MO'SOME TONEBENDER『Baseball Bat Tenderness』インタビュー(前編)
「手抜きなしで、常にエクストリームでありたい」百々和宏がバンドに求める衝動とは?
――これってgeek sleep sheepと同時進行で作ってたんですよね。
百々:そうですね。
――前のもソロと同時進行で…。
百々:(笑)そうなんですよね…ほら、ペダルこいでないとこけちゃうから。自転車(笑)。
――自分で言いますか(笑)。勇くんもART-SCHOOLのアルバムを作ってたわけでしょ。各自そういうアウトプットを持ったことが、モーサムの制作になにか影響してますか。
百々:オレはすごいありましたけどね。
――各自ほかにアウトプットがあるから、逆にモーサムでやるべきことが明確になったのではないかと。
百々:イエス(笑)。モーサムやるのってしんどいなと思ってずっとやってきたんですけど…ソロもgeekもやってきて、ああこのバンドは取っ替え効かないなあというのを改めて感じましたね。ここまでこう・・・終わったら立てなくなるぐらいのテンションでライヴをやって、やりきった感じが出せるバンドって、モーサムでしかありえんなあと。
――ソロでもgeek sleep sheepでも得られないものがモーサムにある。
百々:自分の中の、ほかでは出せないものを、一番強い形で出せるのは、モーサム以外にないから。モーサム以外の場所にはないんですよ。わかりやすく言うと喜怒哀楽の怒だったり。
――以前にお話を訊いた時に印象的だったのが、モーサムは後で聞き返したくないようなものをとことん追求したほうが絶対良くなるっていう言葉です。
百々:うん、なんですかねえ…全力でモーサムはやらなきゃいけないし、手抜きは一切できない、常にエクストリームでありたい…というのがあるんで。自分の中のぐしゃぐしゃ感を吐き出したいという気持ちが強い。それを表に出すときのパワーが一番でかいなと。
――それはバンドを結成した当初から変わらないわけですか。
百々:うん、それは変わらないですねえ。ほかにうまいやり方を知らなかったというか。この3人で音を出すとそうなってしまう。とはいえ、やれる限りのバンドとしての冒険をして、ポップな歌ものアルバムを作ってやろうって時もあったし、どれぐらい間口を広げられるのかと考えたこともありましたけど。
――以前、ポップなのを作って気が済んだのかと訊いたら、全然そうじゃないって言ってたでしょ。その気が済んでない部分が、geekとかソロに行ってるってことですか。
百々:そうですね。めちゃめちゃ行ってると思います。モーサム聴いてるお客さんってこういうの求めてないんだなって、すごく思いましたもん。あと、そういうアルバム作って回ったツアーの、ステージ上のたたずまいがしんどかったというのがあるしね。こう・・・やりきった感が出ない。
――ああ、本人がね。
百々:そう(笑)ドガシャーン!しかやったことなかったんで。なんかこう…緻密で完成度の高いサウンドを音質重視で出していこうと、そのころのツアーを回ってたんですけど、なんかどっか…やりきれない感が残って。
――あのポップ路線が商業的に成功してたら、あのまんま続いてた可能性は高いんですか?
百々:ああ〜〜どうでしょうねえ…難しいなあ。
――あのまま続けてたら、あの路線がバンドにもお客さんにも馴染んでいって…。
百々:うーん、でもね、そうなったら解散してたと思う。だったら別にモーサムじゃなくてもいいって。
――なるほど。今はそういう意味で、モーサムにしかできないことをやってる。
百々:そうですね。オレはそのつもりでやってるけど、ほかのメンバーがどう思ってるのかはわかりません(笑)。
――で、今回はライヴのクオリティがあがってきたことに比例して、迷いのない状態までやりきった。
百々:うん。これだけのもの作ったから、あとは細かいこと考えずにツアーに出れる。
――今回はそのままライヴで再現できる。
百々:うん、全部できますよ。できない曲はいれないでおこうっていうのはあった。
――アーティスト写真もかなりふっきれた感が。
百々:そうすねえ…どうなんでしょう?この武井の鬼の仮面とかねえ(笑)。
後編に続く:「バンドは効率を求めると長く続かない」モーサムはこうして危機を乗り越えてきた
(取材・文=小野島大)
■リリース情報
『Baseball Bat Tenderness』
価格:¥2,940
<収録曲>
1. ヒューマンビーイング
2. パラダイス
3. FEEVEER
4. ジェネレーションZ
5. マッドネス
6. メタリックブルー
7. ポップコーンダンス
8. バーニング
9. LOVE & PEACE
10. そしてみんないなくなった
11. Happy Blue Bird
12. G.O.