>  >  > SANABAGUN.『メジャー』リリースパーティレポ

SANABAGUN.はメジャーシーンでの戦い方を刷新する 三宅正一が“覚悟のライブ”をレポート

関連タグ
HIPHOP
JAZZ
ROCK
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 場内が暗転すると同時に、オフマイクでステージ袖から8人の男たちの号砲としての、掛け声が聞こえる。

 「SANABAGUN.だ、味わえー!」

 12月16日、渋谷CLUB QUATTRO。SANABAGUN.が、メジャーデビュー後初ワンマンにして、10月21日にリリースしたメジャーデビューアルバム『メジャー』のリリースパーティを開催した。同作に収録されている「渋谷ジョーク」という楽曲をなぞったタイトルを冠した今回のワンマンライブは、前売りのチケット代を“サナバ価格”の378円、10枚限定で販売され即完したという当日券はその10倍の3,780円に設定。本気と諧謔を粋に使い分け、不敵な遊び心を見せるサービス精神でリスナーを射抜くSANABAGUN.の記念すべき舞台は、超満員のオーディエンスを迎えて、完璧に整っていた。

 結成以来、そこが渋谷のど真ん中だろうが、ライブハウスだろうが、クラブだろうが、マイクと楽器を武器に携えた平成生まれのヒップホップチームが2015年にストリートを抜け出し、大衆に立ち向かう覚悟と準備が決まったということ。その事実に対して覚える得がたい高揚感が、恒例の挨拶代わりの1曲目「SANABAGUN.Theme」を皮切りに、「カネー」、「Hsu What」、「M.S」の流れで、鮮烈な輪郭を結んでフロアに広がっていく。偉大なるルーツミュージックとしてのジャズを愛し、ヒップホップが内包する自由な創造性と真摯な暴力性を、盤石のグルーヴとパフォーマンスをもって体現することで、現行の日本の音楽シーンでは異端でありながら、独走状態の王道を突き進もうとするSANABAGUN.の信念。それが序盤からむき出しになることで、シビれるようなクールネスから派生する緊張感に酔いしれる。

 そう、これだよ、これ。もう何度も彼らのライブを観ているのに毎回初見のような感動が走る。どこかでずっとこういうバンドの登場を待ち望んでいた、という快哉を叫びたくなるような思いを会場全体で共有する喜び。ジャズボーカリストとしての出自を持つ高岩遼(Vo)と硬派なラッパーとして生きてきた岩間俊樹(MC)という鉄壁のフロントマン2人が前線を担い、その2人に引けをとらない求心力を誇る小杉隼人(Ba)、隅垣元佐(Gt)、澤村一平(Dr)、櫻打泰平(Key)、髙橋紘一(Tp)、谷本大河(Sax)という演奏陣が音の快楽を担保する。メンバー全員が主役としての矜持を掲げ、団結する。SANABAGUN.はそうやってストリートから成り上がってきた。事実、終盤の「居酒屋JAZZ」はストリートから披露されてきた楽曲で、この舞台でも大きな盛り上がりを見せた。もちろん、自分たちが立つべきフィールドが、まだまだこんなもんじゃないということは、8人のメンバーが誰よりも感じている。「NFLのハーフタイムショーに出たい」という発言は、伊達や酔狂で口にしているのではない。こいつらの本気は、ライブを一発でも観てもらえれば、誰にでも感じてもらえると思う。

151230_sa_2.jpeg

 極上の緩和を用意するのも、SANABAGUN.のやり方だ。「J・S・P」で緊張感を解放すると、続いて『メジャー』のリード曲である「人間」を披露すると思いきや、途中で警察官の格好をした2人の男がステージに乱入。高岩と岩間を取り押さえ、バックステージに連行するというコントが繰り広げられる。これは、ストリート時代によくあった光景を自ら嘲弄するもので、メジャー初ワンマンでこのネタをやることに大きな意味があった。その後、このやり取りがもう一度あり、本編ラストにためにためて放たれた「人間」はカタルシスの塊のように響いた。

151230_sa_3.jpeg

 そして、アンコールの1曲目にもってきたのは、スーツからグレーのSANABAGUN.フーディーに着替えたメンバーが、全員でマイクリレーする「もう実家帰りなよ」。メジャーデビュー契約発表の直前、ストリートを含むライブ会場限定でリリースしたアルバム『マイナー』(通称:『緑盤』)のラストに収録されている楽曲だ。この曲のフックのリリックは、こうだ。

〈メジャーアーティスト 貧乏? 当たりだね ミーハー好きノリの当たり種 業界に躍らされ回れよさぁ もう実家帰りなよ メジャーon my mind〉

 アンコールでは新曲の「板ガムーヴメント」も披露し、2016年4月には2ndアルバムをリリースすることも発表しているSANABAGUN.。彼らは必ずやメジャーシーンでの戦い方をさらに刷新し、革新する。

151230_sa_4.jpeg

(文=三宅正一/写真=小見山 峻)

■セットリスト
1.SANABAGUN.Theme
2.カネー
3.Hsu What
4.M.S
5.J・S・P
6.胆菅処刑
7.デパ地下
8.在日日本人
9.まさに今、この瞬間。
10.大渋滞
11.居酒屋JAZZ
12.HIS MASTERS VOICE
13.人間

【encore】
14.もう実家帰りなよ
15.板ガムーヴメント
16.WARNING

【double encore】
17.まずは「墓」。

■オフィシャルサイト
http://sanabagun.jp/

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版