>  > 『光をくれた人』監督が語る、夫婦を描く理由

デレク・シアンフランス監督『光をくれた人』インタビュー

『ブルーバレンタイン』から『光をくれた人』へーー シアンフランス監督が語る「映画で夫婦を描き続ける理由」

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 デレク・シアンフランス監督にとって新作『光をくれた人』は、初の原作もの、初の時代もの、初のアメリカ以外を舞台にした作品(舞台は20世紀前半のオーストラリアの孤島)と初めて尽くし作品となった。しかし、これまでの『ブルーバレンタイン』、『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』といった作品同様、そこで描かれているのはシアンフランスにとって不変のテーマともいえる「夫婦という人間関係の困難さ」だ。

 『光をくれた人』を観てハッとさせられるのは、これまでリアリズムを追求しているように見えたこの映画作家の作品が持っている「メロドラマ性」、言葉を換えるなら「大衆性」だ。その根底には、きっとシアンフランスの人としての驚くほどの実直さ、率直さがあるのだろう。夫婦関係が壊れていく様を過酷に描いた『ブルーバレンタイン』があれほど強烈に観客をノックアウトしたのも、そんなシアンフランスのどんなつらいことにも目をそらさない真っ直ぐな視線だったのではないか。

 今回実現した監督とのこの独占インタビューでも、シアンフランスはその実直さ、率直さを存分に発揮してくれている。新作『光をくれた人』、そして『ブルーバレンタイン』に込められたパーソナルな思い、そして、まだ海外のどのメディアでも語られていない/載ってない「4本」の新作についての話などなど。ライアン・ゴズリング、ブラッドリー・クーパー、そして『光をくれた人』のマイケル・ファスベンダー、そんな実力と人気を兼ね備えた当代きってのスター・アクターたちを魅了し続けている「特別な映画作家」の実像に迫った。(宇野維正)

20170525-thelightbetweenoceans-sub7.jpegデレク・シアンフランス監督

「僕の映画の中の夫婦関係のベースには、幼い頃から見てきた両親の姿がある

——あなたの2011年の監督作品『ブルーバレンタイン』は日本の映画ファンの間でもとても大きな話題になって、劇場で公開された後もとても多くの人に観られています。

デレク・シアンフランス(以下、シアンフランス):それはとても光栄だね(笑)。

——その『ブルーバレンタイン』では夫婦間の絶望的なすれ違い描いていましたが、今回の『光をくれた人』は、それとはまったく違った方向からまた夫婦関係に光を当てている作品ですよね。その間に発表された『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』でも、夫婦ではないですが、ライアン・ゴズリングとエヴァ・メンデスとその間の子供の3人の関係がとてもエモーショナルに描かれていました。あなたの作品において、「夫婦関係」というモチーフがとても大きな位置を占めているように思うのですが、それはどうしてなのでしょうか?

シアンフランス:僕が自分の映画の中で描く夫婦関係のベースには、幼い頃から見てきた両親の姿があるんだ。僕は子供の頃からずっと父親と母親の関係を観察してきた。一番近い距離からね。だから、僕の映画の中で描かれる「夫婦関係」は、どの作品でも誰かの“肩越し”から見たような距離とアングルで描かれているんだよ。それは、子供の頃に車の後部座席から運転席の父親と助手席の母親の姿をずっと眺めていた感覚にとても近い。二人の関係は次第にうまくいかなくなり、結局僕が20歳の時に離婚をしてしまった。だけど、父親と母親のことは今でも心から愛しているよ。『ブルーバレンタイン』は、その両親の離婚からアイデアを得た作品だったんだ。異性と関係を築いていく時、僕たちは個人として最初は出会うのに、ある時期から突然二人で一つの存在、つまりペアとなる。僕らは結婚することで、それ以前は一人前の人間だったのに、半人前の人間のような気分になってしまうことがある。『ブルーバレンタイン』では、もう一度一人前の人間に戻りたいという切望、衝動を描いた。結婚相手や、その相手との関係性によって評価をされる人間ではなくてね。

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——あなた自身も、結婚したことで同じようなことを感じることがある?

シアンフランス:それは毎日感じているよ。自分が結婚をして、子供ができて、誰かの夫となり父親となったことで、昔の両親の気持ちが痛いほどわかるようになった。僕にとって、妻と子供に対する愛情は人生のすべてだけど、だからといっていつもハッピーというわけではない。当然のように、数々の問題に直面してきた。その都度、僕は必死にその関係を守って、なんとか乗り切っているよ。だからこうして自分の作品の中で繰り返し夫婦関係を取り上げるんだろうね。周りを見渡してみても、二人の人間が夫婦として一つになった時に起こる化学反応には、本当に数えきれないほどのパターンがある。それは僕を決して飽きさせないんだ。

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