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初登場3位『孤狼の血』は「東映復活」の鍵となる超重要作

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 先週末の映画動員ランキングは、3週連続で『名探偵コナン ゼロの執行人』と『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の1、2フィニッシュ。『ゼロの執行人』は前作『から紅の恋歌』が記録したシリーズ最高興収68.9億の更新目前、『インフィニティ・ウォー』もマーベル・シネマティック・ユニバース作品史上最速で30億円を突破と、両作品とも好調が続いている。

 初登場3位にランクインしたのは白石和彌監督の『孤狼の血』。白石監督は2017年以降に公開された作品だけでも、『牝猫たち』、『彼女がその名を知らない鳥たち』、『サニー/32』に続いてこれが4本目。今年の秋にはかつて自身が助監督を務めていた若松プロダクションの再始動作として、『止められるか、俺たちを』の公開も控えている。映画監督のクリエイティヴィティと監督本数の多さは必ずしも比例するわけではないが、近年の白石和彌監督作品や瀬々敬久監督作品の充実ぶりを見るにつけ、精力的に撮り続けている監督だからこそ、その作品でやりたいことの焦点がピタリと合って、それぞれの作品の強さに結実しているように思える。

 白石監督と瀬々監督の共通点はもう一つ。とっくの昔にスタジオシステムが崩れている日本映画界において監督の仕事のやり方としてはそれ自体が珍しいことではないが、インディーズ作品と大手配給作品を交互に作りながら、そのどちらでも自身の作家性を犠牲にすることなく作品の目的をきちっと成し遂げているところだ。『孤狼の血』の目的、それは作品冒頭の東映の70年代のロゴやクレジットの出方やナレーションからも明らかなように、東映の実写映画が栄華を極めていた『仁義なき戦い』時代、いわゆる「実録路線」の復活だ。

 もっとも、役所広司と松坂桃李が演じる主要キャラクターがいずれも刑事である『孤狼の血』は、(ヤクザはたくさん出てくるものの)厳密に言えばヤクザ映画ではないし、実話の実録ものでもない。また、東映が自社実写映画の看板企画である実録路線を再起動させようとしたのは、これが初めてではない。

 深作欣二監督による『仁義なき戦い』シリーズ5部作(今の常識では信じがたいことに1年半弱で5本作られた)、『新仁義なき戦い』シリーズ3部作、及び『仁義の墓場』、『県警対組織暴力』、『資金源強奪』、 『やくざの墓場 くちなしの花』、『北陸代理戦争』といった一連の作品。さらに、佐藤純彌監督、中島貞夫監督らによる『実録安藤組』シリーズ、『日本の首領』シリーズなどなど。70年代後半までにピークを迎えたそうした「実録路線」を、東映はVシネマや劇場作品で、これまで何度か復活させるべく新作を送り出してきたが、マーケットの縮小を止めることはできず、作品の評価もついてこなかった。

      

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