KinKi Kidsに息づく“ジャニーズの二本柱” 『未満都市』『LOVE LOVE あいしてる』復活の意義

 2017年、KinKi KidsはCDデビュー20周年のアニバーサリーイヤーだ。昨年はデビュー20年目ということで『NHK紅白歌合戦』に初出場、1997年7月に発売されたデビュー曲「硝子の少年」を披露した場面もまだ記憶に新しい。

 そうしたなか、大きな節目に向けて注目すべき二つの発表があった。まずひとつは1997年に放送された日本テレビの連続ドラマ『ぼくらの勇気 未満都市』のスペシャル版が、もうひとつは1996年から2001年にかけて放送されたフジテレビの音楽バラエティ『LOVE LOVE あいしてる』の同じくスペシャル版が、いずれもこの夏放送されるという内容である。つまり、KinKi Kidsにとってデビューの頃に放送された二つの番組が復活するというわけである。

 このように、ジャニーズグループの区切りの年にかつての代表的番組が復活するというケースは初めてではない。しかし、ドラマと音楽バラエティというジャンルの異なる番組が二つ同時に復活するのは、おそらくほとんど前例のないことだ。それはそのままKinKi Kidsというデュオの演技、歌、笑いを幅広くこなす才能の希有さを示すものだろう。

 ただ、それだけではない。この二つの番組の同時復活という出来事は、ジャニーズの歴史における彼らの存在の重要さを象徴的に物語っているように思う。それはどのような点においてなのか? 順に見ていこう。

 『ぼくらの勇気 未満都市』は、嵐結成前の相葉雅紀と松本潤の出演、また堂本剛主演の『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)をはじめとして『TRICK』(テレビ朝日系)など数々のドラマで有名な堤幸彦ならではの独特の演出術など、KinKi Kidsの二人の演技以外にも色々な見どころがあるドラマだ。主題歌の「愛されるより 愛したい」もミリオンセラーを記録、彼らの代表曲のひとつになった。

 物語の設定はSF的である。千葉の幕張をモデルにした幕原地区に落下した隕石に付着していた微生物によってバイオハザードが生じる。微生物に感染すると大人は死亡してしまうため、そこには子どもたちだけが生き残った。政府は感染の拡大を防ぐという名目で子どもたちを幕原地区のなかに隔離する。そこにやってくるのが、堂本光一扮するヤマトと堂本剛扮するタケルだ。二人は、暴力と無秩序が支配する世界に秩序をもたらそうと奮闘する。

 つまりこれは、少年たちのサバイバルと自立を描いた一種の創世神話である。二人の役名を合わせれば“ヤマトタケル”になるのがその証しだ。大人たちによる陰謀を知った少年たちが政府と対決するという物語の展開でもそのことが強調されている。

 今回の発表の際、最終回の堂本光一のセリフ「20年後、またここで会おう」が番組復活を予言していたようだと話題になった。だがそのセリフには、続きがある。自分たちに銃を向ける政府に向かって、タケルとヤマトは微笑みながらこう言い放つ。「俺らは、これから大人っちゅうやつになっていくんや」「けどならないぜ、あんたのような大人にはな」

 荒廃した世界のなかで生きる「少年たち」による一筋の希望の物語。それは、数々のオリジナルミュージカルなど舞台を通じてジャニー喜多川が追求してきたテーマとオーバーラップするものがある。ジャニー喜多川は、自らの戦中や敗戦直後の体験を反映させたような「少年たち」の希望の物語を自ら作り、上演してきた。そしてそんなジャニーズの舞台の将来を担うひとりが『SHOCK』シリーズの主演、演出、脚本を長年続ける堂本光一であることは言うまでもない。その意味では、『ぼくらの勇気 未満都市』はジャニーズ的な演劇と連動したドラマでもある。

 一方、『LOVE LOVE あいしてる』は、KinKi Kidsの音楽的可能性を広げたという意味でとても重要な番組だ。

 それに関して、吉田拓郎との共演は大きかった。かつて1970年代前半「結婚しようよ」(1972年リリース)などで大ブレークした頃にはテレビの出演を拒否し続けた吉田拓郎が、音楽番組とは言えバラエティ色の濃い番組にレギュラー出演、しかも共演が大きく年齢の離れたKinKi Kidsとあって不安視もされる出だしだった。

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