AKB48が芸能の原点に回帰!? 新曲「ハート・エレキ」がGSサウンドとなったワケ

 では、本作「ハート・エレキ」はどうだろう。まず、AKBのファンが「ハート・エレキ」を聴いた時、頭に思い浮べるのはAKBのチームAの「会いたかった」公演のユニット曲「涙の湘南」であろう。大島麻衣、篠田麻里子らAKBの中でもお姉さん的なメンバーで構成され、ザ・スパイダースの「太陽の翼」のジャケットを想像させるGS風衣装と、“エレキ”を強調したGSサウンドが特徴的だった同曲。当時のAKBの楽曲が“大人びた少女”を描いたものが中心だった中、ストレートに“大人の女”を描いた珍しい楽曲だった。そんなお姉さんたちの姿を見て、峯岸みなみは「当時、憧れのユニットだった」と、『リクエストアワーセットリストベスト2010』のDVDコメンタリーにて語っている。「涙の湘南」のフォーマットに近いという意味を含めると「ハートエレキ」には、秋のAKBの楽曲として、いささか目新しさに欠けるように感じる。

 ただ、秋のAKBシングルには必ずなんらかのメッセージがあるのだとすれば、以下のように読み解くこともできる。60年代のGSブームは渡辺プロダクションやホリプロの興隆につながる、現在の日本の芸能界のシステムの基板を作ったシーンでもある。そこへの回帰とは、AKBが世間とエンターテイメントでつながり続けるための礎を、日本の芸能界に改めて築くためではないのだろうか。「ハート・エレキ」でセンターを務めるのは、わずか三人となってしまったAKB48劇場のオープニングメンバー小嶋陽菜である。小嶋はセンター経験こそ一度もなかったが、モデルや女優、さらにはバラエティ番組でも長らくAKBの人気メンバーとして活躍してきた。前田敦子、篠田麻里子というAKBのアイコン的存在を失った今、世間ともっとも深くつながることができるメンバーは、指原莉乃と小嶋陽菜なのかもしれない。

 さらには、小嶋陽菜センターのGS曲には、「恋する~」で世代を越えたエンターテイメント作りに成功したAKBが、より大人も楽しめる“成熟したAKB”へ向かおうという意図があるのかもしれない。ブームから定着へ。AKBが向かおうとしているのは、少女性を売りにしてきた多くの女性アイドルが経験したことがない、未知なる領域であるはずだ。

■エドボル
放送作家。『妄想科学デパートAKIBANOISE』(TOKYO FM水曜25:00-)『安田大サーカスクロちゃんのIdol St@tion』(目黒FM隔週木20:00-)、『Tokyo Idol Festival2013』(フジテレビNEXT)など、テレビ・ラジオなどの構成を担当。サイゾー、SPA!などでもアイドル関連のインタビューを中心に執筆中。

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