「本当はスタジオと同じ音で聴いてほしい」鈴木慶一が“音楽と音質の関係”を語る

――キャリア分だけ知識が増えて、やることも増えているっていう。

鈴木:そういうことなんだよね。でも、私のまわりにいるミュージシャンを見ると、みんなそういう感じだよね。宅録したり、機材に詳しかったり……ムーンライダーズもそうだったな。次のアルバムを作ろうってなって、メンバーのデモを集めると、『これ、いい音してるな』とか『新しい機材、買った?』とか、そんな話ばっかりで、なかなか曲の話にならない(笑)。

生音がすべて聴こえるような画期的なシステムを

――技術的なことで、今後やってみたいことって何かありますか?

鈴木:何か画期的な新しい機材が出ないものかなっていうのは思いますけどね。長い間ステレオの時代が続いて、それが5.1chまで来て……で、アナログに戻ったりいろいろなんだけど、結局は同じところをグルグル回っているだけなので、それを突破するものは、何か無いものかと。それは無いのかもしれないし、私が生きているうちには登場しないのかもしれないし、それはわからないですけど。とりあえず、両耳で聴くっていうのは、ずっと変わっていないわけで。

――ああ……脳で聴いたりとか?

鈴木:そうそう(笑)。ただ、民俗音楽とかでは、そういう感じのものがあったりするよね。こないだジャジューカっていうモロッコの音楽を聴いたんだけど、眉間にツーンと来るんだよね。それは恐らく、倍音がトランス状態を起こしているんだと思うけど、倍音を表現するのは、やっぱりCDのサイズじゃ難しいかもしれない。だから、生音がすべて聴こえるようなシステムを――とか言ってると、オーディオ・マニアみたいになっちゃうけど(笑)。でも、そこを突破するものが何か出ないものかっていうのは、常々思っていますよ。

――仮にそういうものが出たら。

鈴木:うん。真っ先に飛びついて、何かやろうって思うだろうね(笑)。

(取材・文=麦倉正樹/写真=竹内洋平/『極上の音質で楽しむ最新PCオーディオ入門 (洋泉社MOOK)』より抜粋記事)

関連情報

『極上の音質で楽しむ最新PCオーディオ入門 (洋泉社MOOK)』
発売日:2013年11月26日
価格:¥1,365(税込み)
出版社:洋泉社

<内容>
 ハイレゾってなに? 音楽ファイルの種類が多くてわからない……レコードやカセットテープをデジタル化したい! など、PCオーディオにまつわるあらゆる疑問・要望に回答するムック本。今回の鈴木慶一氏のインタビューのほか、ヴァイオリニストの寺井尚子氏や、オーディオ評論家の麻倉怜士氏のインタビューも掲載。これ一冊でPCオーディオは丸わかりです。

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