『HiGH&LOW』が創る“ユニバース”の革新性ーー生身の人間による総合エンタテイメントを読む

『HiGH&LOW』ユニバースの革新性

『HiGH&LOW』ユニバースが生み出す生身の“キャラクター”

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 『HiGH&LOW』のキャッチコピー「全員主役」は大仰な宣伝文句ではなく、プロジェクトのコンセプトを表した言葉である。各チームのリーダーがドラマ各話で主役として登場し、音楽アルバムにはそれぞれのテーマソングまで収められている。彼らが映画・ライブでくりひろげる祭りが『HiGH&LOW』なのである。実は似た方法でおなじくある“世界”を創った人物がいる。アメコミヒーローたちが同一世界線上に存在する“マーベルユニバース”の生みの親・漫画原作者スタン・リーである。彼はスパイダーマンなどのヒーローに「なぜ覆面をかぶるのか」「スパイダーウェブ(糸)はどこから出るのか?」「どうやってスーパーパワーを手に入れたのか?」「なぜこんなデザインなのか」といった大量の設定を性格にも紐づけ、キャラクターを構築してきた。そうして生まれたヒーローを各タイトルのコミックで育て、『アベンジャーズ』のようなクロスオーバー作品で集合させて世界をつくったのである。

 『HiGH&LOW』がマーベルと異なるのは、キャラクターが生身の人間であるキャストのパーソナリティから生み出されていること。演者の持っていたものから作り上げられたキャラに違和感がないのは当然だ。そして、表現するメディアがコミックや映像にとどまらず“音楽とライブ”におよんでいるのも特筆すべき点。各キャラのテーマソングをアルバムで聴けば、映画やドラマの名場面が頭に浮かび、ライブでは物語の主人公たちと間近に触れあうことができるのである。例えばマイティー・ソーが歌って踊って戦い、ときおりクリス・ヘムズワースとしてパフォーマンスするライブをイメージすれば、興奮しないファンはいないはず。また、『HiGH&LOW』の世界は、EXILE HIROによるコンセプトに沿っているものの、原作が存在しないために設定や物語をどんどん追加することができ、際限なく広がっていく。

 LDHはこれまでもコミック・アニメ『エグザムライ』や、PV・ライブでも“世界”を作って提示はしていた。ただし、それらを楽しんでいたのは既存のファンがほとんどだった。『HiGH&LOW』では、大内アクション監督・スタントチーム、そしてインディペンデントで活躍してきた監督たちなどの新しい血を入れてユニバースを作り上げることで、様々なジャンルを越境したファンを惹きつけることができたのである。まさにMUGENの可能性を秘めたプロジェクトーーそれが『HiGH&LOW』なのだ。

■藤本 洋輔
京都育ちの映画好きのライター。趣味はボルダリングとパルクール(休止中)。 TRASH-UP!! などで主にアクション映画について書いています。Twitter

■公開情報
『HiGH&LOW THE MOVIE』
公開中
出演:AKIRA、青柳翔、TAKAHIRO、登坂広臣、岩田剛典ほか
企画プロデュース:EXILE HIRO
監督:久保茂昭
アクション監督:大内貴仁
脚本:渡辺啓、平沼紀久、TEAM HI-AX
配給:松竹
(c)2016「HiGH&LOW」製作委員会
公式サイト:http://high-low.jp/

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