ヴィジョニスト『Value』は“エレクトロニカの変容と進化”を示す重要作 小野島大が選ぶ新譜13枚

JAMES L'ESTRAUNGE ORCHESTRA『Eventual Reality』

 UKのハウス・ユニット、ソウル・レネゲイズのメンバーとしても知られるリッキー・リードの新プロジェクトJAMES L'ESTRAUNGE ORCHESTRAの1stアルバム『Eventual Reality』(BBE)。ジャガ・ジャジストやザ・シネマティック・オーケストラをもう少しポップに、ダンス・フロア寄りにしたようなエレガントでソフィスティケイトされたエレクトロニック・ジャズ~クロスオーバー~ディープ・ハウス~ダウンテンポを展開しています。生楽器とエレクトリックを巧みに融合したオーガニックで温かみのあるサウンドとソウルフルなボーカルが素晴らしい「Closer」を始め、楽曲もアレンジも演奏も良い。ぜひ生バンドによるライブを見てみたいですね。

The James L' Estraunge Orchestra - Closer (Official Video)

The James L'Estraunge Orchestra - See You Tonight
Meute『Tumult』

 ドイツはハンブルグの12人編成バンドMeuteの1stアルバム『Tumult』(Tumult)。「テクノ・マーチング・バンド」という触れ込みですが、ローラン・ガルニエのダンス・クラシック「THE MAN WITH THE RED FACE」のカバーを含む内容は、まさしくテクノとブラス・バンドが合体したような人力ダンス・ミュージック。アンサンブルはシンプルですが、村祭り的な泥臭さとストリートの躍動感が楽しく、ライブは盛り上がりそう。来年のフジロックでどうでしょう。

THE MAN WITH THE RED FACE (Laurent Garnier Rework) - OFFICIAL VIDEO
Meute - The Man With The Red Face | Live Plus Près De Toi

 ブルガリア出身のプロデューサー、キンク(KiNK)の2ndアルバム『Playground』は、ドイツのレーベル<RUNNING BACK>から。疾走感のあるファンキーなフロアキラーから、深く沈み込むダビーなダウンテンポまで、シャープで歯切れのいいテック・ハウスを披露しています。目新しさはありませんがツボを心得た明快なダンス・トラックは快感の一言。「Yom Thorke」なんてタイトルの曲もあります。

 イタリアのニノス・ドゥ・ブラジル(Ninos Du Brasil)の新作『Vida Eterna』(LA TEMPESTA INTERNATIONAL)。インダストリアル・トライバル・ハウスとでも言うべき音楽性で、リズム・パターンとしてはサンバですが、呟くような重苦しいボーカルやチャント、重心の低いグルーヴが、ダークで頽廃的で呪術的な、特異な世界観を作っています。終曲「Vagalumes Piralampos」ではなんとアート・リンゼイがゲストボーカルで参加。

Ninos du Brasil - Condenado por un Idioma Desconhecido [OFFICIAL VIDEO]

ラビット『Les Fleurs Du Mal』

 米ヒューストン在住のプロデューサー、ラビット(Rabit)ことエリック・C・バートンの2枚目のアルバムが『Les Fleurs Du Mal』。自身のレーベル<HALCYON VEIL>からのリリースです。前作『Communion』が大評判となり、一部ではインダストリアル・グライムなんて言い方をされてますが、アルカ以降を感じさせる鮮烈なサウンド・コラージュと不規則で切っ先鋭いビート、ざらついた電子音、荒涼とした心象風景を思わせるダーク・アンビエントな質感など、前作以上の狂気が溢れるレフトフィールド・テクノの傑作です。

Rabit - Bleached World

 

 

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