Spotifyバイラルチャート、『Warped Tour Japan』出演で話題 異端のユニット・シシノオドシに迫る
先日、各国におけるSpotifyのバイラルチャートをチェックしていたところ、日本のチャートに見慣れない名前を見かけた。これまでもフィロソフィーのダンスやAmPmなど、メジャーではないが名前を知っているアーティストは多数ランクインしていた記憶がある。しかし、1位・w-inds.「Darty Talk」、2位・j-hope「Daydream (백일몽)」、3位・スワエ・リー, レイ・シュリマー「Hurt To Look (feat. Rae Sremmurd)」と並んでいた“シシノオドシ ”という文字列を見たのは初めてだった。
調べたところによると、シシノオドシはTACK(MC)とオド(Dr)によるユニットで、2016年12月から沖縄県を拠点に活動。昨年は「出れんの!?サマソニ!?2017」にてBEACH賞を受賞し、サマーソニック本編にも登場、『R-Festa Next vol.2』にも出演。3月31日・4月1日に行われる『Vans Warped Tour Japan 2018 Presented by XFLAG』の初日アクトにも抜擢され、KORN、LIMP BIZKIT、Crossfaith、MONOEYESをはじめとした豪華面々との共演で、ここから一気に知名度を上げそうだ。
そんなシシノオドシに話を聞こうとコンタクトを取ったところ、沖縄で彼らが主催するイベントが行われるということなので、筆者は一路沖縄へと飛んだ。ちなみに機内では彼らの最新作『5 Letters』を聴いていたのだが、飛行機のジャケット写真と空路の旅を思い起こさせるフレッシュでメロウなサウンドや、HIPHOPでもありながらバンドサウンドでもあるという音のスタイルは、どこかOvall『In TRANSIT』を思い起こさせた。
話を聞くと、彼らは中高生のときにそれぞれがバンドを組んでいたが、オドのバンドが解散したことで、TACKがSNSを介してオドをスカウト。4人組としてミクスチャーロックバンドを結成した。しかし、方向性の違いやスケジュールの都合で2人が脱退し、TACKとオドの2人だけが残ったという。普通ならここで解散、もしくはメンバー増員となるはずだが、「twenty one pilotsが好きで、『こういうのなら、残った俺らでもできるんじゃない?』と思って真似てみたところが始まりですね」(TACK)と、トリッキーな解決法を示し、現在に至るのだという。
ただ、初ライブは思うようにいかないまま失敗。そこから「なけなしの貯金をはたいてMacBookとLogicを買って、先輩からアドバイスをもらいながら曲を作った」(TACK)と少しずつ成長し、ここまでユニットを大きく発展させてきた。
そんな彼らが3月13日、那覇Cyber-Boxで行った主催イベント『獅子ノ舞』は、 DX×DX、HABADEMI、BUMBA、DSterやヤングオオハラといった地元の盟友・先輩・後輩たちが『Warped Tour』へと旅立つ彼らを後押し。シシノオドシもまた、「変わらない」「明日も」といったポップな楽曲を披露し、アットホームな空気でスタートするが、一回り大きくなって帰ってくる決意を語ったあとの後半では雰囲気が一変。TACKが自身の体験談を元に、音楽を諦めた友人と続ける自分のことを歌った「声」でシリアスかつ感動的な雰囲気になると、本編ラストの「強さを下さい」、大人と子供の間で芽生える感情をメロウに表現したアンコールの「またね」でライブを締めくくった。
シシノオドシのライブを見て感じたのは、音源で聴いた際の“ヒップホップユニット”感が薄れ、バンドとしての一面が強く打ち出されていたことと、バンドマンにも突き刺さるリリックのリアルさ。「拍子を変えたりとか音楽的な工夫をしていたのが『谺-kodama-』(前作2nd EP)で、『5 Letters』からリリックの宛先がはっきりした感じがある」(オド)と話すように、その鋭さは作品を追うごとに研ぎ澄まされていっている。「リアルな歌詞は書こうと心がけています。嘘のリリックは書けないから、過去の思い出や今の歌が多いんです」(TACK)と、意図的にリアルな表現をコントロールしていることも明かしてくれた。
ライブを見て疑問に思ったのは「この2人は今後、ヒップホップアーティストとして、バンドとしてどういう立ち位置にいたいのか?」ということ。本人たちに聞いてみると「「どっちとも仲良くさせていただいていて、そのままがいいかなと思います。どこでもライブができるし、どこにも仲間がいるような」(TACK)と、どちらでもないからこそできることがあると、新たな可能性を提示してくれた。
音源を聴き、ライブを見た印象だが、今後この2人はどちらのシーンにおいても“異端者”として扱われるだろう。だが、彼らにはそのアウェーな状況をひっくり返すほどに良い曲と、興味深いライブパフォーマンス、そして「自分たちがカッコいいと思うことを突き詰めたい」(オド)と言い切れる強さを持ち合わせている。きっとそれは、彼らが「Limp Bizkitは4人体制時代に意識したし、KORNも聴いていたし、他の出演者も名前を知っている方々だし。これまで画面の向こうでしか見ていない人たちで緊張する」(TACK)と語っていた『Vans Warped Tour Japan 2018 Presented by XFLAG』のステージでも変わらないはずだ。
(取材・文=中村拓海)
■リリース情報
『5 Letters』
発売:2018年3月28日(水)
価格:CD(タワーレコード那覇リウボウ店限定販売):2,000円(税込)
<収録曲>
1. あの部屋のまま
2. 変わらない
3. Skit~雨と街~
4. Lady
5. 強さを下さい
6. 行ってくるよ
All songs written by シシノオドシ (TACK & ODO)
Arranged by Shingo.S
■ライブ情報
『Vans Warped Tour Japan 2018 Presented by XFLAG』
日程: 2018年3月31日(土)・4月1日(日)※シシノオドシの出演は31日、NORTH PARKで14時より。
会場: 千葉・幕張メッセ 9~11ホール
時間: OPEN 11:00 / START 12:00
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