DOUBLE、SILVA、SUGARSOUL…ディーバの競演 20周年記念『UPLOAD』機にキャリアを辿る
DOUBLEとSILVA、そしてSUGARSOUL。90年代末から活動している3人のディーバの競演が、8月1日発売の『UPLOAD』で実現した。彼女たちはみな1998年にデビューしており、今回のリリースは活動20周年の記念コラボとなる。黎明期であったJ-R&Bの礎を築いた3人の久々の音源には大きな注目が集まり、Spotifyで楽曲が公開されるや否やバイラルチャートで最高位2位を記録した。
J-R&B界を牽引してきた3人の歌姫が何度も打ち合わせを重ねて作り上げたというこの曲のMVでは、それぞれが力強く歌い上げる姿がまさに圧巻。さらに、『朝まで生テレビ!』のテーマ曲としておなじみのJeff Newmann And His Orchestra「Positive Force」をサンプリングしたアップテンポな曲調がダンスクラシックスを彷彿とさせ、20年前のデビュー時と寸分変わらぬ美しさと力強い歌声は古くからのファンを喜ばせている。本稿では、『UPLOAD』の発表を機に、3名のキャリアを改めて振り返ってみたい。
誰もが認めるNo.1 J-R&Bシンガー、DOUBLE
DOUBLEはSACHIKOとTAKAKOの姉妹デュオとして1998年に『For me』でデビュー。その後のシングル『bed』では、ラッパーのMummy-DとKOHEI JAPANの坂間兄弟をゲストに迎えたリミックスバージョンが話題に。続く4thシングルの『Shake』はZeebraをゲストに迎え、制作陣を今井了介やRYUで固めた、当時にしては珍しい本格R&Bソングだった。また、m-floの☆Taku Takahashiがプロデュースを手がけたカップリング曲の「Make Me Happy」も注目を集めた。しかし、その直後に姉のSACHIKOがクモ膜下出血で逝去。遺作となったプロローグアルバム『CRYSTAL』は60万枚を売り上げるヒットとなった。
TAKAKOは深い悲しみを乗り越え、その後ソロプロジェクトとしてDOUBLEを再始動。しかも第1弾シングルとして、SWV『It's about time』を全面プロデュースし、大ヒットに導いたブライアン・アレクサンダー・モーガンによる「handle」(feat. F.O.H)、そして当時ドネル・ジョーンズの大ヒットナンバー「U Know What's Up (feat.Lisa "Left Eye" Lopes)」を制作したエディー・F&ダレン・ライティによる「U」を同時リリース。その後もCooly's Hot Boxのアンジェラ・ジョンソン制作のミディアムスローナンバー「Angel」をリリースするなど、当時の米国メジャーシーンの最先端サウンドを取り入れた作風で多くのファンを驚かせることになる。まだ黎明期だったJ-R&Bシーンにおいて、そのようなサウンドに挑戦したことは他アーティストにも大きな刺激を与えたといっても過言ではない。ちなみに、活動の集大成としてリリースされた1stアルバム『double』は英語版の制作も行われている。DOUBLEは日本のR&Bシーンのトップに上り詰めたシンガーとして多くのファンに愛されることとなった。
その後も当時勢いのあった<Def Jam Japan>所属のラッパー・S-WORDとのコラボ作「You Got To」をリリースしたほか、「Rollin' on」「Call me」など本格派R&Bソングを次々とリリース。また、積極的に様々なアーティストともコラボレーションしており、De La SoulやLupe Fiascoといった海外ラッパーとも共演を果たした。2008年にはコラボ作品を集めたアルバム『THE BEST COLLABORATIONS』収録の「BLACK DIAMOND」で安室奈美恵を招き、日本が誇る歌姫2人のコラボが実現した。
