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日本のメジャー映画で「ピカレスク・ロマン」を復活させてみせた、福山雅治の男気に拍手を!

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 これまで20年、音楽や映画の商業メディアで仕事をしてきて、福山雅治についてなにかを書くのはこれが初めてだ。別に誰かに頼まれたから書いているわけではない。『SCOOP!』を観て、そろそろ役者・福山雅治についてちゃんと書かなくてはいけないと思ったのだ。きっかけは、2013年の夏に立て続けに公開された、『真夏の方程式』と『そして父になる』での福山雅治にガツンとやられたこと。あ、さすがにそれまで福山雅治に疎かった自分でも、「あんちゃーん」や「実におもしろい」は知ってましたよ。でも、それらのイメージと、『真夏の方程式』(ちなみにこの作品でも「実におもしろい」の人を演じていたが「実におもしろい」とか言わなかった)や『そして父になる』の福山雅治はまるで別人のようだった。簡単に言うなら、作品が良ければ良いほど、役者・福山雅治は加速度的に良くなる。簡単に言ってしまったが、もちろんそれは役者にとって簡単なことではない。

 というわけで、『SCOOP!』の福山雅治も良い。何故なら、作品が良いからだ。大根仁監督が『SCOOP!』でやろうとしたこと。それは、近年はあまり顧みられることがない、70年代後半から80年代前半の大人の男性観客向けの日本映画の復活だ。片岡千恵蔵や高倉健や菅原文太の時代から、日本映画のメインストリームというのは、映画館を出た後、思わず主人公になりきって肩で風を切って街を歩くような男性観客によって支えられていた。ここでいう「70年代後半から80年代前半の大人の男性観客向けの日本映画」というのは、その伝統を引き継いだピカレスク・ロマン作品のことを意味する。

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 1970年代生まれの自分は、『踊る大捜査線』の織田裕二を真似てヒューストンのM-51モッズコートを買ったヤツを知っている。『HERO』の木村拓哉を真似てエイプのオレンジ色のダウンジャケットを買ったヤツも知っている。「あれも同じようなものだったのでは?」と思う向きもあるかもしれないが、それは違う。それらはテレビドラマ発信の流行であったし、何よりも作品の主人公はピカレスク(悪党)ではなく「権威内反権威」、つまり、結局のところは「正義」の側を代表したキャラクターだった。

 70年代後半から80年代前半のピカレスク・ロマンの代表的なスターといえば、言うまでもなく萩原健一と松田優作と原田芳雄だ。『SCOOP!』は、1985年に最初にテレビで放送されて、劇場で限定公開された後にVHSビデオでもリリースされた原田眞人監督の『盗写 1/250秒 OUT OF FOCUS』のリメイク作品であることが公にされている。『SCOOP!』で福山雅治が演じる主人公・都城静をオリジナルの『盗写 1/250秒 OUT OF FOCUS』で演じていたのは、原田芳雄だった。もっとも、大根監督は『SCOOP!』の脚本を手掛けるにあたってかなり大胆なミックス&アレンジを加えていて、その主人公には同作で宇崎竜童が演じていた加柴大作のキャラクターも強く反映されている。ちなみに福山雅治と宇崎竜童はドラマ『ラブソング』で共演したばかりだが、『SCOOP!』の撮影時期は『ラブソング』の前だったので、具体的に宇崎から何らかのアドバイスを受けたどうかは不明だ。

 『SCOOP!』が秀逸なのは、単に『盗写 1/250秒 OUT OF FOCUS』を現代向けにリブートさせただけでなく、作品全体が70年代後半から80年代前半のピカレスク・ロマンへのオマージュになっていることだ。それらの作品を支えてきたのは、なにも萩原健一と松田優作と原田芳雄だけではない。主人公の情報屋にして腐れ縁の悪友チャラ源(リリー・フランキー)は工藤栄一監督、緒形拳主演『野獣刑事』で泉谷しげるが演じていたシャブ中を思い出さずにはいられないし、作品前半の軽妙なトーンは川島透監督の『チ・ン・ピ・ラ』(柴田恭兵&ジョニー大倉)や『ハワイアン・ドリーム』(時任三郎&ジョニー大倉)からの強い影響を感じさせる。

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 70年代後半から80年代前半のピカレスク・ロマン映画の三大要素といえば、セックスとドラッグ(直接的な描写があるなしにかかわらず、登場人物たちは常にキマっているように見えた)とバイオレンスだった。80年代後半以降、その3つの中でも特にセックスとドラッグは日本の商業映画の中で居場所をなくしてしまった。ところで自分は、80年代後半以降にピカレスク・ロマン映画の系譜が途絶えてしまった理由として、時代の変化のほかに、北野武と長渕剛が関わった作品以外のヤクザものがVシネマに囲い込まれてしまったことと、いち早く柴田恭兵が権威側に転向したこと(『あぶない刑事』シリーズ)だと考えているが、それはまた別の話。

      

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