を辿るのが一般的な法則だが、『True』はEDM、ダンス・ミュージック・シーンに“まだまだ面白くなるんじゃないか”という大きな可能性を提示してくれた。アヴィーチー本人もリスナーに対し、「本作でエレクトロニック・ミュージックの可能性に終わりがないことを知ってくれたらと思うし、自分自身に忠実に、先入観なしに聴いてほしい」と語っている。なにかとジャンルにカテゴライズするのは便利な一面、ある一定の枠組みで囲ってしまう危険性もはらんでいる。今後、EDMシーンやリスナーが『True』をどう受けとめ、どのような変化を見せていくのか。2014年はそういったサウンドの変遷に注目していきたい。

 最後に、アヴィーチーは昨年のDJ MAG誌「TOP 100 DJS」で第3位、mixmag誌「DJS OF THE YEAR」で第2位にランクインしている。両誌のトップ10にランクインしているのは、アヴィーチーのみである。昨年の「Springroove」では残念ながら叶わなかった来日パフォーマンスが、早期に実現することを願う。
(構成・文=中西英雄 インタビュー=佐藤 讓)

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