映像音楽における「転調」は、ポップスの「転調」とどう違う? 人気アニメ『Free!』などを例に解説

映像音楽における「転調」が効果的に使われた人気アニメーション

 実際に映像音楽における「転調」の手法が用いられた作品の具体的な例として、2013年第1期放送、2014年第2期放送、2015年アニメーション映画化と話題となった、高校水泳部を描いた青春アニメ『Free!』を例に説明したい。このアニメーションの第1期より最終話の一場面で映像音楽における「転調」の手法が用いられている。

 メインキャラクターの一人である松岡凛が、大会でのリレーメンバーから外され、フリー競技でも結果が出せずに自分への苛立ちを募らせた結果、本作の主人公である七瀬遙に感情をぶつけてしまい取っ組み合いになるが、「For the Team」と地面に掘り記された文字を見たことでクールダウンするという場面。感情をぶつけているシーンでは、比較的アップテンポの緊迫した楽曲が流れているが、感情のおさまりと共に穏やかな曲想に変化する。この曲想の変わり目が、映像音楽における「転調」であり、アニメ内の「緊迫感」と「友情の確認」といった場面を自然な流れで表現した例だ。

 今回の映像音楽における「転調」は、「楽曲を終わらせることによる終止感を出さずに、同一の楽曲の中で映像のシーンの変化に合わせて表現を変えられる」という利点があり、数多くの映像作品で用いられている。今回の記事を参考に、劇伴の表現にも興味を持っていただけたら幸いだ。

■高野裕也
作曲家、編曲家。東京音楽大学卒業。
「映像音楽」「広告音楽」の作曲におけるプロフェッショナル。
これまでに様々な作品に携わるほか、各種メディアでも特集が組まれる。
公式HP

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