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「田中秀臣の創造的破壊」第4回

PRODUCE48に見る、日韓アイドル市場の今 田中秀臣が特徴を解説

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 11月29日、横浜アリーナで満員の観客を前にして、日本のAKB48と韓国の超人気アイドルグループI.O.Iがコラボしてパフォーマンスを繰り広げた。このイベントは、『2017 MAMA in Japan』という韓国の音楽専門チャンネル「Mnet」主催の授賞式の一部として行われたものだ。MAMAは、Mnet Asian Music Awardsの略称。Mnetは、CJ E&Mコーポレーションによって運営されている。CJ E&Mは韓国の主要企業グループのひとつ、CJグループに所属する中核企業だ。CJグループは製糖業などの食品、バイオ産業、運輸、そしてエンタメ部門などで世界的に市場を広げている。最近では、CJ E&Mなどを中心に世界的な韓流文化(エンタメ、食文化)を輸出していき、その売り上げの急拡大を企業グループの中心的戦略にしている。

AKB48『11月のアンクレット』

 筆者はあくまで主観だが、AKB48グループとI.O.Iはまったく違うコンセプトを持っていると思っていたが、横浜アリーナでのコラボは(ネットでは韓国側の視聴者で意見が割れたと報じられてはいるが)とてもうまく調和がとれていた。特にAKB48側の柏木由紀のビジュアルが光っていた。

 そしてこの授賞式で、AKB48の総合プロデューサー秋元康氏が、Inspired Achievement賞を受賞し、あわせてMnetの人気アイドルオーディション番組『PRODUCE101』とAKB48のコラボ企画といえるPRODUCE48のプロデュースを行うと発表された。

 この日韓共同プロジェクトPRODUCE48もまたMnetの番組として企画されているが、まだ具体的な内容はわからない。ただ日韓双方の利害の一致を考えることは容易だろう。日本のAKB48グループは、最近の中国市場への“再挑戦”の表明や、すでにアジア各国で展開する姉妹グループの動向をみてもわかるように、日本のアイドルの中で最も意欲的な海外志向を持っている。AKB48グループにとって、市場に魅力がありながら、参入のハードルが高いのは、韓国とアメリカだろう。

 韓国は人口こそは日本の半分ほどだが、音楽産業の規模は世界第8位である。ただし韓国のアイドルは、長年の人的投資(過酷なレッスンなどの選抜システムを中核としたアイドル育成システム)を積み重ねた、完成品として市場にデビューする人たちが大半である。先のI.O.Iのメンバーは、PRODUCE101の中で視聴者から101名の中から選抜されたものだが、そもそも各メンバーは幼少期から上記のアイドル育成システムの中で訓練されてきた人たちだ。

 その種のアイドル育成システムがなく、せいぜい長くても数カ月単位でアイドルデビューをし、あとはライブなどで場数を踏ませるOJT型の日本の育成システムで生まれたアイドルとは異なる類型だといっていい。わかりやすくいえば、完成品としてデビューしたアイドルと、未完成のままデビューしたアイドルの違いで、それぞれに適合したアイドル市場を作り出してきた。

 その意味では韓国のアイドルファンの目には未完成型アイドルが、単なる「未完成」「未熟」に見えるリスクがある。未完成のままか、あるいは「完成」を目指してファンと成長物語を共有することでアイドル市場を形成する日本とは異なる高いハードルが、韓国市場にはある。北米もまた似たような事情が通用する。だが、今回のケースでは、自国はもちろん北米や南米などで抜群の支持を得ている韓流アイドルグループのノウハウを得ることができる。さらにいえば、日本の音楽番組はYouTubeなどでファンたちが勝手に配信することに配信側がとても強い姿勢で臨んでいる。そのため海外のアイドルファンには、日本のアイドルたちは比較的遠い存在になりやすい。

 特にジャニーズ事務所の所属男性アイドルとともに出ている番組が、ネットでファンたちの手でアップされることは極めて厳しく取りしまわれている。仮にAKB48グループがその種のファンたちの著作権侵害的な動画の流布に寛容であっても、ジャニーズ事務所所属アイドルと一緒に出ている音楽番組がそのような形で広まることはほとんどないだろう。他方で、韓国アイドルたちが頻繁に出る音楽番組は、ファンたちによってかなり自由にYouTubeを中心にアップされている。韓国のアイドル市場の国際的な伝播とその隆盛を考える上で、この「著作権侵害」のメリットは重要だと、経済学者のパトリック・メセリンらは最近の論文の中で指摘している(“The Secret to the Success of K-Pop” in Corporate Espionage, Geopolitics, and Diplomacy Issues in International Business PP.130-148)。

 通常の経済学では、研究や発明の著作権は守らないと、フリーライダー(ただ乗り)によって社会的な便益が失われると説明されている。しかしアイドルなどの文化財は異なる可能性がある。アイドル、音楽だけではなく、例えば「店頭での立ち読み文化」が主流だった過去の日本のマンガ市場、違法コピーされた日本マンガやアニメなどが販売されていた中国市場などでは、金銭的余裕のない若年層をそれぞれの分野に導く役割をその種の「著作権侵害」の文化財が果たしていたといえるかもしれない。

 いずれにせよ、韓国メディアを通じてAKB48的なコンセプト、もしくはそのメンバー自体の知名度が世界に広まっていくことは、秋元康氏やAKB48側にとって極めて大きな魅力なのは間違いない。

      

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