嵐『I seek / Daylight』に見る、今年のサウンドの方向性 “嵐らしさ”はどこに向かう?

参考:2016年05月16日~2016年05月22日のCDシングル週間ランキング(2016年05月30日付)

 今週のシングルランキングは、嵐のシングル『I seek / Daylight』が1位。前々作『愛を叫べ』(2015年9月)の46.3万枚、前作『復活LOVE』(2016年2月)の48.5万枚を大きく上回る73.8万枚という初週セールスを成し遂げた。

realsound-arashith_.jpg
(C)タナカケンイチ

 というわけで、今回の記事ではこの両A面シングルの「I seek」「Daylight」について分析していきたい。というのも、「復活LOVE」の路線の延長線上にこの2曲を位置づけることによって、2016年の嵐が目指すサウンドの方向性が浮かび上がってくるのである。

 山下達郎が作曲・編曲を、竹内まりやが作詞を手掛けた前作シングル曲「復活LOVE」については、当サイトにて「嵐というグループにとって、この曲が大きなターニングポイントとなることは間違いないだろう」と書いた。(参考:嵐「復活LOVE」はなぜ画期的か? グループの新代表曲を徹底分析

 まずは、その直感が間違っていないと感じさせてくれるのが、「I seek」だ。

 大野智主演ドラマ『世界一難しい恋』(日本テレビ系)の主題歌であるこの曲。イントロでは駆け上がるストリングス、小気味いいホーンセクションが耳をひく。「♪パパラパラパラ~」というユニゾンのコーラスがそこに絡む。

 サウンドも生音が中心。軽快なビートと躍動的なベースラインがグルーヴを作り出し、洒脱なワウ・ギター、豪華なストリングスとホーンセクションがそれを彩る。間奏も聴かせどころになっている。70sのファンク/ソウルを今の時代にアップデートさせたような「ディスコ歌謡」のテイストだ。

 楽曲を手掛けているのはAKJとASILのコンビ。これまでにもシングル『青空の下、キミのとなり』(2015年5月)の初回盤カップリング「Dandelion」やアルバム『Japonism』(2015年10月)収録の「miyabi-night」を手掛けてきたクリエイターである。

 山下達郎・竹内まりやという大御所ミュージシャンを作家に迎えた「復活LOVE」に比べると、ほぼ専属に近いスタンスの制作陣を配することでサウンド面でも“嵐らしさ”を徹底する意志を感じられる。と同時に、この曲は「復活LOVE」のアーバン・ソウルな曲調の延長線上に位置づけることもできる。

 一方、松本潤主演ドラマ『99.9 -刑事専門弁護士-』(TBS系)の主題歌「Daylight」は、爽やかなピアノが印象的なメロウなミドル・バラード。ゆったりとしたビートの上で5人がメロウな旋律を歌う。その“洗練された大人の色気”のようなものに焦点を当てた仕上がりとなっている。サウンドで印象に残るのは、ところどころに配されたエレクトロニックなフレーズ。それがスタイリッシュな感触をもたらしている。

 作曲にクレジットされているのはSimon Janlöv(サイモン・ヤンラブ)とwonder note。編曲は佐々木博史が手掛けている。サイモン・ヤンラブはストックホルム在住、スウェーデン出身の若きプロデューサー。これまでKAT-TUNなどに曲提供しているが、嵐のシングル表題曲にはこれが初採用となる。

 「誰も知らない」(2014年5月シングル曲)や「Breathless」(2013年3月シングル曲)など、これまでも嵐の楽曲にはスウェーデンのクリエイターを起用しヨーロピアン・ダンス・ポップのテイストを持ったものが多くある。そのあたりにも通じるサウンドと言っていい。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「チャート一刀両断!」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる