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7thアルバム『Fabula Fibula』インタビュー

BIGMAMA 金井政人が考える、ロックバンドで先に進む方法「どう長く愛されていくか意識する」

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 BIGMAMAが通算7枚目となるアルバム『Fabula Fibula』を完成させた。

 バイオリンロックバンドというスタイルで唯一無二の音楽を作り上げてきた彼らが10周年イヤーを迎えて作り上げたのは「収録されている全ての曲に街の物語とテーマがあり、アルバム1枚で一つの地図ができあがる」というコンセプト・アルバムだ。

 10月には初の武道館公演も決定し、バンドは飛躍のターニングポイントを迎えている。想像力を爆発させた新作の意図について、バンドの首謀者・金井政人に聞いた。(柴那典)

「『BIGMAMA金井政人、何で勝負するの?』、それが問われていると思った」

――曲ごとに街があって、そのストーリーを描くという新作のアイデアは、どういうところから生まれたものだったんですか?

金井政人(以下、金井):実はシングルの『MUTOPIA』を出したときが発端だったんですよ。それこそ、前回柴さんにインタビューしてもらった時に話したこととすごく繋がってくるものがあって。

――1年半前のリアルサウンドのインタビューで話してましたね(参考:BIGMAMA金井政人が語る、音楽とエンターテイメントの未来「僕らは独立遊軍にならなきゃいけない」)。音楽でどうやって体験を作るのかということを考えている、と。ディズニーランドみたいなテーマパークも含めて、全てのエンターテインメントがライバルだって。

金井:やっぱり、CDを作っていても、発売日から1カ月経ったらお店に置かれる場所がどんどん狭くなっていくんです。世の中にいるアーティストが毎月のように新譜を出してるからなんですけれど。そこで、ちゃんと長く売っていけるものを作ろう、長い年月が経ってもちゃんと人の心を惹き続けるようなものにしようと考えたんです。そのために「どうする、お前?」と。「BIGMAMA金井政人、何で勝負するの?」っていう。バンドをはじめて10年経ったタイミングで、それが問われていると思ったんです。

ーーそれはどういうものだったんですか?

金井:バイオリン・ロックで、USとUKの真ん中の邦楽をちゃんとやる。そこに自分の世界観から来る妄想を爆発させる。そういうものがルールとしてあるんです。自分が人様に差し出す表現のマナーみたいなものとしてある。ただ、「MUTOPIA」のときにはそういう指針みたいなものはなく、単純にスタジオワークの中で突然変異で曲ができてしまった。それがすごく現実から跳躍力のある音楽で、楽園をテーマにしたものだったからこそ、その後作る曲に、それぞれが持つ世界とか場所みたいなイメージが広がっていった。だから、アルバムの中でトータルでパッケージングした時に、これは「音楽で旅をさせる」ということになるんじゃないかと思ったんです。曲ごとにコンセプトがあって、それが街を象徴していて、それぞれの街にはどこかこじれているところがある。それを一つの作品として出すことが、このタイミングでBIGMAMAにとっての武器になる、と。

ーーそれが「音楽で見せる仮想現実」というキャッチコピーに結実した。

金井:なぜ自分がそういう風にできたかというと、自分がいる下北沢のUKプロジェクトというレーベルは、作曲とか歌詞に対する縛りが全くないんです。自分が好きに歌詞を書けて物語を作れる環境だからこそできたことなのかなって思います。

――ただ、「縛りがない」と言ったけれど、このアルバムって縛りを自分で作っていると思うんです。そういう感覚はデビューしたてのバンドにはないですよね。とにかくやりたいことをやるだけだから。でも、続けていくと「じゃあ、次は何しようか」とか、「自分たちが進む道はどこだろうか」みたいに、ある種のコンセプトを自分で供給しなければいけない。今のBIGMAMAはそういう位置に立っているとも思うんですよ。その辺はどうですか?

金井:そうか、俺、究極に矛盾してますね。「縛りがない」って言って、めちゃめちゃ縛ったものを作ってる(笑)。

――そう。しかも、その縛りは外から与えられるものじゃないんですよね。自分で作らなきゃいけない。

金井:はい。話が飛ぶんですけど、最近、フランスに行ってルーヴル美術館を見てきたんです。もともと『Roclassick』のときから思ってたけど、今自分が作っている音楽が消耗品みたいなものかどうか、何百年ちゃんと伝わるかどうかみたいなことをいつも考えているんです。すごく愛情と魂をこめて、人生をかけて作ってるものだからこそ、ちゃんと世にある音楽と切り離したいんですよね。で、縛ることってより孤立しやすくなる方法だと思ったので。メンバーは縛ってないけれど、自分が作曲をする時にはちゃんと縛るポイントを作っていく。テーマ設定みたいなものをしていく。そうすると、何年か先に振り返った時にもちゃんと良い目印になると思うんですよ。新しく出会ってほしい人もたくさんいるけど、やっぱり、悔しいかな、10年やってきたことでBIGMAMAの新譜って、ある程度のパブリック・イメージが生まれちゃっていて。「BIGMAMAってこういうバンドでしょ?」みたいな。それを覆したいというのもありました。自分たちがアーティストとして強く存在証明をするために、僕はこの方法が一番向いてるんじゃないかなと思ったというか。

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――わかりました。まず今はアルバムの中身の話よりも外枠の話が続いているんですけど、10年やってきてBIGMAMAというバンドのイメージが固まってきたと金井さんは言いましたよね。これまでに6枚のアルバム、それと『Roclassick』のようなコンセプトアルバムが出ているわけですけれども。これをいくつかの時期に括ることはできますか?

