初登場1位『今夜、ロマンス劇場で』にみる、各配給会社の「カラー」の消失

各配給会社の「カラー」の消失

 前週の興行分析では、久々に実写日本映画がトップ3を独占(1位『祈りの幕が下りる時』、2位『羊の木』、3位『不能犯』)したことをトピックとして取り上げたが、『今夜、ロマンス劇場で』が1位を飾った先週末も、引き続き上位3作品は実写日本映画。4位に初登場した『マンハント』も製作国は中国、監督はジョン・ウーだが、高倉健主演、佐藤純彌監督の1976年作品『君よ憤怒の河を渉れ』のリメイク作にして、オール日本ロケのチャン・ハンユーと福山雅治のダブル主演作。5位の『羊の木』まで、上位5作品すべてが日本人俳優の主演作という珍しい現象となった。

 初登場1位の『今夜、ロマンス劇場で』は土日2日間で動員12万6000人、興収1億6600万円というまずまずの成績。綾瀬はるか主演の時空を超えたファンタジー映画というと、万城目学原作の2011年作品『プリンセス トヨトミ』や、同作と類似する設定でありながらオリジナル脚本作品として製作された昨年の『本能寺ホテル』のことを思い浮かべる人も多いだろう。実際に、公開日の2月10日には、『今夜、ロマンス劇場で』公開記念としてフジテレビはゴールデンタイムに『本能寺ホテル』を放送していた。しかし、『本能寺ホテル』と『今夜、ロマンス劇場で』は監督も違えば脚本家も違う関係のない作品。そしてなによりも、前者は東宝、後者はワーナー・ブラザーズと、配給会社が異なっている。

 長年、日本映画のメジャーといえば東宝、松竹、東映の3社のことを指していたが、2006年にワーナー・ブラザースが配給した『デスノート』を皮切りに、ワーナー・ブラザース日本法人のローカル・プロダクションが本格化。2017年の日本映画年間興収トップ10では、東宝7作品に続いてワーナー作品は2作品(『銀魂』と『22年目の告白 -私が犯人です-』)がランクイン(残り1作品はアニプレックス作品)。今やワーナーのローカル・プロダクション作品はメジャーの一角どころか、日本映画においては東宝に続く勢力にまで成長している。

 ちなみに、昨年は『銀魂』をはじめとして、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(東宝と共同製作・配給)、『鋼の錬金術師』もワーナー・ブラザースのローカル・プロダクション作品。今年の夏には同社配給の『BLEACH』の公開も控えている。近年の日本映画の傾向として「少年・青年系の人気マンガの実写化」の是非について語られる機会は多いが、実はそれらの作品にはかなりの比率でワーナーが絡んでいることがわかる。

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