乃木坂46に秋元康が託したものは? ドラマ『初森ベマーズ』と楽曲「太陽ノック」に共通する“青春”

 テレビ東京系で金曜日の深夜に放送されている「ドラマ24」枠の『初森ベマーズ』はアイドルグループ・乃木坂46のメンバーが出演しているドラマだ。

 物語は、下町にある初森公園を地上げ屋から守るため、ナナマル(西野七瀬)たち「初森第二女子商業」の女子高生が、地上げ屋の令嬢・キレイ(白石麻衣)率いる「セント田園調布ポラリス学園」の女子ソフトボール部に戦いを挑むというスポ根タッチのドラマ。個性的なソフトボール部のメンバーを乃木坂46が演じている。

 企画・原作の秋元康は、AKB48を中心とするAKBグループのプロデューサーだ。対して乃木坂46はAKB48の公式ライバルグループとして結成されたアイドルで、こちらのプロデューサーも秋元康である。そのため両者は比較されることが多い。

 近年の秋元康は、巨大化し過ぎたAKBグループではできないことを乃木坂46で試しているようにみえる。それは一言でいうと作家性の追求で、楽曲のクオリティと映像作品の充実ぶりはAKBグループを上回っている。特にMVの出来は毎回素晴らしい。

 あらゆるメディアで内輪ノリをダダ漏れさせることで視聴者参加が可能な場を提供していくAKBグループには、放送作家としての秋元康の企画力が強く現れている。対して乃木坂46には、秋元康の作詞家としての純粋さが全面に出ている。

 どれだけえげつない商売をしていても、秋元康がアイドルファンから信頼されているのは、彼が10代の時に感じたであろう教室の片隅から見つめることしかできなかった女子生徒への憧憬を今も忘れてないからだ。その「触ることができないものへの憧れ」こそ、まさにアイドルを見つめるファンの気持ちに他ならない。

 ダダ漏れのドキュメンタリーと、作りこまれたフィクション。これこそがAKBグループと乃木坂46の違いだといえる。では、テレビドラマにおいてはどうか。

 AKB48が出演した『マジすか学園』は、タイトルからしてネタ的で、ヤンキー漫画『クローズ!』のパロディ的な世界観をAKB48で作るという、いかにも秋元康的な企画モノのドラマだった。

 しかし、前田敦子を筆頭とする主演女優たちが本気(マジ)で演じることで秋元康の企画したネタ的な設定を、演者の迫力が上回るという奇跡を起こすことに成功した。これは監督を担当した佐藤太のシリアスな演出の影響も大きいだろう。

 『マジすか学園』では、AKBグループが得意とするドキュメンタリー的な手法で撮られていた。前田敦子の役は前田。大島優子の役は優子先輩と、本人と役をギリギリまで近づけようとし、その結果、虚と実が混合したノンフィクション・ドラマが立ち現れたのだ。

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