金井:自分の現在地からすると、アルバム3枚が一つのタームになっている感じはしますね。1枚目、2枚目、3枚目が最初のターム。ライブハウスで、メンバーにバイオリニストがいるという体制でスタートしたバンドが、5人のバンドの内側を見ながら曲を作っているのがその3枚ですね。それから、4枚目、5枚目、6枚目が次のターム。その3作は、一つの方向だけどちゃんと外を向いている。で、7枚目になってその両方を見るようになった。自分たちの内側にある情熱的な部分も見つつ、それをどう発散させていこうかっていうことも考えている。ただ、この7枚目までを第一期にしたいなっていう意思はあります。それは10年という括りもあるんですけど、ここまでがファースト・シーズンだったなっていうバンドの歴史にしたいなって思っています。

――なるほど。今語ってもらったのはバンドの歴史の縦軸の話ですよね。で、さっき言った「ヴァイオリン・ロックで、USとUKの真ん中の邦楽をちゃんとやる」というのは、海外の音楽シーンとの同時代性という横軸の話だと思うんです。このあたりはどうでしょう? たとえば『MUTOPIA』の時のインタビューではAviciiやZEDDに刺激を受けたという話もありましたけれど、ここ最近のUSやUKシーンはどう見ています?

金井:最近、Spotifyのグローバルトップ50を流して聴いてるようなことが結構あるんですけど。今、誰を聴いてもみんな一緒じゃないですか。

――そうですね。軽い音色のシンセを使ったトロピカル・ハウス以降のポップソングが7割くらいを占めてる感じがある。パッと聴いたイントロで区別がつかなかったりね。

金井:そうそう。何というか、ずっと同じ感じの音で、あたかも一つの作品かのようにトップ50が流れている瞬間があって。で、自分としては、BIGMAMAでやろうとしてること、似合うものにはちょっと距離感があるなと正直思ってます。例えば、Clean Banditとか、バイオリン奏者がいるバンドで、要素としては近いし良い音楽を作ってるなとも思うけれど、やっぱり今このアルバムでやろうとしてるとは違っていて。

ーーと言うと?

金井:ロックバンドとして肉体的なところはちゃんと担保していたいんです。そこを軸にしたいという欲求は過去の中で今が一番太くなっている。母体としてはロックバンドだって、自分たちで強く願うところがありますね。『MUTOPIA』のタイミングではおもちゃを作る感覚で飛び道具的なものを作ったけれど、そこから先に進んでる今、自分の中では特にUSのシーンを見て「この感じ、早く終わらないかな」みたいなことは正直思ってます。

――なるほど。実は僕がアルバムを聴いてまず思ったのも「ロックバンド回帰」という第一印象だったんですよ。それも、どちらかと言うとハード・ロックというかサイケデリック・ロックというか、いわばLed Zeppelinを想起させるようなもの。BIGMAMAがスタート地点であったのは00年代のエモとかパンク・ロックだから、そことも違う気がする。

金井:そう。でもそれは、狙ってやったことじゃなくて。スタジオワークの中で偶然生まれたんです。1曲目の「ファビュラ・フィビュラ」ができたときに、他の人は過去のいろんな音楽と照らし合わせて「これとこれの掛け合わせだ」って思うかもしれないけど、僕の中ではすごく発明感があったんです。このギターリフからオケが入ってきて、喧嘩してると思いきや最後に抱き合うみたいな。で、そのオケに負けない言葉をつけるために何か俺も発明しなきゃって思って、思いついた言葉が結果タイトルにもなった。これってまず、自分にとってすごい喜びだったんですね。で、それが作品全体にも及んだという、これまで「Sweet Dreams」とか「MUTOPIA」とか、そういう曲がバンドのイメージになっていたと思うんです。「イベントでラスト任されがち」みたいな。そこで一番良いハッピーエンドを作るのがBIGMAMAだっていう。

――フィナーレとかアンセムのイメージ?

金井:そう。それに対して「どんとこい、任せろ」みたいな思いもありつつ、ちゃんとエッジな部分を作った方が、より際立つというか。攻める部分、というか、ちゃんとロックバンドとして肉体的に格好いいところを見せなきゃな、っていう思いがあって。それが作曲に影響してきていて、メンバーの年齢とスキルが合わさって、今この形でアウトプットされたんだと思います。

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――端的に言うと、ギターのリフがすごくフィーチャーされていますよね。そこで「これは発明だ」と思ったポイントってどの辺にありましたか?

金井:ロックバンドってもともと衝動的なものが美学としてあるじゃないですか。で、その逆に僕の中ではクラシックから来てるんですけど、緻密なものが格好いいというカルチャーもある。その真ん中にいかに挑戦し続けるか、ロックバンドでありながら緻密な部分をちゃんと組み込むというチャレンジを一番体現したのがその曲だと思ったんです。この曲、オーケストラのアレンジのレコーディングをしてる時に、そのリーダーの方が、「格好いいですね、この曲!」って言って、どんどんのめり込んでいってくれたんですよ。実感したのはその瞬間ですね。

――なるほど。そういうサウンド面の手応えと、最初に話してもらったコンセプトの部分、曲ごとに街のイメージがあるという部分って、関連はしてました?

金井:そこはあんまりないですね。BIGMAMAって、作曲・BIGMAMAで、作詞・金井政人なんですよ。音楽的なところ、スタジオワークの話はバンドの目線で喋ってる。で、街とかコンセプト的なところは、金井政人として喋ってるというか。そこに関して他のメンバーはアンタッチャブルで、事後報告でしかない。

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