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『半分、青い。』が描く、現代に繋がる“過去” 今までの朝ドラとは違う独自のグルーヴ感を読む

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 連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『半分、青い。』(NHK)が絶好調だ。

 本作は岐阜を舞台に1971年に生まれた女性・楡野鈴愛(永野芽郁)の半生を描いたドラマだ。鈴愛は幼少期に左耳の聴力を失うが、傘にぶつかる雨音が片側からしか聞こえないことを面白いものと捉える、おおらかな性格に育つ。高校卒業後は、農協に就職する予定だったが、少女漫画家の秋風羽織(豊川悦司)の漫画に出会ったことで、漫画を描くようになり、東京で漫画家のアシスタントとして働くことになる。

 脚本は『ロングバケーション』(フジテレビ系)を筆頭とする数々の大ヒット恋愛ドラマを手がけてきた北川悦吏子。『愛していると言ってくれ』、『ビューティフルライフ』、『オレンジデイズ』(すべてTBS系)など、障害を抱えた登場人物のドラマを多数描いてきた北川だが、左耳が聞こえない自分の境遇を面白いものとして肯定的に受け止めようとする鈴愛から受け取る印象は、今までのドラマとは大きく違うように見える。これはヒロインを務める永野芽郁のふわっとした喋り方がもたらす存在感も大きいと思うが、北川自身が2012年に突発性難聴となり、鈴愛と同じように現在、左耳が聞こえないという実体験を経ていることも大きいだろう。鈴愛の設定は1971年生まれで61年生まれの北川とは10年の誤差があるのだが、自身と同じ境遇を与えられたヒロインを通して、北川の姿が透けてみえる。

 近年の朝ドラは戦前・戦中・戦後を舞台に、実在した女性実業家をモデルとしたヒロインが活躍する作品が多い。これは実在した人物の話を元にすると同時に、戦争のような歴史的事件を題材にすることで、ドラマとしての強度が上がるという保険的な側面も大きいだろう。

 対して、『半分、青い。』で現在、描かれるのは70~90年代の岐阜での出来事で、少女漫画やテレビ番組といった当時のカルチャーや、バブル景気の影響は見受けられるものの、基本的には大きな事件は起こらず、田舎の高校生とその両親のドラマを描いていて、題材自体はとても地味である。

 それでも見応えがあるのは、純粋なフィクションとはいえ、北川自身が自分の人生で見てきたこと感じてきたことがそのままドラマになっているように見えるからだろう。さながら私小説ならぬ私ドラマとでも言うような作品で、だからこそ今までの朝ドラとは違う独自のグルーヴ感がある。

 2010年の『素直になれなくて』(フジテレビ系)以来、連続ドラマを書いていなかった北川だが、2016年、NHKで『運命に、似た恋』を久々に執筆した。原田知世が演じる45歳のシングルマザーを主人公にした少女時代から始まるメロドラマは、今考えると『半分、青い。』のプロトタイプとでも言うような作品であった。ヒロインの少女時代を演じた蒼波純の瑞々しい存在感もあって、個人的には楽しく観ていたのだが、現代のテレビドラマとしては、浮いていた印象があった。『半分、青い。』を観ると逆に納得するのだが、それこそ劇中で登場するくらもちふさこを筆頭とする80年代の少女漫画が持っていたエッセンスが北川ドラマには存在する。それをそのまま現代を舞台に打ち出すと、ファンタジー感の方が際立ってしまうのだ。

      

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