BUMP OF CHICKENの“PATHFINDER”としての道は続いていく 21周年最後を飾った特別な夜

BUMP、SSAでの21周年最後の夜

 BUMP OF CHICKENが、2017年から2018年にかけて行うバンド史上最長のツアーは『PATHFINDER』と名付けられた。

 探求者、開拓者といった意味を持つ『PATHFINDER』。今回のツアーは、アルバムなどの新作を携えて行われたものではなかったゆえ、セットリストも各地で異なり、新旧さまざまな楽曲が披露された。

 筆者が足を運んだのは、およそ5カ月間にわたり続いたツアー終盤の2月10日のさいたまスーパーアリーナ公演。1996年2月11日にバンドを結成したBUMPにとって、その前日となるこの日は“21周年最後の夜”となった。それと同時に、このさいたまスーパーアリーナのステージに立つのは、2008年のツアー『ホームシップ衛星』以来10年ぶり。そんないくつもの要素が絡み合い、この日のライブはとても特別な一夜となった。

 このツアーのために制作されたオープニングナンバー「pathfinder」とともに流された映像からは、海や大陸をこえて進んでいく様子がイメージされた。たとえば、「GO」の<歩くのが下手って気付いた ぶつかってばかり傷だらけ>。「アンサー」の<転ばないように気を付けて でもどこまでもいかなきゃ>。そして、新曲「記念撮影」の<ねぇ きっと 迷子のままでも大丈夫 僕らはどこへでもいけると思う>。このツアーでのセットリストは、おそらくこの『PATHFINDER』という言葉に導かれて決まっていったのだろう。進んでいくことの困難さや勇気。そして、その先で出会えるものの尊さ。BUMPの近年の楽曲には、そういったメッセージを受け取ることのできるものが多くなった。それは、BUMP自身が、たとえばスタジアムやドームといった大規模な場所でライブをするなど、これまで以上に大きなフィールドに進んでいこうとしていることも影響しているのかもしれない。それらの曲を聞いているうちに、PATHFINDER=探求者という言葉は、BUMP OF CHICKENというバンドの姿にも重なっていった。

 BUMPの楽曲には過去から現在に至るまで一貫して、宇宙や星、光といったものがモチーフになり続けている。この日も披露された「リボン」は、結成20周年のアニバーサリーイ
ヤーの最終日2017年2月10日にスタジオライブで生配信された楽曲だ(その後5月1日より配信リリース)。歌詞には、過去曲を想起させる言葉やイメージがいくつも織り込まれている。そんな「リボン」が象徴するように、BUMPの楽曲からは過去・現在・未来の繋がりが強く意識される。

 恒例となっているPIXMOBの光や虹色に輝くレーザー、宙を舞うコンフェッティ、金銀のテープなど、観客も一体となった未来的な演出は、そういったBUMPの曲の世界観とよくマッチしている。そしてまた、「天体観測」や「ray」、「fire sign」での観客の合唱は、ライブにおいて最大の高揚感をもたらし、いくつものハイライトを生んでいた。BUMPのライブは、ひとつひとつの演出が手を取り合い、唯一無二の祝祭的な空間を作り出している。

 2010年にリリースしたシングル『HAPPY』のカップリング曲「pinkie」を初披露するなど、『PATHFINDER』ツアーには、ファンには嬉しいサプライズがいくつも用意されていた。アリーナの中ほどまで伸びた花道、ステージを移動しながらの歌唱と演奏、ファンとのコール&レスポンス。4人は音楽を鳴らすこと、それが目の前に集う人たちに届いていることに純粋な喜びを感じ、その時間を謳歌しているようだった。

 観客の大合唱が響き渡り、それにあわせた4人のセッションも行われた「fire sign」のあと、藤原基央は「心の奥まで、すごいすごい響いてきたよ。本当にどうもありがとう」と語りかけた。その後アンコールのMCでは、ツアー中に曲を書いたこと、その中にはすでにメンバーに聞かせた曲もあることが、藤原の口から明かされた(翌日の11日公演では、アンコール後に藤原がタイトル未定の新曲を弾き語りで披露した)。今回のツアーが原動力となり、BUMP OF CHICKENの“PATHFINDER”としての道はこれからも続いていく。

(文=若田悠希/写真=古溪一道)

BUMP OF CHICKENオフィシャルサイト

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