吉澤嘉代子が明かす、楽曲の主人公の描き方「どのカードをいつ切るか。それは時期の問題」

吉澤嘉代子が明かす、描く物語と自分の距離

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「自分のメロディーをもっと広げたい」

ーー「綺麗」はORESAMAの小島英也くんとの共作ですが、実際の制作はスムーズに進みましたか?

吉澤:私は〈綺麗 綺麗〉ってところをサビとして書いたんですけど、プラスもう一個サビがあったらいいんじゃないかって提案をもらったんです。それでチャレンジはしてみたんですけど、でも私にはどうしても〈綺麗 綺麗〉の部分がサビとしか思えなくて、小島くんに相談して今の形に。最初は人と一緒に作ること自体に抵抗があったんですけど、小島くんのメロディーは自分にはないものだから、お願いしてよかったなって、レコーディングが終わってからそう思いました。

ーー人と一緒に曲を作ることは、途中で言っていたように「一歩踏み出した感」の演出であり、自分の中でのチャレンジだったわけですか?

吉澤:そうですね。自分のメロディーをもっと広げたいっていうのがあって、人の曲を自分の曲として歌うことによって、身につく感覚があるなって。前は歌詞とかも絶対自分のじゃないと嫌だと思ってたんですけど、今回一緒に曲を作ったことで、人から歌詞を提供してもらうのもいいなって思えました。松本隆さんを抜きにすると、私は今まで歌手の人の歌詞よりも、短歌とか小説からの影響が強かったので、詩人の文月悠光さんとか、同世代の人と一緒に作るのも面白そうだなって。

ーー松本隆さんといえば、「綺麗」はアレンジも含めて80年代のアイドル歌謡っぽい雰囲気がありますよね。それこそ、松本隆さんとユーミンのコンビによる松田聖子さんの曲みたいな。そういう意識ってありましたか?

吉澤:意識しましたね。パラレルワールドというか、時間軸のない世界をどう言葉で表現しようかと思ったときに、松本隆さんの〈映画色の街〉(「瞳はダイアモンド」)とか〈春色の汽車〉(「赤いスイートピー」)とか、はっきりと断定できない色で、その世界の色合いを表すってことを私もやりたいと思って、それで〈硝子色の時間〉っていう言葉で、時間軸のない世界、スノードームの中みたいな、そういうのを表現してみました。

ーー「必殺サイボーグ」はHALIFANIEの作曲で、曲を提供してもらうこと自体初めてですよね?

吉澤:初めてです。HALIFANIEはドラマーの張替(智広)さんと小貫早智子さんのユニットなんですけど、ハリーさんは前からドラムでお世話になっていて、この曲はもともと“殺し屋サイボーグ”っていうタイトルで寝かせてたんですけど、ハリーさんからいくつか曲を聴かせてもらったときに、今回のを使わせてもらった感じです。これも自分では作らないタイプの曲だと思います。

ーー星新一さんの「ボッコちゃん」から着想を得た曲だそうですが、星新一さんのショートショートと吉澤さんの歌詞は確かに通じるものがありますよね。日常から妄想の飛躍具合というか。

吉澤:星新一さんは子供の頃から好きで、何で好きなのかなって思ったら、人がよく死ぬんですけど、悲しい落としどころとして利用してないところが好きなんだなって思って。私、人が亡くなる物語があんまり好きじゃないんですよね。死に頼ってる感じが気持ち悪いというか、それを物語の大きな起点みたいに使うのが好きじゃないんですけど、星新一さんはそれを記号として使ってる感じがして、そこが好きなんだと思います。

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