MO'SOME TONEBENDER『Baseball Bat Tenderness』インタビュー(後編)
「バンドは効率を求めると長く続かない」モーサムはこうして危機を乗り越えてきた
――でも結果的にはモーサムの新しい面を切り開くことになった。
百々:そうなんですよ。だからポイントポイントで、それがあったらその後がある、ってことがたくさんあるので。まあすごく時間がかかるんだと思います、モーサムの場合。解決に至るまで。効率悪いなって思うんですけど、効率を求めると続かないってこともわかってるから。最近サラリーマンとか会社っぽいバンドが多いって思うんです。ちゃんとシステムにはめるというか。曲作る人、詞を作る人、MCする人。お笑い担当、みたいな。そういうふうにわかりやすく決まらないですねえ、モーサムは。それぞれ考えてることが違うから。
――長年やってるとお互いの領分ってわかってくるじゃないですか。これ以上踏み込んだらまずい、とか。
百々:あ、それはありますよ。ほっとくことが多くなりますね。これぐらいまでは好きにやらせておこうとか。なのでライヴもどんどん広がってる気がしますね。
――ステージ上で武井くんがどんな格好してもOKと。
百々:そうですね。そういうとこまでオレの趣味と違うからっていちいちNOって言ってたら、バンドは続かない。いまだにわかんないことたくさんありますからねえ、二人に対して。何を考えてるのか(笑)。だから、なんじゃそれと思ってても、それを楽しめればいい。曲作ってライヴやってレコーディングしてツアーに出て…それ以外の部分をそんなに気にしなくなったというのもありますね。以前は、たとえば3人でインタビュー受けてると、武井の受け答えにカチンとくるとか(笑)、勇がまたオレと真逆のこと言ってるとか(笑)、その格好はなんだとか(笑)、そういうのは一切気にならなくなった。
――なるほど。
百々:あとね、福岡から一緒に出てきたっていうのは大きいと思う。東京でバンド組んでたらまた違うかなと思いますね。
――故郷から共に一旗揚げに来た、運命共同体的な。損得勘定じゃない関係。
百々:なんだなかんだ言って、3人でモーサムを守っていくというか…(その意識で)固まってる感じがあるんですよね。口じゃ言わないですけど、そういうことは。福岡で組んで3人で東京に出てきて、ここまでやれて…(長い沈黙)…モーサムっていう武器、かなあ。武器があるから今日まで3人で戦えてる、みたいな気分があるのかもしれない。
――モーサムは拠り所という感じがある。
百々:うん。ありますね。言いたくないけど。フフフ。なくなったら困るな、という感じはあります。
――いい話じゃないですか。
百々:<いい話>にしたくないけど。フフフ。鬱憤を晴らす場ですからね(笑)。バンド以外の場所でこれだけ発散させようと思ったら、犯罪ぐらいになるんじゃないですか。バンドっていうだけで許される。本気の暴動じゃなくて、<暴動のようなライヴ>っていうだけで、客に喜ばれる。こりゃもう、最高だなと。
――その、沸点までガーッと登りつめていく感じは、あのふたりとしか得られない。
百々:そうですね。モーサムじゃないとないでしょうねえ…モーサムがなくなる時がくるとしたら、オレの中のそういう部分は折れるんじゃないかなと思いますけどね。闘争のためにやる音楽っていうのは。
――そういう燃え上がるような闘争心が、3人ともまだまだ残っている。
百々:まあねえ。でもこのアルバムがめちゃくちゃ売れたら、そういうものはスーッとなくなってしまうかもしれない、フフフ…。
――長くやってるわりに、しょぼくれたり萎んだりカビ臭くなってるとこがないでしょう。いつも攻めてるし、ギラギラした若さがある。それがある限り、まだまだいけると思います。
百々:じゃあ、それがなくなったら言ってね(笑)。まあ実際そうなったら辞める時だろうねえ。
――メンバー同士が本気でぶつかってる限りは、大丈夫じゃないですか。本気でぶつかるってことは、自分が思い描いている理想があって、相手に期待するものがたくさんあるってことですからね。
百々:うんうん。そうだね。諦めたらもう何も言わなくなるもんね。
(取材・文=小野島大)
■リリース情報
『Baseball Bat Tenderness』
価格:¥2,940
<収録曲>
1. ヒューマンビーイング
2. パラダイス
3. FEEVEER
4. ジェネレーションZ
5. マッドネス
6. メタリックブルー
7. ポップコーンダンス
8. バーニング
9. LOVE & PEACE
10. そしてみんないなくなった
11. Happy Blue Bird
12. G.O.