『半分、青い。』が描く、現代に繋がる“過去” 今までの朝ドラとは違う独自のグルーヴ感を読む

『半分、青い。』が描く現代に繋がる“過去”

 作家の力量とは別の時代との誤差をどう調整するのか? というのは難しい問題だ。

 90年代に北川と同時代にテレビドラマを手がけていた作家。例えば連続テレビ小説『ひよっこ』の岡田惠和や大河ドラマ『西郷どん』の中園ミホは時代の要請に対応して、作家性を保ったまま、執筆ジャンルを変化させていった。一方、過激な作風で知られる野島伸司はdTVやHuluといったネットの有料配信メディアへと拠点を移しつつある。

 そんな中、北川の朝ドラは、物語の舞台を70年代からスタートして戦時中ほど昔ではないが、今の時代からすれば過去の、それこそネットやスマートフォンがない時代をノスタルジックに描くことで、北川のセンスが存分に発揮できる舞台を作ることに成功している。

 面白いのは、北川の感覚がインスタ映えという言葉が流行する現代の感覚と再びマッチしはじめていることだ。高校卒業時に「写ルンです」で撮影する場面などは、今、「写ルンです」が逆に流行っているという背景をうまく取り入れた演出だと思うが、程よく懐かしいものとなっていた。

 それにしても、まだ1ヶ月弱しか経ってないのに、ここまで世界観が確立されて、どの登場人物の物語を転がしていっても面白くなっていきそうな気配が漂っているのは、すごいことだ。1話1話のエピソードが毎回充実しているのは作家の力量と言ってしまえばそれまでだが、こういう繊細な内面をテンポ良く描ける場こそが、現在の朝ドラなのだと改めて実感させられる。

 物語は、どんどん進行していき、最終的には現代に繋がる予定とのことだが、80年代少女漫画的な幸福感が今後も維持されていくのか、それとも時代の変化とともに失われていくのか? その経緯も含めて見守りたい。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『半分、青い。』
平成30年4月2日(月)~9月29日(土)<全156回(予定)>
作:北川悦吏子
出演:永野芽郁、松雪泰子、滝藤賢一/佐藤健、原田知世、谷原章介/余貴美子、風吹ジュン、中村雅俊/豊川悦司、井川遥、清野菜名、志尊淳、中村倫也、古畑星夏
制作統括:勝田夏子
プロデューサー:松園武大
演出:田中健二、土井祥平、橋爪紳一朗ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/

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