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文庫版『バンド臨終図巻 ビートルズからSMAPまで』刊行記念企画

“解散”を迎えられたことは幸せなことでもあるーー『バンド臨終図巻』著者座談会

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 『人間臨終図巻』(山田風太郎著)に倣い、1960年代から現在に至るまでのバンドやグループの解散の経緯をまとめた『バンド臨終図巻』。2010年の初版から6年経った2016年12月1日、文庫版『バンド臨終図巻 ビートルズからSMAPまで』が文藝春秋より刊行された。同書ではタイトル通りビートルズからSMAPまで、古今東西のバンド191組の解散エピソードを網羅。また、文庫化にあたり、時代の流れとともに変化した各バンド・グループの状況やエピソードが更新され、内容が一部再編纂されている。よって、新たに興味を持った読者はもちろん、単行本をすでに読んだ読者も改めて楽しむことができるだろう。

 今回当サイトでは、同書を執筆した速水健朗氏、円堂都司昭氏、栗原裕一郎氏、大山くまお氏、成松哲氏を迎えて座談会を行なった。現代における“解散”、バンドやグループの終わりとは何なのかを、著者5名が改めて語り合った。(編集部)

解散と再結成は「継承」を巡る問題

円堂:僕の担当はプログレやハードロックなど、やたらメンバー交代したり分家ができたり、解散しているようでしていないような、ぐちゃぐちゃした感じが多かったです。まあ、完全な“臨終”だけでなく“臨死体験”や“仮死状態”も扱った本なので。今回、新規で担当した中で印象深いのは、FUNKY MONKEY BABYS。例のファンキー加藤さんの不倫騒動が入稿後に起きて、当初それ自体は解散と関係ないと思ってスルーしていましたが、ソロ活動を始めるにあたり、アンタッチャブルの柴田さん(後の不倫相手の夫)と飲んで「頑張れよ」と励まされていたというエピソードが出てきてしまったので加筆しました。

速水:最新情報が反映されて良かったということで。SMAPの情報もギリギリまで入りましたからね。企画の段階では1月の解散騒動の頃だったのかな。あれよあれよと状況は変わっていき……入稿が遅れたことで対応できたので、遅れた甲斐ありです(笑)。

円堂:とはいえ、ゲスの極み乙女。も不倫騒動は起きていましたけど、活動自粛という展開になるとは思ってませんでした。だから、本では触れていません。

栗原:自分の担当分で印象深かったのはZONE。2011年の東日本大震災復興支援ライブをきっかけに期間限定で再結成したんですけど、再結成後にドラマチックな展開があって、単行本のときはどうってことない話だったのが一気に面白くなりました。悲惨なので面白いと言っては語弊があるんだけど。

速水:単行本の刊行後は特に東日本大震災を機に復活や再結成したバンドが多く、書き換えないといけない状況にすぐになってしまったので、僕らのチームも震災後再結成のパターン。しかも、2016年は宮崎駿が引退すると思ったら続けるとか、天皇の生前退位をめぐる議論とか、「継承」が問われてもいる。解散と再結成はまさに「継承」を巡る問題。

成松:ロックは本来、若者の文化なんです。例えば、昨日今日『君の名は。』を観に行って、初めてロックというものを聴いて感動した若い子がRADWIMPSのCDを買うということは、ものすごい幸せな出会いだし、そういうふうにあって欲しい。しかし一方で、伝統芸能の域にある世界というか、なかなかバンドってなくならないものだったり、死を迎えて活動を終えるということもあって。

円堂:それこそ生前退位しないで頑張ってずっとキーボードを弾いてきたエマーソン、レイク&パーマー(ELP)のキース・エマーソンが、手が病気でよく動かなくなって、演奏への悪口をネットに書かれ自殺したということが今年はじめにありました。

栗原:でも、アイドルは器(グループ名)を残してよく中身(人)が変わるじゃないですか。バンドも中身が変わって器が残ってもいいっちゃいいんですよね。

円堂:その点、人名をバンド名にしちゃうとね……。今回の文庫版を出した後、ELPでは12月にグレッグ・レイクまでガンで死んでしまった。で、残ったカール・パーマーが最近、個人でやっているバンドの名前がCarl Palmer's ELP Legacy。この本が“臨終”ってだけあって遺産相続みたいな例もあるわけです。イエスでは名前の使用権を持っていたベーシスト、クリス・スクワイアが死んだ後も、過去にいたメンバーを入れて活動を続けている。クリスは白血病で闘病期間があったから、自分が死んだ後のことをきちんとした形で言い残していったはず。だから、問題なくイエスのツアーは続いたんだと思う。今年の日本公演では、黄金期からのドラマーであるアラン・ホワイトが来日前まで腰の手術で休んでいたから、大部分は代役が叩き、後半の2曲半だけアランが担当しました。このバンドは、代役を使うことになれてるから。

成松:今年の2月に下北沢GARDENでベイ・シティ・ローラーズのレスリー・マッコーエンが来日公演をやった時は、昼間から年齢層高めな方々がバッチリメイクでがっつり来てましたよ。伝統芸能になってはいるけど、お客は呼べている感じがしました。

速水:単行本の刊行以降、日本の一番ビックな再結成、もしくは解散ってなんでしょう。

栗原:解散はSMAPでしょう。

速水:SMAPは解散にかこつけたビジネスが一切行われていないので、ガチな解散ですよね。普通だったら解散ツアーなどのビジネスをやるところですけど、デビュー25周年記念公演もなかったので極めて珍しいかたちです。

大山:メンバー同士の関係が問題視されたじゃないですか。紅白に出ないのも不仲が原因だと言われていたりして。それが本当だとしたら、フリッパーズ・ギターとよく似ています。彼らも解散が決まってからツアーを取りやめて、ビジネスを一切やらなかったので。

速水:SMAPの場合は、解散原因として事務所の内紛だよね。“大人の都合系”での解散事例。ファンは本当に不憫。その逆は、THE BOOM。主には、体力的に続けることが無理というのが大きかったんですけど、SMAPとは反対に良いかたちで迎えられた解散でした。解散コンサートだけでなく、彼らのルーツであるホコ天に近い渋谷公会堂でファンイベントまでやって「僕たちは日本一幸せなロックバンドでした」って言って解散した。ファンも幸せだったと思います。

大山:ビジネスの状況が悪くなってとか、仲が悪くなってとか、切り捨てられて解散というのも多いのですけど、そうではないものもあります。僕が新規で担当したBerryz工房は惜しまれる中、無期限で活動を停止しました。アイドルはだんだん高齢化していて、20代の女子がアイドルをやっているのも普通です。でも、Berryz工房は基本的に10代で終えるというのが暗黙の了解でした。彼女たちの活動休止には潔さのようなものを感じましたね。

円堂:高齢化というと僕が担当したバンドは高齢が多かったですね。60代半ばをすぎたら、本人たちだってどこまでやれるかわからない感じになると思うんです。スコーピオンズなんて解散ツアーと言ってライブをやったら、客の受けがいい、自分たちも意外にやれるなと気分が良くなって、2010年に解散を撤回しましたから。

成松:あれは幸せな解散しないパターンです。音楽活動は定年がない商売だから、楽しく演奏して喜んでくれる客がいれば、その関係を死ぬまで持ち越し続けるのも美しいかなと思います。

円堂:あと、病気持ちも高齢バンドには多いですね。イエスやブラック・サバスなどがそうだったし、エアロスミスもガンで手術したメンバーがいるほか、今年はジョー・ペリーが楽屋で一時心停止になった。エアロは次にやるツアーがファイナルだと言ってみたり、否定してみたり……本人たちも先のことをわかっているとは思えない。

速水:THE BOOMの健康解散じゃないですけど、なにか名前をつけたほうがいいかもしれませんよね。健康状態が不安定であるゆえに存続できなかった、“後期高齢解散”みたいな(笑)。

円堂:単行本から文庫本が出るまでの間に伝記を出したミュージシャンも多かったです。人生を振り返るモードになっちゃって。

成松:ロックミュージシャンはそういう年齢の人達になったんですね。

円堂:で、1つのバンドで複数のメンバーが書いていると、もちろん発言が食い違う。

大山:伝記書いたばっかりに喧嘩して解散とかありそうですね(笑)。

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