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『clammbon 2016 mini album 会場限定販売ツアー』東京公演レポート

クラムボンが“産地直売”ライブで示した、音楽ビジネスの新たな可能性

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黒田隆憲
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 「いちアーティスト、バンドが今後向き合うべき音楽商業の未来、その可能性を僕らなりにしっかりプレゼンテーションしていく過程はかなり斬新に感じるかもしれません」

 メンバーのミト(Ba./Gt./Pro./Key.)が、自らのTwitterで事前にそうアナウンスしたとおり、2月27日に渋谷クラブクアトロにておこなわれた『clammbon 2016 mini album 会場限定販売ツアー』は、かなりイレギュラーな内容となった。

 身動きを取るのもやっとなほど満員御礼のクアトロには、数台のカメラもセッティングされている。今日の様子はニコ生配信もされることが決まっており、何かクラムボンが「新しいこと」をやろうとしていて、それに対するオーディエンスの期待で、場内は開演前から熱のこもった空気に包まれていた。

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伊藤大助(Dr.)

 定刻の19時を少し過ぎたところで3人がステージに登場。原田郁子(Vo./Key.)の歯切れの良いピアノが刻まれると、『Musical』(2007年リリース)収録の「GOOD TIME MUSIC」からライブはスタートした。6弦ベースを自在に操るミトと、複雑なシンコペーションを畳み掛ける伊藤大助(Dr.)が、心地よいグルーヴを作り出し、原田の伸びやかな歌声がフロアの隅々にまでしみわたっていく。この曲の間奏ブレイクでは、自然発生的にハンドクラップが沸き起こり、あっという間にオーディエンスとステージが一体化した。2015年10月の武道館ワンマンでは、菅野よう子やMOROHA、徳澤青弦に室屋ストリングスと、豪華ゲストを迎えて夢見心地な一夜を提供してくれたクラムボンだが、会場やセットの規模がどう変わろうが、ゲストがいようがいまいが、何一つ変わることなくハイクオリティなパフォーマンスを届けられるのは、彼らの演奏力の高さはもとより、一度でも目にしたら一瞬で魅了されてしまう、気さくで飾らぬ3人のキャラクターによるところも大きいだろう。

 続いてファースト・アルバム『JP』(1999年リリース)から、「はなれ ばなれ」をプレイ。1999年にクラムボンが初のクアトロワンマンをやったときに、ステージでベースを破壊したミトが、テイトウワと高野寛にたしなめられた貴重(?)なエピソードがMCで語られると、場内からは大きな笑いが起きた。ガットギターに持ち替え、『id』(02年)から名曲「adolescence」を披露した後、本日のメイントピックの一つであるミトの“プレゼンテーション”タイムとなった。

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ミト(Ba./Gt./Pro./Key.)。

 2015年3月に通算9枚目となるアルバム『triology』をリリースし、それを最後に所属レコード会社であるコロムビアを離れたクラムボン。今回のツアーにて会場限定販売される『モメント e.p.』が2015年のシングル『Slight Slight』と同様に、彼らの所属事務所tropicalからの発売となった経緯を、実に20分(!)にもわたってミトの口から語られたのである。「とにかく、いい楽曲を作り、考えられる限り最高のプロダクションで音源化し、自分たちの納得しうるクオリティの装丁でファンに届けたい」、「そのためには既存のリリース形態を、もう一度見直すべきなのではないか」と。それは例えば、制作費を全て自分たちで持つことによって、原盤権も自ら管理する。あるいは、メンバーそれぞれが「メディア」となり、SNSや個々の活動などでバンドのプロモーションをおこない、宣伝費を抑える。さらには、ライブ会場でパッケージを「手売り」することにより、流通コストを省く(原田はこれを、「産地直売」とネーミングしていた)。「そのためにはメジャーを離れ、インディへと移籍する必要があった」と、具体的な数字や的確な例を挙げながら、細かく説明していったのである。

「僕らは別に、金儲けがしたいわけじゃないんです」と、ミトは笑う。

「例えばここで使っているケーブル1本から、アウトボードに至るまで、僕らはものすごくこだわっている。そうすることで、最高の状態で自分たちの楽曲をみなさんに届けたいんです」

 そんな長い長いMCのあと、実際に『モメント e.p.』からの楽曲「希節」、「フィラメント」そして「Flight!」、本人たちの演奏によって、最高の音響で披露される。これ以上のプレゼンテーションがあるだろうか。今回のミニアルバム『モメント e.p.』は、タグ付き特殊紙ジャケット仕様となっており、ドローイング・アートディレクションは原田が担当、製本会社の篠原紙工との試行錯誤によって作られている。ここまで凝りに凝った作品は、既存のやり方で作るのは確かに難しかっただろう。その実物を見せながらの“実演”は、まさに“産地直売”そのものだった。

     
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