松本穂香主演『この世界の片隅に』が目指すのは“夜の朝ドラ”? オリジナル要素は原作の延長線上に

『この世界の片隅に』が目指す「夜の朝ドラ」

 7月15日21時からTBS系の日曜劇場で放送される連続ドラマ『この世界の片隅に』の第1話を試写で拝見させていただいた。

 原作は、こうの史代が2007年から2009年に『漫画アクション』(双葉社)で連載していた同名漫画。舞台は終戦となる昭和20年へと向かっていく広島。広島市江波で暮らす主人公のすずは、絵を描くのが好きなぼ~っとした女の子。彼女が高校を卒業して広島の呉市に嫁いでいくところから物語ははじまる。

 漫画らしいかわいらしい絵柄で展開される壮絶な物語は、綿密な取材を重ねて当時の生活を丁寧に描写していた。同時にコマ割りがとても実験的な作品で、変幻自在の画面構成には、絵を描くことの楽しさが満ち溢れていて、想像と現実がごちゃまぜになっているすずの豊かな内面を表していた。

 第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した評価の高い作品で、同じく広島を舞台に被爆をテーマとして描いた『夕凪の街 桜の国』(双葉社)と並ぶ、こうの史代の代表作だ。

『この世界の片隅に』(c)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

 2016年には片渕須直監督による劇場用アニメ映画も公開された。本作もまた、当時の風俗や街並みや軍艦を精密に再現したことや、129分の中に原作のエッセンスを見事にまとめあげた構成力の巧みさなどが高く評価された。

 同時に製作時に資金が集まらずにクラウドファンディングで資金を集めたことや、活動が休止状態だった能年玲奈がのんと改名した直後に声優として復帰した作品としても話題となり、現在もロングランが続いている。

 片渕監督が追加カットを加えた180分の長尺版も予定されているという、現在も盛り上がりを見せている怪物的な作品だ。このアニメ版の評価が圧倒的な中で、新たに連続ドラマを作ると聞いた時は、作る側のプレッシャーは相当のものだろうなぁと思った。

 元々、原作モノはストーリーがすでに知られているという点において圧倒的に不利である。特にビジュアルがすでに存在している漫画を映像化する場合はなおさらだ。それに加えて本作の場合は、圧倒的なアニメ版の存在もあるわけで、比べるなという方が無理な話である。

 漫画版とアニメ版という2つの巨大なハードルがそびえ立つ中、テレビドラマには、どんなアプローチが可能なのだろうか? と、作り手に対して同情した。

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