近年は2015年に映画『呪怨-ザ・ファイナル-』主題歌「Circle of Life」をデジタルリリースするなどスローペースで活動を続けるも、先ごろ乳がん闘病中であることをブログにて告白。多くのファンから心配する声が寄せられたが、決して病気に屈することなく、今回の『UPLOAD』のリリースに至った。また、2014年に発売されたベスト盤『SINGLE BEST』に数曲追加してリニューアルされた『DOUBLE LATEST SINGLE BEST』も8月1日に新たにリリースされている。
タレントとしても活躍したマルチシンガー、SILVA
SILVAは「Sachi」で1998年にデビュー。類まれなる歌唱力がまず耳を引くが、「Almost love」「Morning Prayer」など朝本浩文やCosmic Villageの黒羽康司を迎えて制作された楽曲は疾走感溢れるディスコサウンドが特徴。また、男女間の恋愛模様をSILVA自身が情熱的に綴った歌詞は、多くのファンを魅了した。なかでもプレイボーイに弄ばれてしまう女の子の応援歌となった「ヴァージンキラー」がスマッシュヒットを記録してブレイク。それらのシングルを収録したアルバム『HONEY FLASH』『Coming Out』はそれぞれオリコン週間ランキングにおいて6位、8位を記録し、J-R&B界を代表するシンガーとして認知された。
一時期は歯に衣着せぬ物言いで自身の恋愛事情を披露するなど、テレビやラジオなどへの出演も増加し、タレントとしても活躍したSILVA。その後、リリースが一旦途絶えてしまうものの、自らトラックメイクを学び、活躍の場をハウスシーンに移して見事に復活。DJ SILVA名義で2008年に『Queen of House』をリリース。ジェーン・チャイルドの「Don't Wanna Fall In Love」やモニカ「Before You Walk Out Of My Life」など名クラシックをハウスカバー。洗練されたアレンジと変わらぬ歌唱力で話題を呼んだ。
近年では結婚、出産を経てスローペースながらも活動を続けており、2014年にはカバーアルバム『GO! GO! SILVA』をリリース。「恋のフーガ」(ザ・ピーナッツ)、「どうにもとまらない」(山本リンダ)など往年の名曲をカバーしている。8月1日にはCOLDFEETを制作陣に迎えた新作『Quiet Moon』もリリースしており、今後の精力的な活動にも期待したい。
大ヒット曲「GARDEN」で名を馳せた、Sugar Soul
元々はAiko、DJ HASEBE、カワベの3人ユニットとして活動していたSugar Soulは1997年にシングル『Those Days』でインディーズデビュー。Zeebraも参加した楽曲「今すぐ欲しい」で注目を集めた(2006年には倖田來未がカバーしてヒットに導いている)。1998年の2ndシングル曲「悲しみの花に」でメジャーデビューを果たし、アルバム『on』がオリコン週間アルバムランキングで10位を獲得すると、ついに1999年に発表されたシングル『Garden』の売上枚数が90万枚を記録する大ヒットとなった。同曲では、ちょうど同時期に「Grateful Days」で大ヒットを飛ばしたDragon Ashの降谷建志(Kenji)を制作に迎えており、降谷はラップでも楽曲に参加。「Garden」はその後、May J.がカバーして再びヒットし、様々な世代から愛される曲となった。「Garden」以降もSugar Soulは「Siva1999」や「Respect yourself」などのスマッシュヒットを飛ばしている。
シヴァ神などを曲の題材にしながらレゲエやバングラを連想させる歌唱法を取り入れ、さらにBOREDOMSの山塚EYEを制作陣に迎えるなど、ジャンルを超越した活動が特徴的であったが、一時リリースが途絶えてしまう。2010年、アイコSUNを名乗り、KAMというバンド名義でシングルをデジタルリリースするも、これまで表立った活動はほとんどなかった。そんな長い沈黙を破り、SUGARSOUL名義で今回のコラボに参加。その独特の歌唱、そして変わらない強烈なキャラクターを曲中で披露している。