海外のヴィジュアル系ブームに変化の兆し 音楽性が重視される傾向に

 今月26日にロサンゼルスで行われる第56回グラミー賞の授賞式を前にある「事件」が起こった。グラミー賞のオフィシャルサイトで最も閲覧された写真「SnapshotのBest Of 2013」で名だたる世界のミュージシャンをおさえYOSHIKIの写真が1位に輝いたのだ。YOSHIKIといえば1980年代から90年代にかけてX JAPANで活躍、ヴィジュアル系というシーンを築いたミュージシャンとして海外でも神格化された存在。今回のグラミー賞での「事件」は彼が今なお世界中で信者を抱える存在であることを示したと同時に、ヴィジュアル系というジャンルが日本外においても広く一般化されたものであることを証明したといえるだろう。

 2000年代に入り「海外でヴィジュアル系ミュージシャンが大人気」といった類のニュースをよく耳にするようになった。インターネットにより日本のサブカルチャーへ容易にアクセスできるようになった結果、アニメやマンガ、ゲームなどと並んでヴィジュアル系も注目を集めるようになったのだ。Googleトレンドにおける「visual-kei」の検索数は2005年頃から急増。フランスで毎年開催されている「ジャパン・エキスポ」は2000年から開催され、当初は数千人だった来場者が今では30万人以上集めるまでの一大イベントとなっている。これはフランスに限った話ではなく、北米やロシア、最近では台湾、香港、タイ、シンガポールといったアジア諸国でも数万人規模の来場者を集めるという。ヴィジュアル系ブームは一過性のものではなく、もはや各国のサブカルファンに根付いた立派なイチ文化にまで成長したのだ。

 しかしそんなヴィジュアル系ブームだが、ここ数年は変化の兆しがみられているという。これまでは日本のヴィジュアル系バンドがやって来ると聞けば、どの会場も盛況な入りを記録していた。しかし2010年頃から状況は一変する。人気を集めるバンドとそうでないバンドの二極化が進み、集客力のないミュージシャンのライブは空席が目立つようになったのだ。ヴィジュアル系の事情に詳しい関係者はこう語る。「ヴィジュアル系という目新しさだけで人気を集められたのも昔の話。今は海外ファンの目も肥えてきており、良質な音楽や見応えのあるパフォーマンスができるバンドに人気が集中してきている」。まだ知名度の高くないヴィジュアル系バンドの過剰な海外進出も業界にとってはネガティヴに作用しているという。新しいもの好き、自ら発掘するのが好きな音楽ファンのパイを喰い合うことになり、結果どの若手バンドも集客できなくなってきているというのだ。

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