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シンプリー・レッド新作『ビッグ・ラヴ』インタビュー

シンプリー・レッドのギタリスト鈴木賢司が語る、在英27年のキャリアと音楽シーンの変化

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 全世界でのアルバム・セールス合計は6000万枚以上。「ホールディング・バック・ザ・イヤーズ」(‘86年)、「二人の絆」(‘89年)で全米NO.1を獲得し、全英トップ40入りしたシングルは40曲以上ーー輝かしい実績を持つスーパー・バンド、シンプリー・レッドが再結成を果たし、約8年ぶりとなるニュー・アルバム『ビッグ・ラヴ』をリリースした。このバンドの特徴である“ブルー・アイド・ソウル”のテイストがストレートに反映されたシングル「シャイン・オン」を含む本作は、この秋からスタートする大規模なワールドツアーとともにすでに世界中で大きな反響を集めている。

 今回、‘98年からシンプリー・レッドのギタリストをつとめる鈴木賢司のインタビューが実現。アルバム『ビッグ・ラヴ』の制作エピソード、バンドの中心であるミック・ハックネルとの関わりについて語ってもらった。

 また、彼のギタリストとしてのキャリアにもフォーカス。10代の頃から“天才ギター少年”と呼ばれ、‘83年にアルバム『ELECTRIC GUITAR』でデビュー。‘88年、共演したジャック・ブルースの強い勧めにより活動の場をロンドンに移した鈴木。以降、約30年に渡ってイギリスで活躍してきた彼の言葉は、多様化、グローバル化が進む現在のシーン、そして、これから先の音楽の在り方に対する刺激的なヒントに満ちている。(森朋之)

「シンプリー・レッドのギタリストと言えば、どこでも通じる」

ーーまずはシンプリー・レッドの新作『ビッグ・ラヴ』について聞かせてください。シンプリー・レッドは2010年に解散しましたが、鈴木さんはミック・ハックネルのソロ・プロジェクトにも引き続き参加していて。このタイミングでシンプリー・レッドが活動を再開したのは、どうしてなんですか?

鈴木賢司(以下、鈴木):ミックのデビュー30周年ということで、「お祝いとしてシンプリー・レッドのツアーをやろう」という話が最初にあったんです。それに合わせてオリジナル・アルバムを作ることになり、後期のバンド・メンバーが集まったんですよね。ミックは『アメリカン・ソウル』というソロ作品を2012年にリリースしたのですが、それは古いR&Bのカバーが中心だったんです。今回は久しぶりのオリジナル作品なので、やっぱり気分は違いましたね。リスナーのみなさんが思っているシンプリー・レッドの(イメージに近い)演奏を心がけていたので。

ーー確かに『ビッグ・ラヴ』はシンプリー・レッドの王道とも言える作品だと思います。ドラマティックでスウィートなメロディを軸にしたブルー・アイド・ソウルがたっぷり楽しめて。

鈴木:ミックスしたものを聴いたときは、僕のギターのバランスがわりと大きくて、ちょっとビックリしましたけどね。『アメリカン・ソウル』のときはミックがフェイセズのツアーに参加した後だったこともあって、ギターにこだわっていたんですが、今回もギターサウンドが強調されていて。もちろん、使い方は違いますけどね。シンプリー・レッドのギターは、土臭くなりすぎないようにしているので。

ーーロック、ソウル、ファンクなど幅広いサウンドが取り入れられているのも、シンプリー・レッドらしいですね。

鈴木:ミック自身、すごく音楽の趣味が幅広いんですよ。モーツァルトからパンク・ロック、モーターヘッドまで、本当にいろいろな音楽を聴いているので。ツアー中、バスのなかでミックがDJをしてくれるんですけど、そのときも次から次にいろんな曲が出てくるんです。しかもシチュエーションによって変えるんですよね。たとえばオーストリアあたり、ドナウ川の脇を走っているときはクラシック・ミュージック。移動が長くてメンバーが疲れているときはニール・ヤング、ローリング・ストーンズなどのカントリー・テイストのロック。夜中、お酒を飲みながらみんなで話しているときは、キング・ダビー、リー・ペリーといったダブ。そういうことを気にしながらDJしてくれるんですよね。

ーー素敵ですね! ちなみにツアー中の移動はバスが多いんですか?

鈴木:そうですね。お客さんの移動に巻き込まれないように、ステージが終わったらすぐにバスに乗って出発することもあります。車内にはケータリングが用意されていて、ワインで乾杯して、ミックのDJで音楽を聴いて。寝台、リビング、シャワーも付いているんですよ。バスのなかで寝ることもあるし、ホテルに到着してから昼過ぎまで寝て、次の会場に入ることもあるし。ヨーロッパは地続きで違う国に行けるし、歴史的にもエンターテインメントに対する体制がしっかり整っているんですよね。ヨーロッパでの移動は大型の2階建てバスなんですが、バンドだけではなく、スポーツのチームだったり、劇団が使うこともあって。

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ーーなるほど。シンプリー・レッドの制作はどのように進められるんですか?

鈴木:アレンジに関しては、バンドやプロデューサーが中心になってやる感じですね。ミックは歌詞とメロディ。彼の楽曲はいつも“なぜ、これを歌うのか”という理由がハッキリしているし、当然、声の音域、声質も理解しているので、常に長く歌い続けられる曲を書いてくるんです。僕らに聴かせるときはシンプルなギターのコードと歌だけなんですが、そこからコードを変えたり、アレンジを加えたりしながら、最終的な形にまで持っていきます。

ーーすごくバンドらしい作り方ですね。「ザ・ゴースト・オブ・ラヴ」ではワウ・ギターが活かされていますが、あのアレンジも鈴木さんのアイデアなんですか?

鈴木:それに関してはおもしろい話があるんですよ。去年の夏、ツアーのポスターをロンドンで撮影したんですが、「ザ・ゴースト・オブ・ラヴ」のラフテイクを聴きながら、トランペットのケビン(・ロビンソン)がワウ・ギターのフレーズを口で歌っていて。そのときからミックが「いいアイデアだな」って言ってたんですが、僕がフジロックのために一旦日本に行ってからロンドンに戻ると、ミックからすぐに連絡があって「例のワウ・ギターをオーバーダブしたい」って言われたんですよね。

ーーライブ映えしそうな曲も多いですよね。

鈴木:新しいアルバムからも数曲は演奏する予定ですが、さきほど言ったように、今回はミック・ハックネルのデビュー30周年が目的なので、シンプリー・レッドのクラシック・ヒットが中心になるでしょうね。すごく盛り上がると思いますよ。

ーーヨーロッパにおけるシンプリー・レッドの人気ぶりは、日本にはなかなか伝わってこないですからね。

鈴木:そうですね。日本はどうしてもアメリカ経由のものが多いと思うので。シンプリー・レッドはずっとアリーナ、スタジアムで演奏してきたし、ヨーロッパだけではなく、南米でも人気があるんですよ。ローリング・ストーンズがリオデジャネイロで100万人のコンサート(2006年)をやりましたが、次の年はミックがオファーを受けていたらしいんです。結局ミックはやりませんでしたが、ブラジリアのフェスティバルに出演したときは60万人集まって。60万の人を一度に見ながら演奏するのも、めったに出来ない経験ですよね。

ーーすごい知名度ですね。

鈴木:空港のイミグレーションでも、「シンプリー・レッドのギタリスト」と言えば、どこでも通じるんです。そのネームバリューの大きさには驚かされるし、そういうグループに迎え入れてもらったことは感謝してますね。

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