THE COLLECTORSが体現する“MOD&POP”なロックンロール 武道館のバトン渡った30周年

THE COLLECTORS、30周年記念公演レポ

 THE COLLECTORSが2017年3月1日、初の日本武道館公演を開催する。これは4月16日に日比谷野外音楽堂で行われたワンマンライブ『THE COLLECTORS 30th Anniversary“EPISODE I”』で発表されたもの。バンド結成30周年を迎えたTHE COLLECTORSの活動は、今年から来年にかけて大きなピークを生み出すことになりそうだ。

 30周年のキックオフとなる野音ライブからも現在の彼らの充実ぶりが強く伝わってきた。

20160419-ct6.jpg
加藤ひさし(Vo.)

 ライブは結成当初からの人気曲「NICK! NICK! NICK!」でスタート。「虹色サーカス団」(1988年のアルバム『虹色サーカス団』収録)、「GIFT」(1997年のアルバム『HERE TODAY』収録)、「たよれる男」(2007年のアルバム『東京虫BUGS』収録)など30年のキャリアを網羅するようなステージが繰り広げられる。

 ザ・フー、ザ・ジャム、ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・ビートルズをはじめとするUKのロックバンドの影響を色濃く反映させながら、洗練とダイナミズムを共存させたメロディ、男気とユーモアと批評性を交えた歌詞、加藤ひさし(Vo.)、古市コータロー(G.)という華のあるフロントマンふたりの存在感によって、長くファンに支持されてきたTHE COLLECTORS。その魅力は30年が経ったいまもまったく褪せていない。2014年に正式加入した山森“JEFF”正之(B.)と阿部耕作(Dr.)のリズムセクションもタイトなグルーヴで“2016年のTHE COLLECTORS”のボトムを支えていた。

20160419-ct9.jpg
古市コータロー(G.)

「30年やってきて、(チケット代は)やっと3000円だよ? ローリング・ストーンズと同じようなご料金をいただくには、どれだけ生きればいいのよ? よし、これからはチケット代を上げよう。安いコレクターズが見れるのは今日が最後だよ」という30周年のアニバーサリーを自ら笑い飛ばすようなMCのあとも、新旧の名曲が次々と披露される。作詞家としての加藤の才能がさらに奔放に発揮された最新作「ガリレオ・ガリレイ」「始まりの終わり」「深海魚」、モータウン直系のリズムを軸にしたダンスチューン「Stay Cool! Stay Hip! Stay Young!」(1999年のアルバム『BEAT SYMPHONIC』収録)、アニメ「おじゃる丸」のEDテーマとしても話題を集めた「Da!Da!!Da!!!」(2014年のアルバム『鳴り止まないラブソング』収録)。30年に渡り優れたロックンロール・ナンバーを生み出し続ける加藤のソングライティング・センス、そして、スタイリッシュかつエッジーなバンドの魅力をダイレクトに体感できる場面が続く。

20160419-ct7.jpg
山森“JEFF”正之(B.)

 「30年続けて来れたのは、もちろん第1に俺の才能だけど。第2にいいメンバーに恵まれて、そして第3にいいファンに囲まれてきたこと」という加藤のMCを挟み、ライブは後半へ。「さわおくん(the pillowsの山中さわお)がいちばん好きだって言ってくれた曲です」(加藤)という「僕の時間機械」(1987年のアルバム『僕はコレクター』収録)、そして傑作アルバム『UFO CLUV』(1993年)に収められた名曲「世界を止めて」。前半は声が出てないように感じた加藤のボーカルもぐいぐいと調子を上げ、希代のロックシンガーとしてのパワーをダイレクトに見せつける(ユニオンジャック柄のスーツがこんなに似合うボーカリスト、他に絶対いません)。ステージ後方に掲げられた、電飾付きのロゴもカッコいい!

20160419-ct10.jpg
阿部耕作(Dr.)
20160419-ct11.jpg

 

 さらに“タフでいようぜ”というメッセージが突き刺さる「TOUGH(all the boys gotta be tough)」(『HERE TODAY』収録)、〈君のために光ろう/Oh! My Love〉というロマンティックなフレーズが高らかに響いた「百億のキッスと千億の誓い」(『BEAT SYMPHONIC』収録)を披露。圧巻は本編ラストの最新アルバムのリードトラック「Tシャツレボリューション」だった。〈シャツを着替えて 世界を変えろ!〉〈世界を変えれる気がしてる〉というフレーズが響き渡り、幅広い年齢層のオーディエンスが大合唱するシーンは、このバンドの強烈な現役感に直結していたと思う。

20160419-ct5.jpg

 

 武道館ライブの告知の方法も“粋”だった。アンコールの声に応えて登場した加藤は「Tシャツレボリューション」のサビのコーラスを歌い、「コータローくん、その“ザ・コレクターズ”T(シャツ)って初めて見たんだけど。なんだか、背中が気になるんだけど…」と声をかける。古市が後ろを向くと、背中には「LIVE AT 武道館」の文字が。さらに加藤が「見えますか、みなさん。30周年、ここじゃ終われないよ。来年3月1日水曜日、つまりMARCH。“MARCH OF THE MODS”だよ。武道館でやらせてくれ!」と叫ぶと、客席からは大きな歓声と拍手が巻き起こった。仰々しい演出を施すこともなく、フザけてお笑いに持っていくのでもなく、「Tシャツレボリューション」のメッセージと絡めながら、さりげなくクールに伝えるところもじつに彼ららしい。

 「愛ある世界」(『UFO CLUV』収録)、「CHEWING GUM」(1989年のアルバム『ぼくを苦悩させるさまざまな怪物たち』収録/この日ももちろん、ファンが大量の“リグレイガム”をステージに投げ込んでました)、そして「僕はコレクター」(『僕はコレクター』収録)でライブは終了。結成以来、一度も止まることなくMOD&POPなロックンロールを体現し続けるTHE COLLECTORS。その現在地をリアルに示す鮮烈なライブだった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる