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冨田勲の遺作『ドクター・コッペリウス』を振り返る

冨田勲追悼公演『ドクター・コッペリウス』に見た、「混然とシチュー化」した表現の高み

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 5月に逝去した作曲家/シンセサイザー奏者、冨田勲の遺作『ドクター・コッペリウス』が11月11日、12日、Bunkamuraオーチャードホールで上演された。2017年4月、すみだトリフォニーホールでの再演について詳細の発表が待たれるなかで、あらためてこの追悼公演を振り返りたい。

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 公演前半(第一部)では、冨田がバーチャルシンガー・初音ミクを初めてソリストに起用し、宮沢賢治作品の世界を音楽として提示したことで話題を呼んだ『イーハトーヴ交響曲』(2012年)を披露。さらに英国の音楽プロデューサーで、ダブ・ミックスの巨匠として知られるエイドリアン・シャーウッドが、冨田のシンセサイザー作品として世界的に高い評価を受けた『惑星 Planets』(1977年)のライブミックスを行った。

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 管弦の音色とボーカロイドの歌唱がどんな融合を果たすか、冨田がシンセサイザーでアレンジしたグスターヴ・ホルストの組曲「惑星」をさらにダブミックスすることで、どんな化学変化が起こるのか――という興味本位な見方、聴き方は、実際に体験してみればあまり意味がないことに気づく。それは、冨田本人が「電気も自然の一部なのだから、電子音だって自然の音に変わりない」という趣旨の発言を残しているように、“異物の掛け合わせによる面白さ”を目指すのではなく、すべての音を等しく大切に扱い、シームレスにひとつの作品として昇華しているからだ。管弦が未来的に響き、電子音が懐かしく感じられるような、不思議な感覚にとらわれる。

 ライブミックスが始まる際には、「普段のコンサートとは違う大きな音が出るので、この間は出入り自由」「席を立って楽しむのもOK」という内容のアナウンスが流れた。東京フィルハーモニー交響楽団のフランチャイズにもなっているオーチャードホールでのこと、観客からは思わず笑いがこぼれたが、同時に、何ごとにもとらわれない冨田の笑顔も想像させる、粋な演出になっていたのではないか。

 そして第二部として上演されたのが、冨田が亡くなる1時間前まで制作に取り組んでいたという遺作『ドクター・コッペリウス』だ。日本における宇宙開発の父=糸川英夫に捧げた物語であり、科学技術、宇宙への憧れとともに育った冨田自身の自伝的要素もある、まさに集大成的な作品。架空の科学者=コッペリウスを重力からの解放へと導くのは、晩年、冨田のよきパートナーとなった歌姫・初音ミクである。

 オーケストラに先立つ第0楽章「飛翔する生命体 Ascending Life Form」は、冨田によるスコアが存在せず、彼が遺したモーグ・シンセサイザーのサウンドデータとSEをプロジェクトメンバーが再構築した楽曲だ。本公演の公式パンフレットに作品解説を寄せた前島秀国氏が語るように、「これからも“トミタ”という音宇宙を深く探査していこうとする、残された者たちの強い決意」が感じられる、挑戦的な内容。続いて演奏された、本作で唯一の純粋な管弦楽曲「宇宙へ Into The Outer Space」を鮮やかに浮かび上がらせる効果もあった。(第1楽章、第2楽章は冨田から構想が語られたのみで、欠番となっている)

     
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