ササノマリイが語る、“歌うこと”への目覚め 「素材じゃない歌には、命が宿ってる」

ササノマリイが語る、“歌うこと”への目覚め

「共感してもらいたいという気持ちが強くなってきた」

ーーさて、今回メジャーデビューとなるシングル『タカラバコ』がリリースされました。こちらはどのように作っていきましたか?

ササノマリイ:表題曲の「タカラバコ」は、これまでの自分にはなかった要素がもっとも詰まっていると思います。『夏目友人帳 伍』のオープニングテーマの書き下ろしなので、まずは作品の世界観に合わせるということを念頭に置きました。このアニメシリーズ、個人的にも大好きでずっと観ていたのですが、いつものササノマリイの曲作りだと、これまでと同じような暗い歌詞になってしまいそうだったので(笑)、そこは気をつけましたね。自分が思う「自分らしさ」みたいなものにとらわれていた頃は、ポップで明るい表現は意識して避けていたんですけど、今回は「戯言スピーカー」の時のように、はっきりとした言葉を使うように意識しました。色で言うと、これまでは「枯れ葉」のような淡い暖色系だったのが、「タカラバコ」は瑞々しい「若葉」のイメージです。

ーーボーカルに対しての意識も変わったように思いました。「死んだような声」から(笑)、もう少し生命が宿っているというか。

ササノマリイ:「そうなるといいな」と思って歌いましたね。最近はボーカル練習をするようになり、歌の確認もしてもらうようになってからは、「上手く歌える人は、それだけ表現方法もたくさん持っているんだな」っていうのが分かってきました。当たり前のことなのかもしれないですけど、僕は今までずっと、声も「素材」として考えていて、「ピッチもリズムも、後からいくらでも修正できるでしょ」みたいな感じで思っていたんですよね。でも、そうじゃないんだなって。「素材」じゃない歌には、「命」が宿っているんですよね。

ーー例えば、どんな時にそう感じますか?

ササノマリイ:人が歌うと、シーケンスとは違ってピッチもリズムも完璧にグリッドが揃うことはないわけですよね。必ず「ズレ」が生じるんですけど、そのズレこそがグルーヴであり、「命」が宿る場所だと思うんです。不完全だからこそ、オケに混じった時に響く声もあるんだなと。それは、自分で歌うようになって実感したことです。ライブが嫌いだった自分が、「ライブが良かった」って言ってくれるお客さんに対して、「もっと上手くならなきゃ」「生で聴かせられるようにならなきゃ」って思うようになってる(笑)。すごい変化だなあと思いますね。相変わらず、ピッチやリズムが完璧に揃った音楽も大好きなんですけど(笑)。

ーー僕が3曲を通し聴いて思ったのは、「忘れてしまうこと」「変わってゆくこと」という、移りゆく物事への諦観、慈しみみたいなものが、常に根底に流れているなということです。

ササノマリイ:言われてみればそうですね。『夏目友人帳』も、主人公の夏目貴志が、出会いや別れを繰り返しながら成長していくにつれて、だんだん心境が変わってくるんですね。でも、昔の貴志があったからこそ、その時の経験があったからこそ、今の気持ちになれているんだよねって思うことがあって。そこに、僕自身を重ねているのかもしれない。今後、ササノマリイの楽曲はどんどん変化していくと思うけど、自分の中には常に一貫した気持ちがあって、そこはずっと変わらず大切にしていきたいっていう。

ーーそう思えるようになったのは、自分に自信がついたから?

ササノマリイ:相変わらず、自信はないんですよね……(笑)。自信はずっとないんですけど、前よりも「伝えたい」っていう気持ちが強くなったのかもしれないですね。

ーー「つなぐ」という言葉がよく出てくるのは、誰かと繋がりたい、誰かに伝えたいという思いが強くあるからなのかなと思いました。

ササノマリイ:共感してもらいたいという気持ちは、少しずつ強くなっていきました。最初は「この音色、かっこいいでしょ?」「このビート、最高でしょ?」みたいな気持ちで曲を作っていたんですけど、最近は歌詞を書く時も、「今、僕はこう思っているんだけど、同じように思っている人がもしもいて、分かってくれたら幸せだな」っていう気持ちで書くようになりましたね。

ーーメジャーデビューを果たし、今後はどんな展望を持っていますか? 

ササノマリイ:とにかく、たくさんの人に聴いてもらいたいし、伝わってほしい。そのために楽曲の精度をもっともっと上げていきたいですね。あとは、楽しみながら曲を作りたい。自分を見失わず、楽しめて曲を作っていれば、それは聴いてくれた人にも伝わると信じているので。

ーーTVアニメの主題歌を歌ったことで、これまで届かなかった人たちにも曲が届くようになったという実感はありますか?

ササノマリイ:かなりあります。ササノマリイのことを全く知らなかった人が、アニメ経由で熱心に聴いてくれている。それってすごいことだなあって思います。

ーー「多くの人に聴いてほしい」という気持ちがきっと強いんですね。インストからVOCALOIDを導入したのも、そこから自分の声で歌うようになったのも、全ては「より多くの人に届く」ということが動機になっていますし。

ササノマリイ:ああ、そうですね。相変わらずインストも好きなので、今後も作っていきたいと思っています。音楽は様々なスタイルがあって、個人的には全部やりたいんですよ!(笑)。全部含めて表現していけたらいいなと。あとは、僕自身が色んな人たちに影響を受けて曲を作り始めたから、僕の曲を聴いたことで、「自分も曲を作りたい」って思ってくれる人がいたら、それは最高に嬉しいですね。

(取材・文=黒田隆憲)

■リリース情報
ササノマリイ 1st Single『タカラバコ』
発売日:2016年11月30日(水)

※「タカラバコ」フル先行配信中
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【初回生産限定盤(CD+DVD)】
¥1,500(tax out)特殊三方背ケース
<CD>
M1 タカラバコ
M2 透明なコメット
M3 バイバイ
M4 タカラバコ (chill out still out)
M5 タカラバコ instrumental
M6 透明なコメット instrumental
M7 バイバイ instrumental

<DVD>
M1 M(OTHER) MV
M2 Re:verb MV

【期間限定生産盤(アニメ仕様/CD+CD)】
¥1,500(tax out) 特殊三方背ケース
<CD>
M1 タカラバコ
M2 透明なコメット
M3 バイバイ
M4 タカラバコ (chill out still out)
M5 タカラバコ instrumental
M6 透明なコメット instrumental
M7 バイバイ instrumental

<CD2>
タカラバコ ピアノ即興曲
M1 タカラバコ the murmur of piano forte
M2 透明なコメット the murmur of piano forte
M3 バイバイ the murmur of piano forte

【通常盤(CD)】
¥1,250(tax out)
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M1 タカラバコ
M2 透明なコメット
M3 バイバイ
M4 タカラバコ (chill out still out)

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