永野芽郁と佐藤健のすれ違いに、なぜ“グッ”とくる? 『半分、青い。』が描く感情の丁寧さ
北川悦吏子脚本作品といえば、誰もが恋愛ドラマを思い浮かべることだろう。『あすなろ白書』(フジテレビ系)や『ロングバケーション』(フジテレビ系)など、次々と作品のタイトルや、名シーンが思い浮かぶ。
しかし、いつからか、北川悦吏子作品に限らず、恋愛もののお約束のシーンがしっくりこなくなってしまった。例えば、ヒロインがなんらかの理由で足をくじいてしまったりして、それをまだ恋におちていないくらいの関係性の幼馴染がおぶって家まで送り届けるなどという描写に、「そんなことってあるのかな」と突っ込みながら観るようになっていた。
そんなことがあるからか、ありきたりな方法で書いたストレートな恋愛ものは、映画にはあっても、テレビでは難しいジャンルととられるようにまでなってしまっている。
『半分、青い。』(NHK総合)も、朝ドラであるからという理由もあるだろうが、そんな昨今の流れを受けてか、ストレートな恋愛は描かれない。ヒロインの鈴愛(永野芽郁)と律(佐藤健)は、同じ病院で生まれてから十数年、幼馴染としてお互いの家を行き来しているが、お互いのことを異性と意識もしているのかどうかもわかっていない。しかし、鈴愛になにかあったときは、律の家の前にいって、笛をふけば律はなにかと助けてくれる。律は鈴愛にとって大きな存在だ。
そんな2人だが、高校生になり、お互いに気になる人が現れる。律は試合で高校を訪れていた他校の弓道部の生徒に一目ぼれをするが、その瞬間を鈴愛は見て、どこか複雑な思いを感じているのにも関わらず、律のために、その弓道部の美少女の絵を描く。
また、鈴愛はバスを待っているときにカセットテープを拾ってあげるという“運命の出会い”をはたした他校の生徒とデートをする際にも、喫茶ともしびでお好み焼きを食べながら律に相談をする。律は鈴愛にその生徒に気に入られるためのアドバイスをするも、デートの当日、律は「心ここにあらず」なことを母の和子にも見抜かれてしまうし(和子さんは、そこまでの背景は知らないのだろうが、我が道を行っているようなところがあるのに、妙な嗅覚があるということがわかるシーンである)、そんな気持ちを落ち着かせようとピアノを弾いているときに、笛の音が聞こえて、窓の外を見てみると、それは鈴愛ではなく鳥の鳴き声であったと知るのである。