「10年ぶりにエレキが弾きたくなった」織田哲郎が最新作『W FACE』に求めた“衝動”とは?
ファンだった中島みゆきさんに歌詞をお願いするまでに、1、2年が過ぎていった
――幅広い音楽性をお持ちのうえで、1曲ごとにそれを使い分けているのか、それとも1曲のなかでミックスしているのか。
織田:ミックスされているでしょうね。自分のなかで何十年も、例えばタマネギやら大根やら何やらが煮込まれているわけだから、「出汁はどれの味だ?」と言われてもわからないようなことは多々あって(笑)。今作だと、特に「Winter Song」などはそういう音楽だと思います。
――「Winter Song」は中島みゆきさんによる歌詞も素晴らしい作品です。以前からお知り合いだったんですか?
織田:いや、単にこちらがファンだったんです。ずっと楽曲提供をしてきたBBクイーンズのボーカル・坪倉唯子がみゆきさんのコーラスをずっとやっているし、一緒にやっているサックスの古村敏比古も関係が深いから、つながりはあって。そういう縁で、ライブを観に行ったときに楽屋で挨拶させてもらったことはありました。でも、それくらいの関係でしかなかった。
作詞作曲をして、それを自分で歌っている中島みゆきさんの音楽が好きだったから、一緒に音楽を作りたい、という考えはなかったんです。ただ、唯子と飲んでいるときに、酔っ払って「俺はこんなに中島みゆきが好きなんだ」ということを相当しゃべったらしいんですよ(笑)。そのあとに「そんなに好きなら、みゆきさんに歌詞を書いてもらえばいいじゃん」と言われて、初めてそれは面白いかもしれない、と気づいて。それが2年くらい前のことで、ずいぶん悩みましたよ。もともと曲・歌詞・歌の全部を含めて、その世界観のファンだから、「どんな曲を書けばいいんだ?」と。だんだんとみゆきさんの曲っぽいものを作り始めて、「これ、俺が書く意味ないじゃん!」って思ったり(笑)。
何だかんだで、1、2年はお願いすることなく過ぎていって、結局は今回のアルバムを象徴するように“勢い”でお願いしました。「イメージが湧くものがあれば歌詞を書いていただければうれしいし、そういう曲がなければ、なかったことにしていただければ」とお願いして、みゆきさんから「この曲を書いてみたい」と言ってもらえたのが、「Winter Song」だったんです。
――仕上がった歌詞は、緊迫感のある言葉の運びといい、まさに中島みゆきさんの世界ですね。
織田:さすがの一言で、ちゃんと「中島みゆきの詩」という世界ができていることに感動しました。ずっとファンだったので、単純に嬉しかったですね。
――他方、『DISC-BLUE』には織田さんの持ち味の一つであるバラードも収録されています。音楽生活30周年ということで、今作について「集大成」という意識はありましたか。
織田:あまり考えていなかったんですけど、結果として集大成的な作品になりました。これもなりゆきだけれど、洋楽のカバーを入れたのもよかったですね。自分がカッコいいと思うロックの原型、メロディアスだと思うものの原型、という意味で両方に入れています。本当に行き当たりばったりだったなあ(笑)。
――さて、11月8日からは福岡、大阪、東京を回るツアーがスタートします。最後に、こちらについても一言。
織田:ツアーと言っても初日と中日と最終日しかないんだけどね(笑)。今回はバンドが面白いんですよ。サックスの古村敏比古だけは大学の同級生で、55歳。ギターとベースは25歳、ドラムとキーボードが35歳くらいかな。だから、仮のバンド名が「ふたりの親父と息子たち」(笑)。世代を超えたバンドの演奏に注目してもらえればうれしいですね。
(取材・文=神谷弘一/写真=竹内洋平)
■ツアー情報
TETSURO ODA LIVE TOUR 2013
『ソロデビュー三十周年大感謝!されどいまだ未熟者、先は長いっす。』
メンバー:古村敏比古(Sax)、佐治宣英(Dr)、櫻井陸来(B)、宮崎裕介(Key)、奈良悠樹(G)
-福岡-
11/8(金) DRUM LOGOS open 18:30 start 19:00
〇一般発売 9/21~ (問)TSUKUSU TEL: 092-771-9009
-大阪-
11/9(土) BIG CAT open 17:30 start 18:00
〇一般発売 9/14~(問)サウンドクリエーター TEL: 06-6357-4400
-東京-
11/17(日) SHIBUYA-AX open 17:00 start 18:00
(問)ディズクガレージ TEL: 050-5533-0888