氷室京介、『LAST GIGS』だけではわからなかった真実 “舞台裏”で何が起こっていた?

氷室京介、6年間の“舞台裏”

 耳の不調から、ドームツアー『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』最終公演をもってライブ活動無期限休止をした氷室京介。決断への経緯を描いたドキュメンタリー作品『DOCUMENT OF KYOSUKE HIMURO “POSTSCRIPT”』が、7月1日より2週間限定で全国ロードショーされる。これまで映し出されることの無かったアーティスト氷室の舞台裏の姿を、180時間に及ぶ密着映像と計6時間以上にわたるロング・インタビューを編集した6年間の記録だ。

 本作は、動画サービス『Hulu』版として『第一部 / to turn 50』、『第二部 / IF YOU WANT』がオンラインで先行公開中であり、『第三部 / decision』は9月上旬より配信を予定されている。いわゆる、劇場版は3部作を115分にまとめた総集編だ。

DOCUMENT OF KYOSUKE HIMURO POSTSCRIPT 予告60s

 映像は、日本テレビの報道番組『NEWS ZERO』で、2010年に50歳を迎えた氷室の生き様を追いかけることを目的に、LAでのスタジオのシーンからスタートする。ディレクターによる私的な視点による、思い入れたっぷりのナレーションから熱量の高さが伝わってくる。そう、本作は春におこなわれた『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』を想定して撮影されたドキュメンタリーでは無い。しかし、偶然は必然となり、結果6年間を追ったドキュメンタリー作品へと結実した。

 きっかけは、氷室が50歳を迎えたタイミングで送られた手紙だったという。

「今回このお話を頂いたときに、最初、ドキュメンタリーの番組で語ることなんか俺無いよって言ってたんですよ。ただ企画書のなかに、孔子の言葉で“五十にして天命を知る”とあったんですね。“五十にして天命なんて全然知らない自分”を見てもらおうかなと思ったんです。常に自分が作ったもの(作品)で毎回落ち込み、こんなもの恥ずかしくて出せないという思いながら、でも出さないわけにいかないわけで。じゃあ、次に立ち上がると、もっと賢くなって、もっと強くなって、次にもっといいものを作ればいいじゃないかって風に毎回ずっときているので。でも毎回できないんですね。それの繰り返しなので。天命を知らないなりに俺は、小さい一歩を踏み出しながらぶつかってるのが、きっと(スクリーンに)映るだろうなって思ったんで、その情けない具合を。でも人生なんてそんなもんですからきっと」(氷室京介 「劇中でのインタビューより」)

 氷室京介は、カリスマであり孤高のロックシンガーといったイメージを持たれている方が多いと思う。しかし、ライブやドキュメンタリーを観ればわかるとおり、氷室京介の魅力は、“世の中にうまく順応出来ない痛みや葛藤”を音楽で表現していることにある。ゆえに、ファンは世代や時代を超えて氷室についてきたのだ。

 50歳の節目の年に50公演以上を行った全国ツアー『KYOSUKE HIMURO TOUR2010-11 "BORDERLESS"』をやり遂げた氷室京介。LA在住ながら日本各地を巡ったファンへの感謝の想い。しかし、今振り返って舞台裏の映像を見ると、不調を感じながら耳を気遣っていた氷室京介の姿が痛ましい……。

 翌年2011年、東日本大震災を挟み、チャリティとして企画された東京ドームで全曲BOØWY 楽曲をセルフカバーする『KYOSUKE HIMURO GIG at TOKYO DOME "We Are Down But Never Give Up!!"』公演の実現、久しぶりに自ら作詞を手掛けた名曲「IF YOU WANT」という楽曲の存在。その後、2014年にも50公演をまわるツアー『25th Anniversary TOUR GREATEST ANTHOLOGY -NAKED-』をおこなっている。当時、思ったのは“少し生き急いでは無いだろうか?”という確信無き不安だった。それは、決断の日を迎えた周南市文化会館での突然の“氷室京介卒業宣言”で現実のものとなる……。

 追加公演となった、横浜スタジアムでの『KYOSUKE HIMURO 25th Anniversary TOUR GREATEST ANTHOLOGY -NAKED- FINAL DESTINATION』2日間は、“もしかしたらこれで最期のライブかもしれない”という緊迫感あるステージとなった。しかし、氷室は初日、リハーサル時に雨に足を取られ転倒し、肋骨を骨折していた。その後、手当をされ楽屋でのスタッフとのトークまでカメラは追いかけている。最大のピンチでありながらも、スタッフに気遣い、前向きな姿勢を忘れない表情。人間、氷室京介を感じられる瞬間だった。

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