『おそ松さん』エンディングテーマは広義のシティ・ポップ? 話題の楽曲を音楽的に検証

 この「SIX SAME FACES 〜今夜は最高!!!!!!〜」を聴いて最初に連想したのは、AKB48の2010年の「マジジョテッペンブルース」でした。ドラマ『マジすか学園』から生まれた「マジジョテッペンブルース」は、サビ以外はほぼ歌がなく、ドラマのキャラクターのセリフをカットアップして構成したかのような楽曲でした。キャラクターの個性を押しだしていた作品で、「SIX SAME FACES 〜今夜は最高!!!!!!〜」もまたサビ以外はほぼセリフ。ともに「キャラクターソング」の機能性を最大限に活用している楽曲です。

 2010年代も半ばに、イヤミがメイン・ヴォーカリストの楽曲を聴くとは思いませんでしたが、歌詞の「SHAKE!」とイヤミの決めゼリフである「シェー!」が掛けられており、実はイヤミありきの楽曲でもあります。

 CD化された『SIX SAME FACES 〜今夜は最高!!!!!!〜』には同曲が10トラックも収録されていて、40分ほど聴き続けて気が変になるかと思いました。オリジナル・ヴァージョンとインストルメンタルに加えて、6つ子それぞれのヴァージョンのほか、 「イヤミ ver.」、さらには「テクノボーイズ ver」も収録されています。「テクノボーイズ ver」、つまりTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDによるヴァージョンでは、パーカッションの音が前面に出ると同時にテクノポップ色が増していて、もっとも1980年代ディスコ色が強いサウンドになっています。

 それにしても、これだけ「シティ・ポップ」という言葉が拡大解釈されて濫用されている現状では、この「SIX SAME FACES 〜今夜は最高!!!!!!〜」をシティ・ポップと銘打っても何の問題もないのではないでしょうか。「SIX SAME FACES 〜今夜は最高!!!!!!〜」は、そのぐらい洗練されたサウンド・プロダクションとコーラス・ワークによる楽曲です。1960年代にルーツを持つアニメから生まれた、まさかのシティ・ポップ。「SIX SAME FACES 〜今夜は最高!!!!!!〜」にはそんな驚きもありました。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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