kōkuaが語る、音楽シーンの課題と未来「突き破る精神がないと、オリジナリティは生まれない」

kōkua、それぞれが見た音楽シーンの変化

「個人的にはブームのようなものには影響は受けない」(小倉博和)

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小倉博和

――ここまで90年代、そして00年代の話をお伺いしてきたんですけれど、2010年代についてはどうでしょうか。スガさんはどういう時代の空気を感じますか?

スガ:うーん……自分としては、本質を持って発信してるものと本質を持たないで発信してるものとが、もう区別なくぐちゃぐちゃになってる感じはあるかな。本質があろうがなかろうが値段は同じだし、みたいな。そういう風になってきたのが10年代だと思うんですよね。たとえば、EDMって僕はすごくそういう音楽だと思っていて。エレクトロには意思があると思う。テクノにも意思があると思う。でも、EDMって総称されたものの中には、探しても探しても僕は本質が見えないんですよ。好きだから聴くんだけど、自分でやってみようと思ったら、30分くらいでそれっぽいものができちゃう。そうやって俺が作ったEDMには何の本質もないんですよ。コンピュータにフォーマットがあって、それを組み合わせて、スネアを倍打ちにしたら「あ、できた」みたいな。そういう音楽も、身を削って作る音楽も、一緒に扱われちゃう時代になっちゃってるなっていうのは、自分でもすごく思うかな。

――なるほど。今スガさんがおっしゃったことに関して、武部さんはどういう風に考えますか?

武部:すごく難しいよね、こういうテーマは。

スガ:本質がなきゃいけないってわけでもないんだと思うし。

小倉:そう。そうなんですよ。でも、スガくんの話って、要は「EDMをやってみたけどつまんなかった」ってことだよね。

スガ:いや、でも、楽しいんだよ! 酒飲みながらクラブに行ったり、フェスでEDMが流れてたら「うわ~!」ってなるし。好きなんだけど――。

小倉:作ってみたら、あっけなくできちゃった、と。

スガ:そうなんだよ。だから、ガワなんだよね。

――なるほど。豪太さんはどう思いますか?

屋敷:僕は、例えば絵とか陶芸とか、そういうのと似てるような気もするんだよね。絵でも、コンピュータ使ってプリントアウトしたら何でもできちゃうし、コラージュもいっぱい作れちゃうし、ポップアートみたいなこともできる。でも、今、その一方で(伊藤)若冲がすごく人気があるじゃないですか。やっぱり本物を見る、それを見て感動を受けるっていうことは変わらずにある。僕らはそれを目指してるわけだし、そういうのが好きな人が聴けばいいと思うし。だから、やっぱり自分が何を作りたいかが、もっと問われるようになってきている。

小倉:やっぱり、自分の身体に刻んでいくみたいに獲得したものからできてくるものと、そうじゃないものっていうのは、やっぱり違う快感があるのでね。

スガ:そうなんだよね。違う快感だね。

小倉:やっぱり、習得する喜びっていうのは本当にあるから。山は高ければ高いほど登った時に気持ちいいっていうのと同じようなね(笑)。ミュージシャンとしては、個人的にはブームのようなものには影響は受けないところはありますね。若冲なんか、自分が死んで1000年後にわかるやつにはわかるだろうって言ってたわけだから。

スガ:はははは(笑)。かっこよすぎる。

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――では、次を最後の質問にさせてください。この先の音楽シーンについて、「こうなっていったらもっと面白い」という提言はありますでしょうか?

武部:うーん、これも難しいテーマだよね。

根岸:うちの姪っ子を見ていても、携帯ですら音楽を聴かない若い子が増えているんですよ。音楽アプリを削除しちゃう。だから、僕としては聴かないでいる人が多すぎるんで、聴いてくださいってのは思いますね。

屋敷:消したりするのってさ、それはやっぱり音が良くないからなんじゃないの?

根岸:携帯の容量がすぐにいっぱいになっちゃうんだって。でも、ゲームは削れない、LINEも削れない、写真も残しておきたい、そうするとまず音楽から消すの。今の子たちはみんなそうだって、うちの姪っ子が言ってました。

小倉:でも、ギターは売れてるんだよね。

武部:今の時代、いわゆるYouTuberみたいな人がいるじゃない。YouTubeにギターがものすごく速く弾ける動画を上げたりさ。でも、こないだもとあるアメリカのギタリストと話してたんだけど、ベッドルームでメトロノームを相手にギターを演奏しても絶対にうまくならないんですよ。それを365日やるよりも、1日人前でプレイすることの方が得ることが大きい、って彼は言ったわけ。それはなぜかって言うと、人前で演奏することで、自分が思ったようなプレイができるかどうかにも気付くし、オーディエンスの反応にも気付く。音楽はそういうものだと思うの。自己満足な音楽じゃダメだと思っていて。テクニカルなもので勝負しても、人には届かない。伝えようっていう思いをより強くみんなが思ってないと、人は動かないんじゃないかと思う。

――スガさんはどうでしょう?

スガ:僕もそう思いますね。何か、根源的な、プリミティブな衝動みたいなものにより強く従っていかないと、自分の音楽はダメだなとは思ってるので。武部さんの意見に近いかな。

武部:まあ、要はやりたいことやろうよって感じですよね(笑)。

小倉:もともとそういうもんだもんね、音楽って(笑)。

(取材・文=柴那典)

■リリース情報
『Progress』
発売:2016年6月1日
価格:¥3,000(税抜)
〈収録曲〉
1.夢のゴール
(NHK総合「プロフェッショナル 仕事の流儀」挿入歌/田島ルーフィングCMイメージソング)
作詞・作曲:スガ シカオ 編曲:武部聡志、小倉博和
2.幼虫と抜け殻
作詞・作曲:スガ シカオ 編曲:kōkua
3.砂時計
作詞・作曲:スガ シカオ 編曲:kōkua
4.1995
作詞:スガ シカオ 作曲・編曲:屋敷豪太
5.BEATOPIA
作曲・編曲:武部聡志
6.Blue
作詞・作曲:スガ シカオ 編曲:kōkua
7.Stars
原作詞・作曲:MICK HUCKNALL 編曲:kōkua 日本語詞:スガ シカオ
8.道程
作詞・作曲・編曲:小倉博和
9.kōkua's talk 2
作詞:スガ シカオ 作曲・編曲:武部聡志
10.黒い靴
(NHK BS プレミアムよるドラマ「ふれなばおちん」主題歌)
作詞:スガ シカオ 作曲・編曲:根岸孝旨
11.私たちの望むものは
作詞・作曲:岡林信康 編曲:kōkua
12.Progress(NHK総合「プロフェッショナル 仕事の流儀」主題歌)
作詞・作曲:スガ シカオ 編曲:武部聡志、小倉博和

■ツアー情報
kōkua Tour 2016『Progress』
6月4日(土)福岡・福岡国際会議場メインホール
6月14日(火)名古屋 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
6月17日(金)大阪・NHK大阪ホール
6月24日(金)東京・NHKホール
http://www.sugashikao.jp/lp/kokua2016/

■kōkua special website
http://www.jvcmusic.co.jp/kokua/

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