「ライブの熱狂」を生む音楽的条件とは? BOOM BOOM SATELLITES×Fear, and Loathing in Las Vegas対談
——先ほど川島さんが言っていた、エレクトロニクスとフィジカルの両立という点で、べガスが音楽作りで心がけているのはどんなところですか?
Sxun:自分らでできることをやってるだけなんですけどね。打ち込みもあるし、生っぽさもあるし、どっちも普通にあるっていうか、自然に成り立ってしまったんですよね。ルールがないというか、知識のなさから生まれた、偶然の結果ではあると思うんですよ。普通だったらできないテンポチェンジとかも、「でも、ここは速くしたいから速くするんだよ」っていう感じで。
Tomonori:このバンドには、「やっちゃダメなことはない」っていう考えがあるんですよね。個々のメンバーの個性をそのまま掛け合わせていったのが今の僕らの音楽で。普通だったらメタルとエレクトロを掛け合わせないだろうってところも、平気で掛け合わせていくし。基本的には、かなり感覚的な作業で曲を作っていってます。
中野:そこは、僕らと本当に真逆だと思います。彼らのやってる音楽もミクスチャーの一種ではあると思うんだけど、ある時代まで、ミクスチャーのバンドにも必ず出所があったんですよ。ヒップホップがベースになっているのか、インダストリアルがベースになっているのか、あるいはデトロイトのテクノがベースになっているのか、ヨーロッパのテクノがベースになっているのか。必ずそのミクスチャーには出身地のようなものがあって、それを大事にしてきたわけです。ジャンルの壁という点では海外はとても厳しくて、レコードショップでレコードの置かれる場所とか、クラブだとか、ライブハウスだとか、ラジオの海賊局とか、ちょっとでもその枠から外れると弾かれることになる。
たとえば、Asian Dub Foundationっていたじゃないですか。日本ではいろんなタイプのリスナーが聴いてたけど、向こうでライブに行くと、お客さんは全員インド人ですからね。そういう場所で自分たちもやってきたから、ジャンルの壁というのはすごく意識してきた。でも、べガスのやってることは、そういうところから解き放たれていて、そこが面白いと思う。それはやっぱり、インターネットの影響が大きいと思うんですよね。レコードショップに行ったら嫌でもジャンルを意識させられるけど、ネットにはそういう壁もないですからね。以前は、一つ一つの音、リズムに理由づけが必要だったけど、今はその必要性が薄れてきた。そういう時代の潮目の変化に晒されているってことは、僕らも日々意識してますし、だからこそべガスのやってることがキラキラしたものにも見えるし、それだけタフな時代になったなって思いますよね。それは音楽だけじゃなくて、歌詞にも言えることで。たとえば川島くんが歌詞を書く時に、ジャック・ケルアックを意識したり、ルー・リードを意識したりしたとして、そこに何の意味があるのか、それがちゃんと新しい世代にも伝わるのかっていったら、もうそういうことも難しくなってきた気がするし。
——そういう状況は、もう良い悪いではなく、現実としてそこにあると。
中野:そう。だけど、それでも伝えていくのが自分たちのやるべきことですからね。
Tomonori:やっぱりインターネットはでかかったんだっていうのは、中野さんの話を聞いてて思いますね。自分たちは、音楽を歴史としてとらえることは全然なくて、どの時代の音楽もただの音としてとらえてますからね。そこから、好きなものだけを繋ぎ合わせていくっていう、ある意味、禁断のことをやってるんだっていう(笑)。
中野:でも、それで良い音楽が作れるんだったら、今はそれでいいんだと思うんですよ。僕も、くるりの岸田くんと話してる時と、凛として時雨や9mm Parabellum Bulletのメンバーと話してる時では、その時点で世代の分断を感じますからね(笑)。だから、その分断は今に始まったことじゃなくて、もっと前から始まっていて、べガスと話してる時は、それをもっと感じる(笑)。
So、Tomonori、Sxun:(笑)。
——べガスがこの先目指している音楽というのは、どういうものなんでしょうか?
Sxun:まだはっきりとした未来像は見えてないですけど、自分たちはいろんなジャンルの要素を取り入れてますけど、だからといって、それぞれのシーンでその音楽を極めている人たちに負けたくないという思いがあって。いろんなジャンルに手を出して、それぞれが60点でも意味がないと思うんですよ。やるなら、それぞれのジャンルを極めている人たちに負けないものだけが、自分たちのところに並んでいるような音楽を作っていきたいですね。いいとこ取りっていうだけじゃなくて、それぞれのフレーズがどこにも負けないからそこに入っているっていう。そういうハードルを自分たちに設けていきたいです。
Tomonori:それぞれのジャンルに入れ込んでいるリスナーに、ちゃんと納得してもらえる音楽が作っていきたいですよね。もしかしたら音源だけだと毛嫌いする人もいるかもしれないけど、そういう人にも、ライブの現場で説得力のあるパフォーマンスと自分たちへの音楽へのひたむきさを見せていって、最終的には好きだと言わせたいですね。
So:そのためにも、ボーカリストとしてもっと表現力をつけないとなって思ってます。
——最後に先輩であるブンブンのお二人から、べガスへのメッセージを。
中野:反面教師にしてください。
So、Tomonori、Sxun:(笑)。
川島:先輩と言っても、僕らの方が刺激を受けてるくらいですから。実際、同じステージに立ったらキャリアなんて関係ないので。これからもお互いさらなる高みを目指して頑張っていきましょう、ってことしか言えないですね(笑)。
(取材・文=宇野維正)
■シングル情報
『Rave-up tonight』
価格:¥1,524+tax
〈収録曲〉
1. Rave-up Tonight
2. The Courage to Take Action
3. Step of Terror
4. Ley-Line (BOOM BOOM SATELLITES REMIX)
5. My Dear Lady, Will You Dance With Me Tonight? (Takkyu Ishino’s Rave 1991 Remix)
6. Chase the Light! (ヒャダインのリリリリ☆リミックス)