kōkuaが語る、音楽シーンの課題と未来「突き破る精神がないと、オリジナリティは生まれない」

kōkua、それぞれが見た音楽シーンの変化

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スガ シカオ

「一番怖いのは、人の心から音楽への興味がなくなること」(スガ シカオ)

――スガさんは97年にデビューされるわけですけれども、今振り返って、90年代の音楽シーンと自分がデビューした後をどんな風に捉えていますか?

スガ:僕としては、一番変わったのはリスナーだと思う。僕らがデビューした時はやっぱり、一般のリスナーが「もっと面白い音楽があるんじゃねえか」ってみんな必死に探してたような感じがあって。もしかしたら今より娯楽が少なかったからかもしれないけど、音楽で人生変わっちゃうみたいな人が周りにもいっぱいいたんですよね。でも、00年代に入ってからはそういう傾向が減っていった気がする。ないわけじゃないんですよ、もちろん今でもあるし、邦楽ロックのシーンとかではそういうことはよく見るんだけど、でもマスが小さくなった気がする。

――CDの売り上げは00年代以降落ち込んでいきますね。

スガ:ミュージシャンの友達といつも話してるんだけど、別にCDが売れなくなったりとか、ミュージシャンが儲からなくなったりとかっていうのは、それは今まで儲かりすぎてただけの話だからしょうがないと思うんだよね。だけど一番怖いのは、人の心から音楽への興味がなくなることだから、それは許してはならないし、そのためには、いっぱい良い曲を書かなきゃいけない。人の心の中から音楽の影響が小さくなっていくのが00年くらいから始まった感じが、僕はすごくしてる。

――武部さんはどうでしょう? 音楽業界の市場の推移でいうと、90年代がセールスの拡大期、逆に00年代以降は縮小期となるわけですけれども。

武部:逆にそれまでの80年代、90年代がおかしかったんだとは思うんだけどね。音楽業界自体、そんなに拡大する必要もなかったんだ。拡大したから、逆に、ろくな才能もないようなやつがデビューしたり、ろくに仕事ができないやつがレコード会社に何百人もいたりした。そういうこと自体が、俺はおかしいと思ってて。今も残ってやり続けてる人たちはちゃんと音楽を愛して、真摯に音楽と向き合ってる人たちばっかりだから。金儲けのためとか、音楽の仕事をやってたらなんとなく格好よさそうだからとか、そういうやつらは逆に淘汰されてよかったと思ってる。

屋敷:僕も同感。

――豪太さんは2000年代に入ってからの日本の音楽の面白さはどんな風に感じられたんでしょうか?

屋敷:さっき言ったような繊細なコード感だったりとか空気感だったり、あとはやっぱり日本語の歌詞が面白いと思ったのはあるね。それに、インターネットも普及したし、コンピュータのレコーディング機器が発達したので、力技じゃなくても、繊細なセンスがある人は素敵な音楽が作れる時代になったなっていう感じがある。

小倉:そういう意味では、パーソナルなところに音楽が戻ってきたっていう感じはあるかもね。今や家でマスタリング済みくらいのクオリティのものが作れるっていうことなので。

武部:勉強しようと思えばYouTubeを見たりしてできるから、欧米の人と日本の人のレベルの違いとかテクニックの違いとかっていうのはなくなってきたと思いますね。

――日本のポップスの歴史を振り返っていくと、洋楽をどう取り入れるか、海外の音楽シーンをキャッチアップして、どうローカライズするかという試みの連続だったと思っています。ただ、海外ではなく日本の音楽にルーツを持つ人たちが増えたのが00年代以降とも思っていて。この辺は武部さんはどういう風に感じられていますか?

武部:まあ、戦後の音楽自体がコンプレックスから始まったわけじゃないですか。ジャズとかカントリーとか、そういう欧米の文化が入ってきて、コンプレックスの積み重ねだった。でも、だんだんそこからオリジナリティみたいなものが生まれてきたから、自然にアメリカやイギリスの影響を受けて、でも日本人っていう根っこにあるものがブレずに出せる人っていうのが、今後も出てくるんじゃないかなと思ってるんですよね。そういう意味ではSEKAI NO OWARIが軸足をワールドワイドにしてるのにはすごく期待してるし、例えばBABYMETALにしても、きっとすごいエネルギーを注いでやってるんだと思うの。そういう、突き破る精神みたいなのがないとダメじゃないかな。

「自分のコアをしっかり持った人が世界にむけて出ていく」(屋敷豪太)

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屋敷豪太

――日本の名曲を歌い継ごうとか、歌謡曲やJ-POPのカバーに焦点が当たるようになったのも00年代以降の傾向だと思います。

屋敷:世界的にそうなんだと僕は思うんですよ。イタリアとかなんかも特にそう。どの国も、どんどんドメスティックになってる。そうすることで自分たちを知って、さっきの武部さんの話みたいに、自分のコアをしっかり持った人が世界にむけて出ていくという。だけど、やっぱり日本人は日本語だし、イタリア人はイタリア語だから。

武部:そこはハンディだよね。

屋敷:そこで出ていける可能性とか広まる幅は違うと思うんですけど。でも、よりもっと、ルーツというか自分のオリジンをもっと知っていくようになってきてるんじゃないかっていう風に思いますね。

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