チャリンコ版『マッドマックス』!? 『ターボキッド』に漂う、中学生男子の妄想的ポップ感

チャリンコ版『マッドマックス』に漂う中二感

 2015年、アクション映画業界最大の話題作となった『マッドマックス 怒りのデスロード』。そんな『マッドマックス』シリーズに代表される、秩序が崩壊した近未来を舞台にしたポスト・アポカリプスものに、『キック・アス』『スーパー!』など、近年の人気ジャンルの一つである「俺、ヒーローになるよ!」ものを加え、さらに『マネキン』『スプラッシュ』などの特殊ヒロイン系ラブコメの要素を加えたらどうなるか。大雑把に言うと、この3つを合体させ、血まみれのスプラッター描写をふりかけたのが本作『ターボキッド』である。

 文明が滅びた世界で自転車を相棒に、懸命にサバイバルする少年キッド。ある日、彼は死体と爆笑しながら会話する、異常に目力が強い少女と出会う。恐れをなして逃げ出すキッドだったが、彼女はキッドの家まで押しかけてきて、そのまま一緒に暮らすと言い出し…。

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 このストーリーからもわかるように、本作はラブコメ要素が強い。そして、このラブコメ要素の強さ、もっと端的にいうなら、キラキラした恋愛への憧れこそ、本作の中学生男子の妄想感をより強くしているし、本作をよくあるポスト・アポカリプスものとは一味違うものにしている。

 80sノリのキラキラ系のポップな音楽をBGMに、ときに自転車2人乗りをしながら、ときに鬼ごっこをしながら、世界が滅びた後の荒野で2人は遊び回る。そんな2人を切り裂く悪党たちが現れ、ヒロインを取り戻すために、主人公は奮闘する。世界観設定こそ『マッドマックス2』のパロディであるが、メインプロットは間違いなくロマンティック・コメディの定型に沿っている。

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 このポップな視点は終始一貫しており、人間が真っ二つになったり、内臓が飛び出したりする露悪的な血まみれヴァイオレンスが全編で炸裂するが、その印象は陰惨になりすぎず、最後まで作品全体のポップな印象は失われない。むしろ、「ロマコメをやりたいが、ストレートに恋愛だけするのは照れる…」的な、好きな子にイジワルをしてしまうような、照れ隠し的な悪趣味にも見えてくる。そこまで含めて、なんとも中学生男子の妄想らしい。

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